弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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労基法上の労働者

2011-07-13 | 日記
Q126 「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「雇用する労働者」に該当するかどうかは,どのような基準で判断すればよいのでしょうか?

 最高裁は「雇用する労働者」に該当するかどうかの具体的判断基準を明らかにしていませんが,新国立劇場運営財団事件及びINAXメンテナンス事件において最高裁が検討した要素との類似性が見られることから,会社との業務委託(請負)の契約形式によって労務を供給する者については,ソクハイ事件中労委平成22年7月15日命令の示した以下の基準が参考になると思います。

 労働組合法第3条にいう「労働者」は、労働契約法や労働基準法上の労働契約によって労務を供給する者のみならず、労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者で、労働契約下にある者と同様に使用者との交渉上の対等性を確保するための労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるものをも含む、と解するのが相当である。
 本件のように会社との業務委託(請負)の契約形式によって労務を供給する者にあっては、
(A)
① 当該労務供給を行う者達が、発注主の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行うなど、いわば発注主の事業組織に組み込まれているといえるか
② 当該労務供給契約の全部又は重要部分が、実際上、対等な立場で個別的に合意されるのではなく、発注主により一方的・定型的・集団的に決定しているといえるか
③ 当該労務供給者ヘの報酬が当該労務供給に対する対価ないしは同対価に類似するものとみることができるか
という判断要素に照らして、団体交渉の保護を及ぼすべき必要性と適切性が認められれば、労働組合法上の労働者に該当するとみるべきである。
 他方、
(B)
当該労務供給者が、相応の設備、資金等を保有しており、他人を使用しているなどにより、その業務につき自己の才覚で利得する機会を恒常的に有するなど、事業者性が顕著である場合には、労働組合法上の労働者性は否定されることになる。

 本件メッセンジャーの労働者性を検討すると、
① メッセンジャーは会社の企業組織から独立した立場で本件書類等配送業務の依頼を受けているのではなく、会社の事業の遂行に不可欠な労働力を恒常的に供給する者として会社の事業組織に強く組み込まれており
② メッセンジャーの報酬等の契約内容は会社が一方的・定型的・集団的に決定しているといえ
③ メッセンジャーの収入は、本件書類等配送業務に係る労務供給に対する対価である
とみるのが相当である。
 他方、メッセンジャーは、配送業務の手段の一部を所有し、経費を一部負担しているが、それらは事業者性を基礎づけるものとはいえず、むしろ自己の才覚で利得する機会は全くない点で、事業者性は認め難い。
 以上からすれば、メッセンジャーは、労働契約又は労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者として、使用者との対等な交渉を確保するための労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切であると認められ、労働組合法上の労働者に当たる。

弁護士 藤田 進太郎

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労基法上の使用者

2011-07-13 | 日記
Q125 「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「使用者」とは雇用主のみを指すのですか?

 「使用者」の判断基準としては,朝日放送事件における最高裁第三小法廷平成7年2月28日判決が,「雇用主以外の事業主であっても,雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ,その労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合」には,その限りにおいて,右事業主は同条の「使用者」に当たるものと判示しています。
 つまり,雇用主でなくても,基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,当該労働条件等との関係に限っては,「使用者」に該当することになります。

弁護士 藤田 進太郎

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