弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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試用期間満了前の本採用拒否(解雇)の有効性判断基準

2011-12-19 | 日記
Q26 試用期間満了前の本採用拒否(解雇)の有効性判断基準は,どのように考えるべきでしょうか?

 試用期間を設けるということは,採用決定後も社員としての適格性を審査し,試用期間満了時までに本採用するかどうかの結論を出すということを意味します。
 試用期間の途中で本採用拒否(解雇)するということは,本来予定された期間の上限に達していないのに,社員としての適格性がないとの結論を出すということであり,これを労働者の側から見ると,社員としての適格性を見てもらえる期間が一方的に短縮されてしまったことを意味します。
 試用期間満了前の本採用拒否が有効となるのは,試用期間満了時まで社員としての適格性を審査しても,適格性がないという結論が出ることが明らかな場合に限られると考えるべきでしょう。
 試用期間における本採用拒否の基準を緩やかに考えることについて,最高裁が主に念頭に置いているのは,試用期間満了をもって本採用を拒否するようなケースと思われます。
 試用期間満了まで間もない時期であれば,試用期間満了前であっても,試用期間満了時まで社員としての適格性を審査しても適格性がないという結論が出るか否かの判断は比較的容易なのかもしれませんが,採用から間もない時期における本採用拒否等,試用期間満了までまだ期間がある時点における本採用拒否は,余程の事情がない限り相当性を欠き,解雇権を濫用したものとして無効(労働契約法16条)となるリスクが高いと考えられます。

弁護士 藤田 進太郎

試用期間中の本採用拒否

2011-12-19 | 日記
Q22 試用期間中の社員であれば,本採用拒否は自由にできますよね?

 使用者と試用期間中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案がほとんどですから,本採用拒否の法的性質は,留保された解約権の行使であり,解雇の一種ということになるのが通常のため,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用されることになります。
 採用の場面とは異なりますから,試用期間中だからといって,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではありません。
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決も,「被上告人に対する本件本採用の拒否は,留保解約権の行使,すなわち雇入れ後における解雇にあたり,これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判示しています。

 弁護士 藤田 進太郎