ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

毒を吐いて殺す(スピッツ・ポイズン アンド キル)!

2010-04-28 | 映画
人類SOS!」購入。

ラン・コーポレーション発売版の「トリフィドの日~人類SOS!~」を秋葉原Saleの店頭で入手しました。
Saleは正直なところ輸入盤DVD店としては販売価格が高いと思います。輸入盤は米Amazonとそのマーケットプレイス各店や、Yesasia、エキスプロイテッドシネマ、DVDファンタジウム等で購入してきました。そのわけは送料込みでも、大概その方がSaleなどの輸入盤取り扱い国内各店よりも安く付くから。ただし特価品によってはこの限りではないと思いますし、店頭で現物に触れられる利点、またトラブルがあった場合のケアなどは、多分国内店の方が、公平にいって上でしょうから、一律にはどちらがよいかは言い切れません。
ただSaleはWHDやらランやらの低画質安売りカルト映画を店頭置きしており、こういう珍品の発掘場に利用し、それこそAmazonJapanで注文するのはかったるいと感じる作品を店頭買いできる点が嬉しいところでした。
「デッド・アライブ米国公開版」なんてのを、まさに店頭で情報なしに見た時は、そりゃあ嬉しかったですとも。画質悪かろうが短縮版だろうが、どうかしているほどの馬鹿高プレミアム価格の旧版に手が出ないぞと嘆いていた身にしてみれば、ね。それは、まあ、別の話題(ブログ記事)にしなきゃいけないんですけども。

で、「デッド・アライブ」買った時にはなかった作品を、その後無事に購入しました。その作品は「人類SOS!~トリフィドの日~」であります。
「アイ・アム・レジェンド」(所持しているけど、この新しい作品はいまだに未見)の映画化情報を知った時に猛烈に見たくなってネット検索で「地球最後の男」を探していた時には「人類SOS!」との2in1DVDしかなくて、それなりに高くて嘆いていたのですが、間もなく「地球最後の男」はWHDの780円ラインで発売されて、その感想は既に以前アップしているわけです。で、なんだかんだと新旧ホラーを見ているうちに今度は「人類SOS!」が見たくなってきたと。折からいつの間にか廉価版が発売されていると知って、Amazonぽちっと衝動と戦い続けて、見送り続けて……。その一方でここにはあるか、そこにもあろうかと書店系販売物DVDを扱うようなお店があれば、何となく探すを繰り返して、あげく、やっと買いましたよ。

と、これが「人類SOS!」購入の顛末でありました。

「人類SOS!」は、小中学生当時、怪獣小僧でSF小僧であった自分にとっては非常に懐かしい作品のひとつであります。喰人植物トリフィドも吸血怪獣ヒルゴンも、魔獣大陸も、テレビ鑑賞している分には、ある意味ウルトラ怪獣と変わらなかったように思います。だから中学1年の時に原作「トリフィド時代」(創元推理文庫版。早川版「トリフィドの日」の方が入手難でしたので。)を読んで、そのいわばポリティカルな重みに途中で投げ出した覚えがあります。それで、いまだにきちんと読んでいません。だいたい、ジョン・ウインダムなら、同じ怪獣的な作品では「海竜めざめる」の方が断然いいし、「宇宙知性チョッキー」なんていう胸温まる傑作もある! ……と、まあ、私は「人類SOS!」を原作との関連で語る資格がないわけです。それでも今回の鑑賞で、本作は意外に原作無視の完全モンスターホラーではなく、原作のエッセンスをコンパクトにした感じの作品だったんだなぁと感心いたしました。

昔は主人公一行と、灯台の生物学者夫婦の二組がついまで合流せず仕舞に終わる点が不満だったのですが、そういうパラレルな事象をパラレルなままに放り出すことは、世界の終末に瀕した人々を描く意味では効果があったんですね。むろん、これは勝手に意図を組み過ぎで、そんなに高尚な出来の作品でもないのですが。

あと一点、実は一番感動したのが、あの唐突なトリフィドの弱点発見に、ちゃんと伏線があったこと。なんというか、目から鱗でした。……っていうか、餓鬼には英語わからんし、そういう意味ではこのDVD版でもうっかりすると気付かないかもしれません。「非常時のみに使用」と英語で書かれた、海水を汲み上げる消火施設があんなところについているとは! それが灯台の生物学者夫婦の場面の、結構早いところできちんと画面に映りこんでいます。
 それから、この落ちですけれども、侵略テーマの大元祖とされるH・G・ウェルズの「宇宙戦争」の落ちを踏まえているのじゃないかと、改めて思いました。凶悪な敵が極めてありふれたものに弱いという落ちですね。「宇宙戦争」の火星人の弱点はウィルス。トリフィド(マーシャン・ウォー・マシーンが三本足=トリポッドであることも関係するのでしょうか?)の弱点がただの海水。そして、ついでにいえばマイケル・クライトンが「宇宙戦争」を下敷きにしたという作品中で、「アンドロメダ病原体」の弱点は極端なph(ペーハー)であり、すなわち雨に遭い、流されて海に流れ込んだ段階で完全に無力になる……。(「宇宙戦争」と「インディペンデンス・ディ」の関連はずっと以前に、既に言及していますが、あれほど露骨なアナロジーはないと思っていましたが、さすが名作中の名作、あちこち影響が散見できますね、「宇宙戦争」。)

 画質は本当に酷いですが、なにしろ納得のお値段ですから、未見の方、ながらくご無沙汰の方には強くお勧めします、「人類SOS!」。

*表題は「ロッキー・ホラー・ショー」の冒頭曲、「Science Fiction - Double Feature」の一節、
「And I really got hot when I saw Janet Scott
Fight a Triffid that spits poison and kills」
によります。