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破産手続の効力発生時期

2022-11-07 18:45:39 | 債権管理・倒産・執行

【例題】現在、甲地方裁判所では、GがSを相手取った金銭請求訴訟が係属している。

(1)Sについて破産手続が開始した。

(2)(1)の破産手続が終了した。

 

[破産手続の開始:効力発生=決定時(≠確定時)]

・開始決定書:破産手続開始の申立てに対する裁判には裁判書の作成が要求される(破産規則19条1項)。破産手続開始の決定をする場合、決定書には「決定の年月日時」が記載される(破産規則19条2項)。□条解254

・通知方法:破産手続開始決定の主文などは、直ちに、官報に掲載する方法によって公告される(破産法32条1項、10条1項)(※)。公告の効力は掲載の翌日となる(破産法10条2項)。関係者には公告すべき事項が別に通知されるものの(破産法32条3項)、開始決定に対する即時抗告期間(2週間)の起算日は、通知ではなく公告をもって画される(破産法9条)。□条解290

※実務上、裁判から官報掲載まで7~14日程度を要する。適当な時期に破産裁判所に「いつの官報に掲載されたか、本紙か号外か」を聞き、インターネット版官報で閲覧すればよい。

・効力=開始決定時:破産財団に属する破産者の財産を直ちに確保させるため、破産手続開始の効果は、確定を待たずして決定時に直ちに生じる旨が明文化されている(破産法30条2項)。なお、いつをもって「決定時」とするかは諸説あるが、実務的には、決定書に記載された日時を基準にすればほぼ足りるか(たぶん)。□条解255-7

・即時抗告OK:利害関係人は、破産手続開始の申立てに対する裁判に対して即時抗告ができる(破産法33条1項、9条前段)。即時抗告期間については「個別送達は1週間、公告は2週間」という二重の規律がされているところ(破産法13条→民訴法332条、破産法9条後段)、送達と公告(公告必要型、代用公告型)の両方がされた場合の即時抗告期間は「公告を基準とした2週間」と解されている(最三決平成12年7月26日民集54巻6号1981頁)。□条解79-80

 

[破産手続の終了(1):同時廃止の効力発生=官報掲載翌日時説or決定時説]

・要件:破産手続開始時点で破産手続費用の支弁に不足すると認められるときは、同時破産手続廃止決定がなされる(破産法216条1項)。

・通知方法:官報に開始決定主文と廃止決定主文が併記され(破産法216条3項前段)、同時に破産者にも通知される(破産法216条3項後段)。□条解1418

・効力発生時期の対立:開始決定の効力発生時は決定時となる旨が明文される一方(破産法30条2項)、同時廃止決定の効力発生時を明記した条文はなく、見解が分かれる。□条解1434-5

[A説]一般論を貫徹すれば「廃止決定の効力発生時期=官報掲載の翌日午前0時(破産法10条2項)」となる。

[B説]破産法30条2項を類推して「廃止決定の効力発生時=決定時」と解する。

・A説に立った場合、「同廃決定はされたが、その官報掲載がされる前」の空白期間における訴訟の中断処理が問題になるが、「同廃ゆえ破産財団が構成されない=『破産財団に関する訴訟』は存在しない」と整理すれば、中断の問題は生じない。B説に立った場合は、「同廃決定時に直ちに廃止の効力も生じた」と解することでやはり中断の問題は生じない。□条解1436

・即時抗告OK:同廃決定に対しては即時抗告が可能である(破産法9条前段、216条4項)。即時抗告期間は、公告の翌日から2週間となる(破産法9条後段)。

・免責手続:免責意見申述期間は開始決定時以後に定められるところ(破産法251条1項)、実務上は、開始決定と同時に定められることが多い。同廃事件では、同廃の主文とともに免責意見申述期間が公告される(破産法251条2項)(※)。□条解1645

※「同廃決定→免責の裁判→免責の確定」までのタイムラグが生じるため、強制執行が係属している場合は、執行裁判所への速やかな上申が必要となる。→《破産手続が債権執行に与える影響》□条解1435

 

[破産手続の終了(2):異時廃止の効力発生=即時抗告期間経過時(確定時)]

・要件:異時廃止の実体的要件は「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」であり、手続的要件は「破産管財人の申立てor職権」である(破産法217条1項)。通常は、管財人が「破産手続廃止の申立書」を提出する。

・異時廃止決定書:異時廃止決定にあたっては、裁判書(異時廃止決定書)が作成される(破産法217条4項参照)。

・通知方法:官報に異時廃止の主文と理由の要旨が掲載され(破産法217条4項前段)、破産者と破産管財人に決定書が送達される(破産法217条4項後段)。

・即時抗告OK:異時廃止決定に対しては即時抗告が可能である(破産法9条前段、217条6項)。即時抗告期間は、送達を受けた者の即時抗告期間は1週間(破産法13条、民訴法332条)、それ以外の者の即時抗告期間は官報掲載翌日から2週間となる(破産法9条後段)。

・効力=確定時:同時廃止と異なり、異時廃止の効力は確定時に発生する(破産法217条8項)。具体的には、官報掲載の翌日から起算して2週間の即時抗告期間の経過を待つ必要がある(破産法217条6項、9条後段)。□条解1442

 

[破産手続の終了(3):終結の効力発生時=官報掲載翌日時説or決定時(確定時)説]

・要件:終結の実体的要件は「配当終了→任務終了集会(88条4項)の終結」である(破産法220条1項)。異時廃止と異なり、当然に終結決定がなされる(破産法220条1項)。

・終結決定書:名古屋地裁の運用では、終結決定書が作成されている。□講義256

・通知方法:異時廃止と同様に、破産手続終結の決定も官報掲載の方法によって公告され(破産法220条2項前段、10条1項)、破産者に通知される(破産法220条2項後段)。名古屋地裁では、管財人に終結決定書が交付されている。□条解1461、講義256

・効力発生時期の対立:同廃と同様に、終結の効果の発生時についても争いがある。

[A説]公告時(正確には官報掲載の翌日)に発生するという見解。□条解1461

[B説]公告を待たずして終結決定時に発生するという見解。□講義257

・即時抗告NG:明文がない以上、終結決定に対する不服申立ては認められない(破産法9条)。□条解1461

 

[免責:効力発生時=即時抗告期間経過時(確定時)]

・裁判の時期:免責許否の決定の決定時期について定めはないものの(破産法252条1項柱書参照)、原則として破産手続の終了時や終了後にすべきものと解される。□条解1671

・免責許可決定書:免責許可決定にあたっては、裁判書(免責許可決定書)が作成される(破産法252条3項前段参照)。

・通知方法(その1):裁判所は、破産者と破産管財人に免責許可決定書を送達する(破産法252条3項前段)。この送達は送達代用公告で代えられない(破産法252条3項後段)。□条解1672

・通知方法(その2):裁判所から破産債権者にも決定主文を記載した書面を送達する建前だが(破産法252条3項前段)、名古屋地裁の運用では送達代用公告によっている(破産法10条3項本文、252条3項後段参照)。□講義271-2

・即時抗告OK:免責許否の裁判に対して、利害関係人は即時抗告をすることができる(破産法9条前段、252条5項)。送達を受けた者の即時抗告期間は1週間(破産法13条、民訴法332条)、送達代用公告の場合の即時抗告期間は2週間となる(破産法9条後段)。

・効力=確定時:以上の即時抗告期間が経過すると、免責許可決定の効力が生じる(破産法252条7項)。

 

愛知県弁護士会倒産実務委員会編『破産管財人のための破産法講義』[2012]

伊藤眞・岡正昌・田原睦夫・林道晴・松下淳一・森宏司『条解破産法〔第2版〕』[2014]

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