柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

祝酒呑んだから、まんじりともできない。

2015年03月25日 04時39分16秒 | 日記
息子が、福島の県立高校に合格しました。

合格発表は昇降口のガラスの内側に、先生方の手で掲げられるんです。
よく見えるようにでしょう、発表の10分前に先生方がガラスの内側を磨きはじめたときに、息子の緊張はピークに達しました。
番号が書かれた紙が出されても、きっと、落ちている――、と怖がって近寄ろうとしません。
わたしが、紙に近付いて、受験番号を見ました。

「あった! たけ、受かった!」と、受験番号を見たまま叫ぶと、「よっしゃあ!」と息子がジャンプしました。
受付で「合格、おめでとうございます」と書かれた茶封筒を受け取り、10人ほどいた先生方に「おめでとうございます」と言われて、「ありがとうございます」とわたしたちは頭を下げました。
外に出た途端、ふたりで両手を握り合って、「やったぁ!すごい!やった!やった!」と、ぴょんぴょん跳びはねました。

息子が中学校の担任の先生に電話すると、先生はうれしさのあまり電話口で叫び声を上げたそうです。

今回わたしたち母子を連泊させてくれている友人の星野良美さんは、息子が合格を報告すると、電話口で泣き出したそうです。
星野さんは2011年3月11日まで、南相馬市小高区の沿岸部に住んでいました。津波で家を流され、原発事故によって自宅跡地が「警戒区域」に指定され、今も避難指示は解除されていません。
別の高校に合格した、星野さんの次男のたくみくんは言いました。
「自分の卒業式の日にも、合格発表の日にもぜんぜん泣かなかったお母さんが号泣するなんて、ちょっと複雑……」

住民票などの手続きを行ってくれた小高の廣畑さん、この3週間毎日欠かさず息子の小論文を添削して文章を鍛えてくださった福島市のTAISEIさん、お祝いに駆け付けてくださった原町のクリーニング店「北洋舎」の美加子さん、ありがとう!
ありがとう!

みんなに喜んでもらって、息子も電話を持つ手が震えていました。

たけも緊張に堪えて、全力を尽くしたよ。

おめでとう!

というわけで――、わたしたち家族は4月頭に福島県南相馬市に引っ越します。

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