シニア花井の韓国余話

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サムスンに一方的に巨額の賠償求める調停委【記者手帳】 

2015年07月27日 20時01分01秒 | Weblog
 サムスン電子の半導体と液晶の工場で勤務していた従業員が白血病を発病した問題で、その補償策について検討するために立ち上げられた民間の調停委員会が勧告した内容が、当事者のサムスン電子はもちろん、財界全体に衝撃を与えている。サムスン電子だけでなく、いかなる企業も到底受け入れられない内容だからだ。
 委員会が提示した勧告案は「サムスン電子が1000億ウォン(約110億円)を拠出し、補償のための公益財団を立ち上げる」というものだった。この内容について、半導体業界の関係者は「調停委員会が提示した額があまりにも大きいことにまず驚いたが、その数字の根拠が何も提示されていないことにも驚いた」と語る。委員会は「補償と財団の運営を行うに当たり、もしこの額で足りなくなれば、引き続き資金を拠出しなければならない」と要求している。1000億ウォンでスタートした負担額が、今後どこまで増えるか分からないというわけだ。
 委員会はどのような計算をしてこの額を提示したのか明らかにせず、ただ財団について「韓国社会が先頭に立って被害者を慰め、支援を行う社会的扶助」という一方的な説明しかしていない。つまり委員会は、この資金を「国民から集めた寄付」と同じように考えているわけだ。さらにこの額から考えると、委員会はサムスン電子の白血病問題を、旅客船「セウォル号」沈没事故と同じレベルの「国家次元の大惨事」と考えていることになる。なぜならセウォル号沈没後、個人や企業などが寄付した総額は1000億ウォンに達したからだ。ちなみにセウォル号沈没による死者・行方不明者は304人だが、今回の白血病問題で産災(労災)認定を申請した従業員は57人で、そのうち死者は自殺者1人を含む21人、しかもうち7人は政府と裁判所からすでに産災が認定されている。そのような人たちに対して委員会は、セウォル号沈没事故と同じレベルの「社会的扶助」が必要と主張しているわけだ。
 半導体工場の労働環境と白血病など難治病との関係については、ほかの先進国でもまだ結論が出ていない。かつてサムスン電子と同じような立場に置かれた米国のIBMや英国のNSUKのケースを見ると、大学の研究者や政府が社員や元社員を対象に大掛かりな追跡調査を行ったが、最終的に工場での作業が発病の原因だということを示す明確な証拠を見いだすことはできなかった。ところがサムスン電子は社員と元社員の一部が白血病を患い、さらにその一部が死亡したことに対して謝罪と補償を行うことをすでに表明している。科学的な根拠が不十分だったとしても、いわゆる「蓋然性」があることを会社として認めたわけだ。ところが委員会は、これほど素直な企業を「カモ」のように認識し、天文学的な金額の支払いを改めて要求した。もしこれがまかり通るのなら、このような国で誰が企業活動をしたいと考えるだろうか。
産業2部= 李吉星(イ・ギルソン)記者
韓国大手新聞 朝鮮日報15年7月25日記事抜粋


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