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柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

お告げ

2009年07月18日 10時40分47秒 | 日記
昨日、あれから、大船の母の家に行って、晩ごはんをご馳走になったんですよ。

ハンバーグでした。

母が、ハンバーグを食べるわたしたちの前に座り、
両目をぎゅっとつむり、額に右手を当てて、こういったんです。

「美里の家の夢を見て……玄関の外か内かわからないんだけど、玄関……玄関の物を退かさないとたいへんなことになるって……それで、一日中、気持ちがザワザワして気持ち悪かったのよ……」

母は、ときどきお告げめいた夢をみます。
(『8月の果て』で、韓国のムーダン(巫女)を何人か取材し、実際に儀式を行ったこともあるんですが、
どのムーダンにも、「あなたのオモニの本来の姿は、ムーダンだ」といわれました)

「じゃあ、玄関に置いてある、アンティークの箪笥かな?」

と、わたしはハンバーグを食べながら訊ねました。

「わからない……外かもしれない……でも、とにかく……」

と母は、両手で顔を覆ってしまいました。

で、家に帰ったんですよ。
息子は、9時半ごろ眠りました。
わたしはゲラ作業、彼は台所で洗い物をして……11時半ごろだったと思います。
首が限界に近づいたので、風呂にはいることにしました。
お湯に浸かっていると、彼の声が聞こえました。

「タケ……なに……どうしたの?」

風呂から出ると、息子はトイレの便器に座っていました。
彼は、トイレの前に立って(扉を開けたまま)息子の様子を窺っています。
息子は、正面の壁を見詰めて、なにかしゃべっています。

「……あぁ、アレかぁ……ダメだ、アレだ……」

息子は、小さいころから、ときどきトランス状態になり(夢遊病……幻覚・幻聴……あるいは、霊をみる)、
いったんその状態になると、電気をつけても、氷枕を顔に当てても、起きて歩かせても、冷たい水を飲ませても、「普通の状態」には戻らないのです。
ひどいときは、一晩中トランス状態がつづいて、一睡もしません。
むかし、タケがまだ赤ちゃんだったころ(まだ、そういう片鱗が見えないとき)霊能者の江原啓之さんに、
「あなたの息子さんは、霊能者になれるくらいの霊感がありますよ」といわれました。

(詳しくは、『柳美里不幸全記録』を読んでください)

「そうかぁ……あそこにアレがあるから、通れないんだ」

息子は、顔を歪めて、苦しそうな呼吸をしています。

彼が、質問をはじめました。

「あそこって、家のなか?」
「違う」
「家の外?」
「そうだ」
「庭?」
「違う……あぁ! ダメだ! アレが、アレがぁぁぁぁ……」

わたしは息子を立ちあがらせて、顔に濡れタオルを押し当て、冷蔵庫から麦茶を取り出して飲ませましたが、顔を同じ高さにして近づけても、目を合わせることができない……

明らかに、違うものを見ています。

「タケ、ママがだっこしてあげるから、寝よう」

と、二階の寝室に連れて行って、電気をつけたまま、撫でたりさすったりしているうちに、眠ってくれたのですが……

怖い……

階下に降りて、彼と話し合いました。

「バーバも、タケも同じ日に……これは偶然じゃないよ、なんだろ? バーバは玄関っていってたし、タケは家の外で、庭じゃないって……玄関の内じゃなくて、外に置いてあるものってことだよね……最近、置いたもの……」

同時に「あッ!」と叫び声をあげました。
わたしと彼の腕に鳥膚が立ちました。
一週間ほど前に、物干し台を設置したのです。

「アレしかないんじゃない? 引っ越したばかりのとき、江原さんにみてもらったって話、したよね? 江原さんが、ここの敷地は、むかし、お寺で、ちょうど、寺だったころの門と、現在の門の位置が同じだから、悪いものがはいってこられないようになっています、っていったんだよ。ほら、わたしって、すごい疑り深いじゃん? 古地図もね、調べたんだよ。そしたら、ほんとうに、ここ、鎌倉時代は、お寺だったんだよ。
江原さんが事前に調べてたんじゃないかって思うでしょ? でも、そんなことはできなくて、引っ越したばかりで、住所はシークレット中のシークレットで、当時は、出版社の支払調書とかも、東京の友人の事務所から転送してもらってたくらいだからね……寺の参道だった場所を、物干し台で塞いで、通れなくしちゃったってこと? でも、だれが、通るの? 通りたいっていってるひと、悪いひとじゃないの? わたしの首も、もしかして、それと関係あるのかな? 物干し台おいた直後だよね、首やっちゃったの……警告なんじゃないかな……退けろっていう……わ、怖い……」

明日起きたら、物干し台を撤去しよう、玄関のアンティーク箪笥も粗大ゴミに出そう、

と決めて、眠ることにしたんですが……

怖くて怖くて、眠れませんでした。

お告げは、怖い。
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