本と猫好きの日日社会メモ

本当の豊かさって何?などとたまに考えつつ、日日生活に流されながら、猫と戯れ本を読む・・そんな毎日を時々アップします。

「新しい公共を担う人びと」奥野信宏、栗田卓也著

2011-04-19 23:39:48 | 本・雑誌、読書
本の中には、『「新しい公共」というのは、自治会などの各種の地域コミュニティやNPO法人、起業の社会貢献活動等、自発的に活動する人びとの連携した取り組みを指している。』とあります。

市場経済が機能するには、それを土台として支える社会の仕組みが整っていなければならない。それを担ってきたのが行政であったが、その行政の機能も限界が露呈してきているがために、新しい公共が行政とともに市場経済を支える役割を担っているとしています。

行政機関は長い間、市場経済を下支えするために、税金を使い公的部分を担ってきました。
しかし、原則すべての方から徴収する税金を主な財源としているために、事業の実施に当たって公平性を重視し、適正な支出を行うために複雑な決定システムを持つなど、それが場合によっては重点化できず思ったような効果が上がらなかったり、意思決定のプロセスに時間がかかり適切な時期を逃してしまうなどの問題点を生み出すことにもなりました。

新しい公共が自分たちが関心を持つ地域の課題について、自分たちのやり方で解決しようとするならば、行政の欠点を補いつつ、いままでより効率的でスピードのある課題解決が図られるようになると思われますし、既に成果を上げている事例もたくさん出てきています。

かつて地域社会が共同体として機能していた時、自分たちのことは自分たち自身の手で解決していたものを、共同体の機能が低下する中で、その多くの部分を行政が担うようになりました。
いま財源の問題や地域の課題がより個別化していく中で、行政の限界が見えており、自分たちのことは自分たちで解決するという流れに変わっているようです。
しかし、そこに住んでいるという理由で非自発的に共同作業を行っていた過去の形に戻るのではなく、これからは新しい公共という発想で公共に積極的に関わっていこうとする人たちが担うようになるのでしょう。

阪神淡路の大震災以来、日本でも公的な問題について自らが動き解決するボランティアという概念が根付きました。
そして東日本大震災、復旧が進まない今回の大きな災害の中で、個人が地域の再生にどう関わっていくのか・・地元の方々そして日本人の私たちは、考えていかなければならないと思われます。
周囲のためにという気持ちが定着したなかで、その気持ちではうまくいかないことを知ることになるかもしれません。現実に被災地から遠く離れた場所でも既に問題点を指摘する声が聞こえております。

この本が出るようにこれまで浸透してきた「新しい公共」という考え方が、今後、日本の中でより広い人たちに浸透し、さらに大きな意味を付け加えられるように感じています。

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