シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

【コラム】カード社会の「不都合な真実」        

2012年05月01日 13時58分05秒 | Weblog
  韓国大手紙・朝鮮日報12年4月29日記事抜粋
従来型の市場で韓医院(韓医学の診療所)を経営する友人がいる。主に市場の商店主が顧客で、この友人が言うには市場の景気は底冷えの状況だという。体が資本の商店主たちは、以前は薬草などを処方した「補薬」を一包み服用していったが、最近ははり治療を受けるだけで帰るという。景気がそれだけ低迷している証拠だ。
 もちろん買い物客が減った影響も大きいが、実はクレジットカードの使用が増え、脱税が困難になったという「不都合な真実」も背景にある。現金決済ならば、売り上げをごまかし、付加価値税や所得税を過小申告できたが、現在は大半の客がクレジットカードで決済するため、売り上げを漏れなく申告するほかない。つまり、脱税ができないため、所得が減り、生活が困窮しているというわけだ。
 そんな話をしてくれた韓方医の友人も事情は変わらない。患者がクレジットカードで決済するため、所得全額を正直に申告せざるを得ないという。韓国社会の自営業者は今、クレジットカードの透明性という網に引っ掛かってしまっている。
 クレジットカード会社の前で鉢巻きを締め、手数料引き下げを要求する自営業者には、そんな現実が隠されている。以前は支払っていなかった税金を払うようになり、生活が苦しくなったため、せめて手数料でも引き下げてもらおうと、カード会社を標的にしたのだ。ただでさえ苦しいのに、流通大手の手数料率だけを下げ、自営業者に高率の手数料を課すカード会社が憎いというわけだ。
 韓国のクレジットカード使用率は世界でも最高水準だ。国際決済銀行(BIS)が、国内総生産(GDP)に占めるクレジットカード使用額を調べたところ、韓国は39.6%(2010年現在)で、米国(25.4%)、英国(31.2%)、オーストラリア(27.0%)、日本(8.4%)、ドイツ(6.8%)に比べはるかに高かった。与信金融協会によると、クレジットカード利用額が民間消費支出に占める割合は60%を超えた。
 自営業者の懐が丸見えになり、政府の台所は潤った。ここ数年、韓国の景気は思わしくないが、国税収入は安定して伸びている。体感景気が冷え込んでも、税収が順調に伸びる背景には、クレジットカードが一役買っている。ある報告書によると、クレジットカード利用額が1兆ウォン(約737億円)増えると、付加価値税収は777億ウォン(約57億円)増えるという。
 不景気でも税収を増やすというのは、マクロ経済運営の常識に反する。税制は本来、不景気時には減税を行い、好況期には増税を行うことで、景気変動の落差を埋める自動安定化装置の役割を果たさなければならない。しかし、景気低迷が進む中、自営業者は事実上税負担が増え、実質所得が減ってしまった。それにもかかわらず、影響を軽減しようという政府の努力は見られない。自営業者とクレジットカード会社がそれぞれ生き残りを懸けて闘っているのに、政府が腕組みして傍観しているのは無責任だ。
 政府は税率引き下げが難しければ、国税をクレジットカードで支払う際、手数料の一部を国家がクレジットカード会社に補填(ほてん)し、それを財源として、零細自営業者に対するクレジットカード手数料引き下げを行うなどさまざまな方法を講じるべきだ。
朴宗世(パク・チョンセ)経済部次長
(投稿者注)
韓医院(韓医学の診療所) ・韓方医=漢方医院(韓国では漢方医のライセンスがある)
韓国では、1000ウオン(約70円)の支払いでもカードを使う人が多い。理由の一つは、サラリーマンの場合、年末調整で支払った付加価値税(消費税)の一部の還付があることにある。
また、企業の経費もカードや銀行送金でなく現金支払いの場合は、税務署が経費と認めない場合がある。政府がカード会社のセールスマンのようなものだ。


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