トラ、

トラ、由紀夫くん、死んじゃったよ。

トラはいつも由紀夫といっしょにくっついてたもんね。

トラも捨て猫。

2005年10月28日に引き取った。

捨て猫だったから、ジアルジア（原虫）もいたし、真菌で脱毛してたし、結膜炎にもなってたから、水薬、塗り薬、目薬、注射、点滴……
何度、動物病院に行ったかわからない。

我が家の一員になった時は生後2週間で、僅か250g。まだ臍の緒が付いていた。猫用ミルクで3時間おきの授乳を行い、乳歯が生えてからはうらごしした肉や野菜をミルクに練り込んで粥状にして、ひと指、ひと指、口に入れて食べさせて育てた。

幼過ぎて自力排泄ができなかったから、母猫が子猫の尻を舐める要領で、脱脂綿をお湯で湿らせて肛門のまわりを刺激して、排泄をうながしてやった。

いま、由紀夫と同じ15歳。

トラ、長生きして。

いつも、いっしょだったね。

わたしは由紀夫くんが、うちの猫の中でいちばん大好きで、ゆっきちゃんはわたしの猫だから、わたしが瀬戸内海の豊島から帰るまで、がんばって待っていてくれたんだね。

豊島には由紀夫くんと同じ真っ白な犬が2ひきいるんだよ。

はなとしろって言うんだよ。

由紀夫は、いつもわたしの目をじっと見てわたしの話を聴いて、にゃあ、とお返事をしたね。

なんでもわかってたよね。

いつも、いっしょにいたから。

岩渕さん、ありがとうございます。

由紀夫が死にそうな時、

岩手県大船渡市の友人の医師（動物のお医者さんじゃなくて、人間のお医者さん）の岩渕正之さんが、

「点滴持って行きましょうか？

ここからだと4時間かかりますが、
それでも必要ならお呼びください。
途中から折り返して帰る状況になっても良いので。
まずは傍に居てあげて下さい」

と、とても優しく、あたたかい言葉をかけてくださり、

涙があふれました。

岩渕さんは、いつも車で片道4時間かけて本屋フルハウスに通い、青春五月党の芝居を観に来てくださる方です。

東日本大震災の時に、地元の医師として大変なご苦労をされた方です。

岩渕さん、ありがとう。

今度、大船渡に行くので、ゆっくりお話をしましょう。

由紀夫……

由紀夫くんが息を引き取りました。

由紀夫！

由紀夫！

と呼びつづけたら、口を開けて、息を3回吐いて……

由紀夫が死ぬなんて……

心臓を指で圧したりさすったりしたけど、体が硬く冷たくなってきました。

涙が止まりません。

ピンクの肉球が紫色に変わっていく……

どうしよう……

ゆっきちゃん

由紀夫くんが鎌倉の家に来たのは、

2005年12月10日。

猫の里親募集のHPを見ていたら、

大阪の中学校裏の畑に段ボール箱に入れられた子猫が捨てられていた。警察に届けられたが、警察官に猫に対する知識が全くないため鳥籠に入れられて牛乳を与えられていて下痢がひどい。（うちに来たとき、由紀夫くんは下半身が茶色く染まっていた）このままでは、保健所で殺処分になってしまう。

という投稿に目がとまった。

投稿者は、近隣で飼ってくれる人を探していて、

早く見つからないかな、と祈っていたが、

どうやら見つからないようで、

保健所に連れて行かれる日が迫っていたので、

投稿者である大阪在住の女性に、飛行機代などの交通費を支払うから鎌倉まで連れてきてほしい、とお願いした。

うちに来た時の由紀夫くんは580g、

推定生後２ヶ月。

由紀夫は、三島由紀夫の由紀夫。

いま、由紀夫くんに死なれるのは、つら過ぎる。

由紀夫くん、朝までがんばって、病院に行こうね。

わたしのゆっきちゃん……

由紀夫くん、

死なないで。

由紀夫くんが死んだら、

どうしよう。

由紀夫くん

由紀夫くんが、

もう、ちょっと厳しいです。

わたしが瀬戸内海から小高に帰るのを待って、倒れました。

救急の動物病院は（電話しましたが、どこも繋がらない）南相馬にはないし、

由紀夫くんは、極度の臆病者で、知らない人が来ると出てこない猫なので、

この状態で外に運び出すのは、あまりにかわいそう。

完全室内外に、一度も外に出たことがない猫なんです。

このままそっと見守り、明日までもったら、動物病院に連れて行きますが……

もう、目を開けたまま反応しないから、無理かも……

今年、15歳になる由紀夫くん。

正直に言うと、4ひきの中で由紀夫くんがいちばん好きで、贔屓してました。

由紀夫くん……

ゆきお……

ゆっきちゃん……