「DOG STAR(ドッグ・スター)」
ゴングという呼び名の盲目の元ボクサー(石橋凌)の目の役割を担ってきた盲導犬のシロー。深酒したゴングの不注意もあって、深夜の路上でひき逃げに遭ってしまった。ゴングが死に、訓練センターに戻されたシローには食欲さえなかった。そのシローを死んだゴングが見舞う。もはや盲目ではない。「神様が、お前はろくなことをしてこなかったのだから、地上でひとつ良いことをしてこないと天国へは行かせられない」と言われたといって、シローの願いをひとつ叶えるという。
シローが盲導犬訓練センターに入る前、一年間だけ育ててもらったパピーウォーカーの家族に、老犬としてではなく人間の姿で会いたい……本気か? お前、結構贅沢な願いをいうなぁ。
ゴングは文句を言いながらも、その日、折から死ぬことになっていたひとりの男の体にシローを乗り移らせる。青年となったシロー(豊川悦司)は得意の鼻を頼りに、自分の思い出にある家を訪ねたが、家族は十年前に航空機事故で命を落としていた、ただひとり、娘のみを残して。
航空機事故の遺児はるか(井川遥)は成長し、幼稚園に勤務する先生になっていた。シローはしかし、はるかに自分のことを告げることが如何に難しいか、じきに知った。折からはるかの勤める園にやってきていた移動動物園に、不思議に動物を手なずけるというその能力を活かして、シローは雇われることになった。口は悪いが根はとても優しいらしい動物園長(泉谷しげる)は、動物に対して腰が引けている様子のはるかを気遣い、何くれと世話を焼くようにシローに命じる。
シローの優しさに惹かれるはるか。動物に対して距離を置いてしまうのは、幼い頃に大事に育てた犬のシロー(「偶然! 同じ名前!」「うん。同じ名前!」)との別れも、(両親との別れも、)辛いと感じないようにするためにはもう動物なんて好きじゃないと思い込むしかなかったのだと、心の傷を告白する……。
*太陽の次に明るい星だと教えてくれました。今見えないのは冬の星だったのかなぁ=それがシリウス。外国では「犬の星」だと言います。*
心を洗われる思いを味わいたいときの一本としてお勧めします。