信用情報機関の実務

2024-05-17 19:19:25 | 倒産法・債権管理

【例題】Sは、自動車ローンの申込みをしたところ、ディーラーから「ローンが通らなかった」と言われた。

 

[信用情報機関の実際]

・信用情報機関は、ローンやクレジットカード等に関する個人信用情報を登録し、会員(金融機関など)による与信取引上の判断のために、信用情報を提供している。

CIC:「株式会社シー・アイ・シー」の略称。1984年にクレジット会社の共同出資により設立された。主として「割賦販売、消費者ローン等のクレジット事業」を営む企業(信販会社、百貨店、専門店会、流通系クレジット会社、銀行系クレジット会社、家電メーカー系クレジット会社、自動車メーカー系クレジット会社、リース会社、保険会社、保証会社、銀行、消費者金融会社、携帯電話会社など)を会員とする。わが国で唯一、割賦販売法の指定信用情報機関(35条の3の36~35条の3の59)と貸金業法の指定信用情報機関(41条の13~41条の38)の両方を兼ねる。

JICC:「株式会社日本信用情報機構」の略称。消費者金融業界の情報センターが母体となり、1986年に設立された。貸金業法の指定信用情報機関である。

全国銀行個人信用情報センター:全銀協(一般社団法人全国銀行協会)が設置、運営している。会員は「銀行やそれと同視される金融機関、政府関係金融機関、信用保証協会、クレジットカード会社や保証会社等」である。

 

[信用情報機関間の情報交流]※CICの説明JICCの説明/センターの説明

・CICとJICCとの間の交流(FINE):貸金業者が消費者の総借入残高を正確に把握するため、CICとJICCとの間では、貸金業法に基づいて相互に残高情報等の情報交流を行っている。

・3機関での交流(CRIN):3機関における自主的運用として、信用情報のうち「延滞等の情報」「本人確認書類の紛失・盗難等に係る本人申告コメント情報」等の情報交流を行っている。

・3機関での交流(IDEA):カードローン等の与信審査における総債務を把握するため、センターは「預金取扱金融機関が提供する消費性かつ無担保のカードローンやキャッシングの情報」を、CICとJICCは「貸金業者が取り扱う金銭の貸付に係る情報」を交流している。

 

[信用情報の開示]

・本人は、信用情報機関に対して「自分の信用情報」の開示を請求できる。

CICから開示される信用情報

[1]クレジット情報:クレジットやローン等の契約内容や支払状況、残高等(契約した会社名/氏名/生年月日/電話番号/契約の内容/契約年月日/契約額/請求された額/入金した額/残高/返済の状況/入金の状況など)。

[2]申込情報:会員が、新規のクレジットやローン等の申込みを受けた際に、支払能力を調査するため確認した情報(申し込んだ会社名/氏名/生年月日/電話番号/確認した日/契約予定額/申し込んだ商品の内容など)。

[3]利用記録:会員が、クレジットやローン等の利用途上などにおける審査のために、信用情報を確認した記録(利用した会社名/氏名/生年月日/電話番号/確認した日/確認した目的など)。

[4-1] 参考情報=協会依頼情報:日本貸金業協会や全国銀行協会の貸付自粛制度を通じて本人がCICへの登録を依頼した情報(氏名/生年月日/電話番号/申告した内容/コメントなど)。

[4-2]参考情報=本人申告情報:本人の申出によりCICに登録した「証明書紛失」等の情報(氏名/生年月日/電話番号/申告した内容/コメントなど)。

JICCから開示される信用情報(個人)

[1]本人を特定するための情報(※~契約内容に関する情報等が登録されている期間まで):氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、勤務先電話番号、運転免許証等の記号番号等 

[2]契約内容に関する情報(※~2019年10月1日以降契約=契約終了から最大5年):登録会員名、契約の種類、契約日、貸付日、契約金額、貸付金額、保証額等

[3]返済状況に関する情報(※~2019年10月1日以降契約=契約終了から最大5年):入金日、入金予定日、残高金額、完済日、延滞等

[4]取引事実に関する情報(※~2019年10月1日以降契約=契約終了から最大5年):債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等

[5]申込みに関する情報(※~照会日から6か月以内):本人を特定する情報(氏名、生年月日、電話番号、運転免許証等の記号番号等、申込日、申込商品種別等)

[6-1]本人申告コメント情報(※~登録日から5年以内):本人が申告した本人確認書類の紛失・盗難等の情報

[6-2]貸付自粛依頼情報(※~申請日から5年以内):日本貸金業協会やセンターに貸付自粛依頼を申入れたことを表す情報

JICCから開示される法人情報

[1]法人を特定するための情報:法人名、代表者名、所在地、電話番号等

[2]保証人に係る本人を特定するための情報:氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、勤務先電話番号、運転免許証等の記号番号等

[3]契約内容に関する情報(※~完済から最大5年):登録会員名、契約の種類、契約日、貸付日、契約金額、貸付金額、保証額等

[4]返済状況に関する情報(※~完済から最大5年):入金日、入金予定日、残高金額、完済日、延滞等

[5]取引事実に関する情報(※~当該事実から最大5年):債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等

[6]申込みに関する情報(※~照会日から最大6か月):保証人に係る本人を特定する情報(氏名、生年月日、電話番号、運転免許証等の記号番号等)、申込日、申込商品種別等

全国銀行個人信用情報センターから開示される信用情報

[1]取引情報(※~契約終了から最大5年):ローンやクレジットカード等の契約内容とその返済状況(入金の有無、延滞・代位弁済・強制回収手続等)

[2]照会記録情報(※~当該利用日から最大1年):会員がセンターを利用した日、ローンやクレジットカード等の申込み・契約の内容等

[3]官報情報(※~当該決定から最大7年):官報に公告された破産・民事再生開始決定等(免責決定等の情報は登録されない)

[4]本人申告情報(※~登録日から最大5年):「本人確認書類の紛失・盗難・漏えい」等、「同姓同名別人の情報がセンターに登録されており自分と間違えられるおそれがある」等

[5]貸付自粛情報(※~申告日から最大5年):本人に浪費の習癖があることやギャンブル等依存症により本人やその家族の生活に支障を生じさせるおそれがあることから、自らを自粛対象者とするのご本人からの申告内容

 

貸付自粛制度

・申込先は、日本貸金業協会か、全国銀行個人信用情報センターのいずれか1つに行う。

・申告は、原則として本人(or法定代理人)に限定される。この例外として、本人が所在不明であること等が証明できれば、配偶者や二親等内の親族から申告することもできる。

・貸付自粛情報は、全ての信用情報機関(CIC、JICC、センター)で共有され、申告日から5年以内登録される。

・申告日から3か月間は原則として依頼の撤回ができない。

 

[参考:携帯電話料金の不払い情報の交換

・1999年4月より、移動系通信事業者間で「契約解除後の料金不払いのある顧客の情報(氏名、生年月日、性別、住所、契約解除前の携帯電話の電話番号等、連絡先電話番号、料金不払いの状況)」が交換されている。

・登録期間は契約解除から5年である。

 

東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会『クレジット・サラ金処理の手引〔6訂版〕』[2019]pp78-82

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