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峰野裕二郎ブログ

私の在り方を問う

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反骨のボクサー モハメッド・アリ

2016年06月07日 | スポーツ

「キンシャサの奇跡」と呼ばれるプロボクシングの試合がある。1974年10月30日、アフリカ中央部コンゴの首都キンシャサで行われた、当時のWBA・WBC世界統一ヘビー級王者ジョージ・フォアマン対モハメド・アリ戦で、圧倒的不利と見られていた既に伝説的なボクサーとなっていたモハメド・アリ選手が大方の予想を覆し、8ラウンドに劇的なKO勝利をおさめたことからそう呼ばれている。

今から42年前、私はテレビでその奇跡を観ていた。今でも、あの8RのKOシーンが鮮明によみがえってくる。
チャンピョンのフォアマン選手は、それまで40戦全勝内37KOを誇っていた。そのKO劇の中でも、彼の前の統一世界ヘビー級王者・ジョー・フレイジャー選手とのタイトルマッチで、フォアマン選手の放った右フックにフレイジャー選手の体が浮き上がってマットに叩きつけられたシーンは衝撃的だった。かようにその剛腕ぶりは世界最強の名をほしいままにしていた。

一方、アリ選手はベトナム戦争中の1967年に「ベトナム人に銃を向ける理由がない」と徴兵を拒否したことから禁固5年の有罪判決を受け、ボクサーライセンスとヘビー級王座を剥奪され、3年7か月のブランクを余儀なくされた。その後、リングに復帰するも、1971年にライバルのフレイジャー選手に初めて敗れるなど全盛期を過ぎたと見られていた。

試合は、1Rのゴングが鳴るや否やフォアマン選手が左右のフックを振り回してきた。アリ選手は防戦一方だ。特に2R以降は、いつもなら軽快にフットワークを使うアリ選手がロープを背にもたれかかり、グローブでブロックしたままフォアマン選手に打たせるという展開が続いた。アリ選手がいつ倒されてもおかしくない空気が会場を包んでいるようだった。
ただ、打たせながらも、アリ選手の時折繰り出す正確なワンツーはフォアマン選手の顔面をしっかりと捉えていた。

やがて、運命の8Rを迎える。この頃には明らかにスタミナを奪われたフォアマン選手の疲労している様子が伺われる。打ち疲れとアリ選手の突き刺さるようなワンツーによるダメージが重なっているのだ。
ラウンドの終盤、コーナーに詰められていた(呼び込んでいた)アリ選手だったが、フォアマン選手の体が流れた瞬間、体を入れ替えてのコンビネーションブローがフォアマン選手を的確にとらえ、フォアマン選手は大木が倒れるかのようにマットに沈んだ。
相手のダメージを見透かし、反撃に出るタイミングをとらえた瞬間のアリ選手の目を始め、体を入れ替えての見事なコンビネーションブロー等々、鮮やかに記憶に残っている。

これまで歴史に名を残す様々な名ボクサーの試合を数多く観てきたが、この試合ほど心が震えた試合はかつて他にない。
反骨の気概にあふれた偉大なボクサー、モハメッド・アリさんの冥福を祈る。


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