[民事執行の4種:強制執行・担保執行・形式的競売・債務者の財産状況調査]
・民事執行法は、「民事執行」を、次の4つを総称する概念として定義する(1条)。
・[1]強制執行:第2章(22条から179条まで)。債務名義により行われる(22条柱書)。
・[2]担保執行:第3章(180条から195条まで)。法文上は「担保権の実行としての競売等」と呼称される。
・[3]形式的競売:1条のほかは、195条(=第3章の最後)にのみ登場する。法文上は「留置権による競売」と「民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売」と呼称される(195条)。後者(狭義の形式的競売)の典型例が、共有物分割のための競売である。いずれも「担保権の実行としての競売の例による」とのみ規律される。□和田209
・[4]債務者の財産状況の調査:第4章(196条から211条まで)。「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」から成る。
[民事執行>強制執行(2種):金銭回収目的とそれ以外]
・[1]金銭執行:第2章第2節(43条から167条の16まで)。法文上は「金銭の支払を目的とする債権についての強制執行」と呼称される。「差押え→換価→満足」との過程からなる。□和田86
・[2]非金銭執行:第2章第3節(168条から179条まで)。法文上は「金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行」と呼称される。
[民事執行>強制執行>金銭執行(4種):不動産・船舶・動産・債権(+アルファ)]
・金銭執行は、執行の対象によって細分化される。
・[1]不動産執行(不動産に対する強制執行):第2章第2節第1款(43条から111条まで)。対象となる「不動産」には、「共有持分」「登記された地上権・永小作権・これらの共有部分」が含まれ(43条2項)、「登記することができない土地の定着物」は除外される(43条1項)。
>[1-1]強制競売(※):第2章第2節第1款第2目(45条から92条まで)。
※現行法では「不動産競売」というタームは存在しないものの、執行実務では「不動産強制競売(ヌ事件)、担保不動産競売(ケ事件)」を総称して「不動産競売事件」と呼ぶことがある。□和田191
>[1-2]強制管理:第2章第2節第1款第3目(93条から111条まで)。
・[2]船舶執行(船舶に対する強制執行):第2章第2節第2款(112条から121条まで)。対象となる「船舶」は「総トン数二十トン以上の船舶」であるが、「端舟その他ろかい又は主としてろかいをもつて運転する舟」は除外される(112条)。
・[3]動産執行(動産に対する強制執行):第2章第2節第3款(122条から142条まで)。対象となる「動産」には、「登記することができない土地の定着物」「土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの」「裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券」が含まれる(122条1項)。
・[4]債権執行等
>[4-1]債権執行:第2章第2節第4款第1目のほとんど(143条から166条まで)。対象となる債権は「金銭の支払を目的とする債権(金銭債権)」「船舶・動産の引渡しを目的とする債権」であるが、「少額訴訟債権執行の対象」は除外される(143条)。
>[4-2]その他の財産権に対する強制執行:第2章第2節第4款第1目のうち167条のみ。対象となる財産権は「not不動産、not船舶、not動産、not債権」である。原則として債権執行の例による(167条1項)。
>[4-3]少額訴訟債権執行:第2章第2節第4款第2目(167条の2から167条の14まで)。債務名義が少額訴訟の判決である場合の特則。当該簡易裁判所で手続きが完結される。
・補足ー扶養義務等の回収の特例:ⅰ確定期限未到来分についても債権執行を開始できる(151条の2第1項)。ⅱ金銭執行でありながら間接強制も選択できる(167条の15)。
[民事執行>担保執行(4種):不動産・船舶・動産・債権(+アルファ)]
・「担保執行」は「強制執行>金銭執行」に対応して、担保権の目的物毎に規律される。
・[1]不動産担保権の実行
>[1-1]担保不動産競売(※):180条から188条まで、194条。強制競売に関する規定が準用される(188条)。□司研執行93
※<再掲>現行法では「不動産競売」というタームは存在しないものの、執行実務では「不動産強制競売(ヌ事件)、担保不動産競売(ケ事件)」を総称して「不動産競売事件」と呼ぶことがある。□和田191
>[1-2]担保不動産収益執行:180条から186条まで、188条、194条。強制管理に関する規定が準用される(188条)。
・[2]船舶競売:189条、194条。
・[3]動産競売:190条から192条まで、194条。
・[4]債権及びその他の財産権についての担保権の実行:193条、194条。
[民事執行>強制執行>非金銭執行(4種):物・作為不作為・子・意思表示]
・[1-1]物>不動産の引渡し等:168条、168条の2、173条。直接強制か、間接強制による。
・[1-2]物>動産の引渡し:169条、173条。直接強制か、間接強制による。
・[1-3]物>目的物を第三者が占有する場合の引渡し:170条、173条。債権執行類似(債務者の第三者に対する引渡請求権の差押え→債権者の引渡請求権行使→取立訴訟)か、間接強制による。
・[2-1]作為債務>代替的:171条、173条。代替執行(債務者の費用で、第三者に当該作為をさせる、債務者がした行為の結果を除去する、将来のため適当な処分をする)か、間接強制による。
・[2-2]作為債務>不代替的:172条、171条1項1号。間接強制による。
・[2-3]不作為債務:172条、171条1項2号。「●●をするな」という不作為債務は代替できない。間接強制による。□和田182
・[3]子の引渡し:174条から176条まで。執行方法は、原則は間接強制により、例外的に直接強制による。
・[4]意思表示:177条。意思表示の擬制による。
司法研修所編『民事弁護教材改訂民事執行〔補正版〕』[2005]
和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法〔第3版〕』[2021]

