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遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

共産党の「核心」になっても続く習近平の権力闘争

2016-11-29 23:58:58 | 中国 全般
 「アジア回帰」政策を掲げていたオバマ政権。しかしその実態は、掛け声先行で、パンダハガー政権とも揶揄される腰の引けた中途半端な物でした。
 「中国の夢」を掲げる習近平は、米国に「G2」を持ちかけると同時に、西太平洋、東・南シナ海、インド洋での覇権拡大を進め、地中海への進出も伺い始めている現状でした。そして、南シナ海では、国際法を無視し、根拠のない「九段線」を掲げ、人口島による軍事基地建設を推進しました。米海軍が牽制行動を提案するなか、対話での解決を唱え抑えていたオバマ大統領と面談した習近平が、建設中止に応ぜず、ようやくオバマ大統領が、「航行の自由作戦」の実行を許可。フィリピンが仲裁裁判所に提訴した裁定では、「九段線」を否定される敗訴と、外交での失政を重ねた習近平。
 国内での窮地が想定されましたが、腐敗撲滅の御旗で敵対勢力の力を削いだ効果か、逆に「毛沢東」「鄧小平」に称されていた「核心の座」を手中に入れ、劣勢を挽回しています。
 来年の、チャイナ7の改選に向けた勢力争いの中、優勢に立ち、着々と基盤強化を進めているかに見えますが、まだまだ抗争は続くと唱えるのは、霞山会 理事、研究主幹の阿部純一氏。
 

共産党の「核心」になっても続く習近平の権力闘争 “誰も挑戦できない権威の象徴”ではなくなった核心の座 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.11.29(火) 阿部 純一

 
習近平政権は来年秋の第19回党大会に向け、内政・外交ともに正念場を迎える。
 内政では10月に開かれた「6中全会」(中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議)で
党における「領導核心」の座を手に入れ、権力基盤をさらに固めた。とはいえ、党大会で自分の裁量による指導体制を作り上げるために、やるべきことはまだ多い


 
外交では、米国で誕生するトランプ新政権への対応が重要な課題
となる。習近平政権にとっては、トランプ新政権の外交・安全保障政策がどう変化するかを見極め、トランプ新政権とどう折り合いをつけていくかが問われることになる。

■トランプ新政権への期待

<中略>

 しかし、トランプ新政権が中国の都合のいいように動く保証はない。オバマ政権の政策の逆を目指すにしても、トランプ政権がオバマ政権よりもむしろ中国に厳しい対応を取る可能性は排除できない
からだ。
 
習近平政権が求心力を高めるために「愛国主義」というナショナリズムを称揚しているように、トランプ新政権も「米国を再び偉大な国にしよう」というナショナリズムを表面に押し出してきた。トランプのナショナリズムが「孤立主義」とイコールであるとは限らない
のである。
 トランプ政権の対中外交がどのようなものになるかは、時間が経つにつれて明らかになっていくだろう。しかし、それがどのようなものであれ、習近平政権は、オバマ政権に提示してきた、米中が対等の立場に立つ「新型大国関係」の構築を目指すことになろう。

■主席制の復活を画策か?
 習近平政権にとって、むしろ問題なのは内政である。

 
習近平は10月の6中全会で、党における「核心」の座を手に入れ、1980年に鄧小平が主導して作られた「党内政治生活に関する若干の準則」(以下「準則」)を大きく書き換えた

 1980年の
「準則」のキーワードは「集団指導(集体領導)」であった。毛沢東の個人独裁がもたらした「文化大革命」の過ちを繰り返すことのないよう、「集団指導体制」が謳われたのである。これに沿って、翌1982年に開催された第12回党大会では、「党中央委員会主席」が廃止され「党中央委員会総書記」となった

 中国では1949年の建国以来、「党中央委員会主席」が党における最終的な意思決定者だった。毛沢東は、まさにその役割を担ってきた。しかし、「党中央委員会総書記」は党中央委員会の最高指導者と位置づけられるものの、意思決定は党中央政治局常務委員会における多数決に委ねられる。主席制を廃止することによって、
党中央で毛沢東のような独裁を再現できないようにする工夫
であった。

 
習近平は、10月の6中全会で新たに採択された「新情勢下の党内政治生活に関する若干の準則」で、この個人独裁回避のための「集団指導」を大きくトーンダウンさせてしまった

 より正確に言えば、1980年の準則では独立した項目として「集団指導」を取り上げていたのが、新しい準則では「集団指導」を「民主集中制」を構成する要素の1つとしている。この書き換えは、「領導核心」を「集団指導」よりも優先したと受け止めることもできる。
 それをもって、
習近平が主席制の復活を画策していることは十分に考えられる
。領導核心に位置づけられた以上、自分が党における最終意思決定者であることの制度的保証として、総書記ではなく主席の呼称こそがふさわしいと判断しても不思議ではないからである。

■江沢民派を一掃したい習近平
 しかし、
主席制の復活には当然のことながら党内に強い抵抗
が予想される。おそらく、そこまで露骨な権力の集中を進めることはないと考えるのが自然である。
 党内で権威を増した
習近平が目指すものは、他にあるはずだ。それは第1に、個人の権限強化による「内規の改定」
であろう。
 内外の報道によると、
「七上八下」という内規(いわゆる「潜規則」)、すなわち党中央政治局常務委員に選任される人物は「67歳以下ならOKだが68歳はダメ」という原則を見直すべきだとの声があがっているという。たとえ68歳を超えていてもその人物が余人を持って代えがたい能力があるなら、任務を継続できるという論理である。その「余人を持って代えがたい能力」を持つ人物とは、習近平のもとで反腐敗に辣腕を揮う王岐山
である。

 
もう1つ目指すものがあるとすれば、党中央政治局常務委員会の人事刷新
であろう。
 胡錦濤時代は9名の常務委員がいたが、習近平時代になって7名に減った。理由は明示されていないが、裏で画策したのが「第3世代の核心」であった江沢民だとすれば、江沢民派のための多数派工作で人事を動かした可能性が高い。
 
胡錦濤時代、常務委員の中で純然たる「非江沢民派」は、胡錦濤総書記と温家宝総理だけだった。習近平時代にしても、江沢民の息のかかっていないのは共青団出身の李克強総理だけである。次期党大会で2期目を迎える習近平にとって都合のいい常務委員会人事とは何かといえば、まずは江沢民派を一掃することであり、反腐敗で辣腕を揮った王岐山の留任
であろう。
 王岐山の留任が実現すれば、「次の次」である2022年の第20回党大会を69歳で迎える習近平自身の「3期続投」の可能性も出てくる。
習近平は3期続投を現実のものとするために、かつて鄧小平が1982年に現行憲法を決めたように国家主席の「2期10年」という憲法の定めを書き換えるかもしれない


■後継者を決めなければ求心力を保てる
 もし「3期続投」を目指すとすれば、
習近平はさらなる権威確立のために、“次期常務委員会で後継者を指名しない”ということも考えられる
<中略>

 しかも、それはきわめて簡単にできる。政治局常務委員のポストを5つに絞り、総書記、国務院総理、全人代常務委員長、全国政協主席、紀律検査委書記に限定することによって、後継者の入る余地をなくしてしまえばいい
のだ。
 同時に、習近平、李克強、王岐山が留任するとして、残りの2ポストの1つを習近平の側近である栗戦書・党中央弁公庁主任にあてがえば、それで習近平側が3名となり過半数を占めることになる。そうすることによって、
習近平は「領導核心」の権威を振りかざすことなく、従来の「集団指導体制」を維持して多数決で意思決定をすることが可能になる
。「個人独裁」を批判されることなく、自分の思うような政権運営が可能になるというメリットもある。

■誰かに剥奪されても不思議ではない核心の座
 しかし、このようなシナリオ通りに物事が進むかどうかは分からない。
 そもそも習近平自身が、「領導核心」の座を江沢民から奪い取っているからである。
 具体的に言えば、
習近平は領導核心の座を得るために、「腐敗撲滅」を理由に周永康や徐才厚、郭伯雄といった江沢民につながる人脈を摘発することで江沢民の権力に挑戦し、ついに核心の座を奪い取った

 
だが、このことによって、中国共産党の指導における核心の位置づけは「絶対的」なものから「相対的」なものになってしまった。もはや、核心は、誰も挑戦できない権威の象徴ではなくなっている
。これは習近平が想定していなかった現実だろう。

 振り返ってみれば、江沢民の核心の座も自らが絶対的な権力を行使して手に入れたものではなかった。鄧小平が「毛沢東が第1世代の核心であり、第2世代は自分が核心なのだろう」と言ったとき、その
「核心」は、誰もが挑戦することをはばかる権威の象徴だった。だが、「第3世代の核心」はそうではない。鄧小平は、1989年の天安門事件後、軍歴も権威もない江沢民を党中央の指導者に祭り上げるため「第3世代指導部の核心」に任じた
。江沢民が核心に値する指導者であるかどうか以前に、天安門事件で大きく動揺した中国共産党の指導体制に求心力をもたせる必要があったからであろう。

 
習近平は、その江沢民から核心の座を剥奪し、自分が取って代わったその核心の座を、また他の誰かが剥奪してもけっして不思議ではない。その意味で言えば、習近平の権力闘争はまだまだ続くことになる

 アジア回帰を、腰が引けながらも掲げていたオバマ大統領から、トランプ氏に代わる米国。外交政策について、未明の部分が多いのですが、筆者・阿部氏は、反オバマのトランプ氏を、中国では好意的に受け止められていると評す一方、中国の都合のいいように動く保証はなく、むしろ、オバマ政権より厳しい対応をとる可能性もあると、見通しがつかない評価をしておられます。
 トランプ氏の対中強硬姿勢については、これまでにとりあげていました。
 
トランプ大統領が誕生した場合、執務初日に「350隻海軍」計画を発動する - 遊爺雑記帳
 トランプ氏が中国制圧決意、「通貨・貿易戦争」辞さず - 遊爺雑記帳

 勿論、政権が正式発足して、政策が打ち出されるまでは、どうなるかわからないのが、トランプ氏ではあります。
 記事が指摘するように、国内の政局争いの方が、習近平にとっては、重大課題でもあるのですね。
 「核心の座」を手中にし、来年のチャイナ7の椅子取り争いに優位に立ったとみえますが、その先を見据えて、国家主席の「2期10年」という憲法の定めを書き換える野望を持っていると指摘されています。
 筆者・阿部氏だけではなく、少なくない、諸兄もご承知の論ですが、「核心の座」の獲得の経緯から、毛沢東、鄧小平に称される「核心の座」とは、取得経緯がことなり、「誰かに剥奪されても不思議ではない核心の座」だとの指摘は、おもしろい角度からの分析ですね。
 そして、毛沢東や鄧小平の第一世代、第二世代の実績に基づいて自ら獲得した「核心の座」とは違って、江沢民の第三世代の「核心の座」は鄧小平から格付けの為に与えられたもので、それを政局争いで奪った習近平の場合は、政局争いでその座を奪われる可能性があると。

 失速した国内経済。外交の失敗。この難題の解決が見えないなか、トランプ新大統領に変化を期待するのかもしれませんが、習近平にとって吉となるのか凶となるのか。国内の難題の解決が遅れれば、3期続投の野望どころか、反対勢力からの逆転を招くことになります。
 チャイナセブンの椅子の行方は、まだまだ目が離せない様です。



 # 冒頭の画像は、左から、習近平、王岐山、李克強




 この花の名前は、セイヨウアブラナ


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写真素材のピクスタ


Fotolia






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