弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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契約期間3年の契約社員が1年半で辞めたいと言い出した場合における退職拒絶の可否

2011-12-07 | 日記
Q177 契約期間3年の契約社員が,1年半で辞めたいと言い出し,退職届を提出してきました。退職を拒絶することはできますか?

 労基法137条は,所定の措置が講じられるまでの間は,労働者は,1年を超える契約期間を定めた場合であっても,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの,労基法14条1項1号2号の専門的な知識等を有する労働者等を除き,契約期間の初日から1年を経過した日以後は,いつでも退職できるものとしています。
 このFAQを執筆している時点では,所定の措置は講じられていませんので,貴社の契約社員が,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの,労基法14条1項1号2号の専門的な知識等を有する労働者等に該当する場合を除き,契約期間中の退職であっても,拒絶することはできないことになります。

弁護士 藤田 進太郎

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懲戒解雇において解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われる要素

2011-12-07 | 日記
Q5 懲戒解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?

 懲戒解雇では,「規律違反行為があるか」が問題となり,
① 規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反等)
② 程度,回数
③ 改善の余地の有無
等を総合検討することになります。
 懲戒解雇の場合は,普通解雇の場合よりも大きな不利益を労働者に与えるものですら,規律違反の程度は,「制裁として労働関係から排除することを正当化するほどの程度」に達していることが必要となります(『労働事件審理ノート』)。

弁護士 藤田 進太郎

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『労働審判制度についての意識調査 基本報告書』

2011-12-07 | 日記
『労働審判制度についての意識調査 基本報告書』が,東京大学社会科学研究所のウェブサイトにアップされました。
http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/roudou/abstract.html
263頁もある大作です。

弁護士 藤田 進太郎

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普通解雇において解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われる要素

2011-12-07 | 日記
Q4 普通解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?

 普通解雇では,「勤務成績,勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合か」が問題となり,
① 当該企業の種類,規模
② 職務内容,労働者の採用理由(職務に要求される能力,勤務態度がどの程度か)
③ 勤務成績,勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ,解雇しなければならないほどに高いかどうか)
④ その回数(1回の過誤か,繰り返すものか),改善の余地があるか
⑤ 会社の指導があったか(注意・警告をしたり,反省の機会を与えたりしたか)
⑥ 他の労働者との取扱いに不均衡はないか
などを総合検討することになります(『労働事件審理ノート』)。

弁護士 藤田 進太郎

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仕事の能力が低い。

2011-12-07 | 日記
Q10 仕事の能力が低い。

 仕事の能力が低いというのは,基本的には,注意,指導,教育して能力の育成を図るべき問題です。
 注意,指導,教育して必要な能力を身につけさせたり,異なる部署への配転をしたりして,能力を発揮できるよう最大限努力する必要があります。
 ただし,特定の能力を有することを前提とした労働契約であること,地位を特定して採用したことが契約書などで明示されている場合で,契約で想定されている能力,地位にふさわしい能力がない場合は,原則として,教育や配転ではなく,解雇を検討することになります。

 能力不足を理由とした解雇をすることができるかどうかは,労働契約で求められている能力が欠如しているかどうかによります。
 単に思ったほど能力がなく,見込み違いであったというだけでは,解雇は認められません。
 一般的には,勤続年数が長い社員,賃金が低い社員は,能力不足を理由とした解雇が認められにくい傾向にあります。
 長期雇用を予定した新卒採用者については,社内教育等により社員の能力を向上させていくことが予定されているのですから,能力不足を理由とした解雇は,極めて例外的な場合でない限り,認められません。
 また,採用募集広告に,「経験不問」と記載して採用した場合は,一定の経験がなければ有していないような能力を採用当初から有していることを要求することはできなくなるのが通常です。

 特定の能力を有することが労働契約の条件として明示されているなどして,労働契約上要求されている場合で,労働契約で予定された能力がなかった場合には,原則として解雇が認められることになります。
 前提として,契約で求められている能力は,労働契約書等の書面に明示しておく必要があります。
 地位を特定して採用した場合は,労働契約で求められている能力はその地位にある者に要求される能力なのですから,その地位にある者に要求される能力が欠如しているかどうかが,解雇の可否の基準となります。
 やはり,労働契約書等の記載上,地位を特定した採用したことが客観的に分かるようにしておく必要があります。

 能力不足を理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには,能力不足を示す「具体的事実」を立証できるようにしておく必要があります。
 抽象的に能力不足と言ってみても,裁判官を説得することはできません。
 営業成績のように数字に残るものがある業務に従事している社員については比較的立証しやすいですが,そうでない業務に従事している社員については,何月何日に能力不足を示すどのような具体的事実があったのか,記録に残しておく必要があります。
 「彼(女)の能力が低いことは,周りの社員も,取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
 解雇に踏み切る可能性が高い場合は,解雇に先立ち,一定の目標を達成できない場合は解雇する旨,警告しておくことが望ましいところです。

弁護士 藤田 進太郎

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