遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

トランプ大統領の外交的手腕にはみるべきものがある

2017-04-25 23:58:58 | 米国 全般
 北朝鮮の朝鮮人民軍創建記念日の25日。北が核実験、弾道ミサイル発射等の何らかの行為に出る可能性があると、各局のワイドショーが大騒ぎをしていましたが、東部の江原道・元山で過去最大規模の火力訓練が行われたようですね。
 ワイドショーに登場する専門家によれば、米韓合同演習が終わる、今月末迄は、まだ予断をゆるさないとのこと。
 北の核保有については、過去からの交渉経緯があり、一時開発中止が成立したかに見えたこともありましたが、水面下では継続され、6ヵ国会議という場も持たれたこともありましたが、破綻し、今日に至っていることは、衆知のことですね。
 中国が習近平、北が金正恩、米国がトランプへと代替わりした今、朝鮮戦争の休戦以来の危機に面しています。
 理由は、北が核開発と弾道ミサイルの開発を続け、金正恩が開発を更に加速させ、遂に、米国本土へ到達する核搭載のICBM実現の可能性が高まったことで、トランプ政権が、過去の融和路線の放棄を宣言し、軍事圧力を強めていることですね。
 そして、軍事圧力を背景に、実際には、中国に北の説得責任を負わせる戦術を展開しています。
 このトランプ大統領の戦略を、高く評価している記事がありました。

 
北朝鮮が過去最大規模の火力訓練 正恩氏立ち会い=韓国政府筋(聯合ニュース) - goo ニュース

 
巧妙さ際立つトランプ対中外交 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫 (4/25 産経 【正論】)

 
米国の新大統領トランプ氏には外交経験はまるでなく、そのうえ無謀で予測不能な人物であるかのごとく言い募るアナリストが絶えないが、謬見(びゅうけん)であろう。大統領選勝利の頃から現在にいたる氏の行動様式から判断する限り、その外交的手腕にはみるべきものがあるというのが私の直感である。

≪シリア爆撃で北への関与促す≫
 トランプ氏は
米国の覇権に刃向かう現在ならびに将来の新覇権国家が中国であることを正しく認識し、オバマ政権時代の寛容で融和的な政策を転じて、早くも対中牽制(けんせい)のための有力なカードをみせつけ始めた。その一つが、当面の最重要課題である北朝鮮問題の解決に中国を強引に引きずり込もうとする策であり、もう一つが、米国は「一つの中国」原則に縛られないとする、胸中に秘めた氏の策をのぞかせたこと
であろう。

 トランプ氏が北朝鮮に対する
オバマ時代の「戦略的忍耐」政策を放擲(ほうてき)し、脅威が高まれば軍事行動も選択肢になるという政策に転じたのは、相対的にその力を減じつつあるとはいえ、なお他を圧する覇権力を擁する米国としては至極当然のこと
であろう。就任後、最初の歴訪にティラーソン国務長官を日韓に赴かせて、新政策を両国に伝えるという迅速さであった。
 4月7日の米中首脳会談において、トランプ氏は習近平国家主席に
北朝鮮問題について中国がより積極的な役割を演じるべきであり、さもなくば米国は単独で行動すると主張
した。さらに、前日の歓迎夕食会の最中に、米国のシリア空爆についての詳細を伝えたことが後に明らかにされた。

 北朝鮮はシリアに化学兵器の技術移転を長らく続けてきた。中国が北朝鮮の行動を抑止できないならば、
米国が単独行動も辞さないという主張は鋭い現実味をもって中国に伝わったことだろう。首脳会談の最中にミサイル攻撃の挙に出ることなど驚くべき大胆さである。実際、4月中旬の国連安保理のシリア非難決議に、ロシアは拒否権を行使したが、中国は棄権にとどめた
のである。

≪「狡知」知らしめた台湾カード≫
 加えて、
トランプ氏は一つの中国原則に大いなる違和感をもっている
ことも証された。昨年12月2日、トランプ氏は台湾総統の蔡英文氏との電話会談に臨み、蔡氏から大統領就任への祝意を伝えられ、トランプ氏は蔡氏を「The President of Taiwan」と呼びかけたという。
 さらに今年1月13日、トランプ氏は米紙とのインタビューで、中国と台湾がともに一つの中国に属するという原則に自分は縛られない、米中問題のすべてが交渉の対象だという見解を明らかにした。1979年の米中国交正常化以来、米国首脳が一つの中国原則の見直しを示唆したのは初めてのことである。
 台湾問題を国家主権に関わる「核心的利益」だと主張してきた中国が、この原則は米中関係の政治的基礎であり、交渉は不可能だと猛反発したのだが、トランプ氏にとってはこれも織り込み済みのものだったはずである。
 
その後、トランプ氏は習氏との電話会談で、一つの中国原則を尊重すると応じた。トランプ氏の譲歩ではあろうが、中国が他国から言及されることを最も嫌悪するこの問題を、トランプ氏が重要な政治的カードとして隠し持っていることを中国側に知らしめたのは、氏の外交的「狡知(こうち)」
であろう。

 中国は今後「米中新型大国関係」などという“夜郎自大”の表現を用いることには自制的たらざるをえまい。
党大会を今秋に控えて国内権力闘争に鎬(しのぎ)を削り、外交に割くエネルギーが薄れているこの時期に一つの中国原則を持ち出したことも、同氏の外交的取引の巧妙さを物語っていよう。


≪挑戦者への不作為が危機招く≫
 台湾民進党の蔡氏は前総統の国民党の馬英九氏とは異なり、「92年コンセンサス」(九二共識)の存在を認めていない。共識は、1992年の中台香港協議の場において双方が一つの中国(一個中国)原則は守るものの、台湾側はその解釈は双方異なる(各自表述)とし、中国側は文字通りの一個中国を堅持するというものだといわれる。共識はその存在自体が怪しく多分に幻のものだが、中国はこれこそが中台関係を律する政治的基礎だと主張してやまない。台湾がこの共識を認めなければ当局間による交渉の一切には応じないとも言い続けている。
 世代交代にともない台湾の「現状維持」が強固な民意となって登場した蔡政権は、中国にとっていよいよの難物である。この時期を捉えて米国は台湾に2240億円相当の武器を売却する意向を発表した。
旧国際秩序への挑戦勢力に対する現状維持勢力の不作為が戦争誘発の要因である。

 ミュンヘン会談において
ドイツの軍事的膨張の意図を誤認した英国など欧州諸国の不作為こそが、第二次大戦勃発の起因であった。確執回避を優先するあまり対独宥和(ゆうわ)姿勢を取り、結局は大戦へと向かわざるを得なかった歴史の事実を顧みたい。(わたなべ としお)

 渡辺氏が、トランプ大統領の外交手腕を評価しておられるのは、2点。
 ひとつは、米国の覇権に刃向かう現在ならびに将来の新覇権国家が中国であることを正しく認識している点。もうひとつは、米国は「一つの中国」原則に縛られないとする、胸中に秘めた(トランプ)氏の策をのぞかせたことだと。

 記事では、オバマ時代の「戦略的忍耐」政策を放擲と指摘されていますが、歴代大統領の融和策すべてに決別して、武力行使も辞さないというけん制で、しかも、武力行使をせざるをえなくなったとしたら、中国の説得力不足のせいだと下駄を預けている巧妙さこそ評価される点かと考えます。

 2点目の、「一つの中国」原則に縛られないとする、胸中に秘めたトランプ氏の策をのぞかせたと言う点は、発言を中国が「核心」に係ると強硬に抗議したことから、直ぐに翻し、翻すなら最初から軽々しく言うなと、翻弄された蔡氏に同情していましたが、ディールの一貫で揺さぶりにかけているところで、ジャブを一発繰り出して様子見をしたのであって、胸には秘めていて、そのことを中国に知らしめる目的は達成したとの渡辺氏の評価には、納得させられました。
 初の首脳会談の晩餐会の席で、シリアの空軍基地攻撃の話をし、習近平に賛意を共鳴させた手腕を知れば、胸に秘めていると言う渡辺氏の解説に納得できますね。

 過去の融和姿勢を転換して、軍事圧力を前面に出し、行使も辞さないと緊張高めているトセンプ政権。しかし、よくよく見ると、北との交渉を第一にして、しかもその交渉役と交渉結果責任を、中国に押し付けている。戦略家というより、策略家と言った方がよいでしょう。
 習近平は、スッポリ嵌められて、どう責任逃れをしようかと暗中模索状態。渡辺氏が、外交手腕を評価される点には納得です。
 確執回避を優先するあまり対独宥和(ゆうわ)姿勢を取り、結局は大戦へと向かわざるを得なかった歴史の事実を顧みることを指摘される渡辺氏。
 北への武力による開発阻止が過去にも検討されたことがあり、1994年、クリントン政権は北朝鮮への攻撃を検討したが、被害の甚大さから、金泳三韓国大統領(当時)が強く反対し、カーター元大統領が訪朝する対話路線が採られたのですが、金泳三韓国大統領(当時)は、その後の北の開発の進展に、あの時に阻止しておけばよかったと、後悔されたとの話は、諸兄がご承知の通りです。
 米国が、本土に到達する、核搭載のICBM開発完成前の今が最後のチャンスとして危機意識を高めている道理です。

 中国が逃れようとしている、トランプ政権による、中国への説得責任の押し付けと、習近平は努力しているとの褒め殺し戦術。鍵は、石油供給の制限量と言われています。習近平が決断できるのか、しゃしゃり出てきたプーチン大統領が、代替え供給して恩をうれば習近平が決断・実行しても効果は薄れます。
 中国の核やICBMの開発中止への説得が失敗した時には、米国はどのような行動をするのか。核を放棄すれば、己の存在を護る手段がなくなる金正恩が、核を放棄することはありえないとされる中、中国の動きが注目されます。



 # 冒頭の画像は、北朝鮮の労働新聞が25日掲載した、ソウルの韓国大統領府や政府機関の撃滅を想定した長距離砲集中攻撃演習の写真
  ソウル撃滅想定し砲撃演習 北朝鮮、対米韓で最大規模 - 産経フォト




  この花の名前は、ウコン


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia







コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 4月24日(月)のつぶやき | トップ | 4月25日(火)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

米国 全般」カテゴリの最新記事