14歳の息子が、昨日、不思議な夢を見たという。
「目の前に、おじいさんが立ってるんだよ。白い、ちょっと丈が短い着物をきてて、足にハイソックスみたいな白いのをはいてる。髪は薄くて真っ白なんだけど、鼻の下のひげは黒い。とっても痩せてて、なんだか陰気な感じなの。『たけちゃん、ひさしぶりだね。大きくなったね』って言われたんだよ」
わたしは、ぎくりとしたのを気取られないように訊ねた。
「場所は?」
「おじいさんだけしか見えない。背景は、真っ白……」
「ふぅん……」
「だれだろう?」
「東さんだと思うよ」
「え? 写真と違うよ」
遺影の東由多加は、髪もひげも黒い。
亡くなる直前に、病室で生後3ヶ月の息子を抱いた東の写真もあるのだが、
抗癌剤で脱毛し(抗癌剤を使いはじめてから黒髪が白髪に変わった)僅かに残った白髪を隠すために毛糸の帽子をかぶっている。
白髪でひげだけ黒い東の写真は、無い――。
白い丈が短い着物は経帷子で、白いハイソックスみたいなものというのは脚絆だろう。
東由多加の命日は、2000年4月20日。
14年が経った。
27日は初七日だった。
息子に、なにか伝えたいことがあるのだろうか?
東の墓は、長崎の大浦天主堂の隣の妙行寺にある。
ここ数年、お墓参りをしていないので、淋しがっているのかもしれない。
お金に余裕ができたら(そんなこと、あるのだろうか……)長崎に行こう。