シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

錦湖タイヤが韓国を去る日【コラム】 

2015年10月01日 08時25分00秒 | Weblog
 「CEO(最高経営責任者)が年に2-3か月も労働組合との賃金交渉にかかりっきりになる状況で、経営に専念できるわけがない」(セルジオ・ホシャ韓国GM社長)
 「率直に言って、今米国の企業が中国ではなく韓国に投資する理由はない」(エイミー・ジャクソン駐韓米国商工会議所代表)
 9月17日に韓国経済研究院の主催で行われた座談会で、韓国に進出している外資系企業のCEOからはこうした「本音」が相次いだ。ホシャ社長は「GMインド工場では人件費などを含めた生産コストは韓国の半分程度だ」として「最近は市場がグローバル化しているにもかかわらず、韓国の労働者たちは他国の労働者との競争が避けられないという事実を忘れているようだ」と指摘した。
 年収6000万-9000万ウォン(約600万-900万円)という高賃金の職場で今年何が起きているかを見れば、こうした指摘が的を射ていることが分かる。35日間にわたりストライキを繰り広げ、次期執行部の選出のために今月20日に一時的にストを中止した錦湖タイヤがその代表例だ。昨年、社員1人当たりの給料が6200万ウォン(約617万円)だった同社は、ここ3年間で売り上げが18%減少したにもかかわらず、給料は逆に17%増えている。今年の上半期も売り上げは前年同期比12%減、営業利益は半減した。それでも労組は「賃金と業務手当をもっと上げろ」と訴えてストを繰り広げ、これまでに1300億ウォン(約130億円)以上の売上損失を計上した。年収9000万ウォンを超える現代・起亜自動車もそろって賃上げを要求し、ストを決議した。韓国企業各社の業績低迷と営業利益の減少は5年以上も続いている。それにもかかわらず、強硬路線を貫く労組のせいで「各種負担が増えながらも生産性は足踏み状態」という状況が続けば、韓国の主力企業の海外への移転は火を見るよりも明らかだ。米国では、連邦議会が輸出入銀行の存続を承認せず今年7月から同行の金融支援が全面的に停止すると、米国を代表するメーカー、ゼネラル・エレクトリック(GE)社は、500人分の職を国外に移転すると発表した。米国内にあるガスタービン製造工場をフランスに移転するとともに米国工場に勤務していた400人を解雇し、フランスで同数の社員を採用するというのだ。ジョン・ライスGE副会長は「下半期に米国で採用する予定だった100人は、ハンガリーや中国などで雇用することにした」と述べた。ボーイング社も同様の理由で、カリフォルニア州にある衛星製造工場を閉鎖する方針を固めた。 グローバル経済時代を迎え、大手メーカー各社は生産コストが安くて業務を立ち上げやすい地域に徐々に移転し始めている。こうした現象が起きるのは当然の流れだ。錦湖(クモ)タイヤも韓国国内に3カ所、中国・ベトナムなど海外には5カ所に工場がある。賃金水準が相対的に高い韓国国内の工場が生き残るためには、より高い生産性と高品質の双方を兼ね備えなければならない。これとは正反対に毎年の恒例行事のごとくストを繰り広げるのであれば、生き残れる企業はない。 企業は地域社会の経済的基盤であり、住民たちの生活の場そのものでもある。光州商工会議所は錦湖タイヤの長期ストに関し、20日に声明を発表し「強硬労組のイメージが対外的に広まり、今後の企業誘致に大きな支障を来すだろう」と訴えた。錦湖タイヤが韓国の生産拠点を閉鎖して韓国を去る日が近い将来訪れるということを、労組だけが知らないでいるような気がして歯がゆい思いだ。
辛殷珍(シン・ウンジン)産業1部記者
韓国大手新聞 朝鮮日報15年9月29日記事抜粋


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