選挙ブログ

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政権交代可能な2大政党制

2006-12-11 | その他
国政における政治家の役割は「立法」である。
これは憲法上明文があり、又、異論のあるものもいないと思われる。

「立法」とは「行政」への承認である。
「行政」には、法律に従ったことのみが権能として与えられているのである。
「立法」なくして「行政」はないのである。
しかしながら、現実に起こる事象というのは多様であり、臨機応変に対応することが求められる。
よって、ある程度の弾力性をもって「立法」がなされ、相当程度の意思決定が「行政」の担当者に委任されるのである。
この点を考慮すると、「立法」の役割とは「行政」へ基本的な指針を与えることに他ならない。

ところで、政党制度を採る以上、過半数の多数派政党の了解なしに「立法」が機能することは無い。
すなわち、多数党のみが「立法」権を独占するのである。

また、我が国は議院内閣制をとっている。
議院内閣制の下であれば、与党は過半数以上の多数を形成している。
すなわち「行政」と「立法」は与党の独占下にある。
政策の基本方針を定めるのも、それにしたがって実践するのも与党である。

いわば「執行役」「取締役」機能を与党が持つのである。
それに対して、野党の機能は「監査役」である。

「取締役」は「執行役」に基本的方針を与え、また「執行役」の行動が方針に準拠しているかを監視するのである。
「監査役」は、身内である「取締役」より批判的な視線で、方針への準拠を監視するのみである。
つまり、「取締役」は妥当性と適法性、「監査役」は適法性について判断するのである。

「妥当性」とは基本的な方針が妥当なものかどうか、「適法性」は方針へ準拠しているかどうかというものである。
妥当性を欠けば、それを是正することになるが、それは「立法」を通じてなされるのである。
基本的な方針が妥当性を欠くと判断しても、野党には、それを是正する権能は無いのである。

55年体制の下で、自民党は「執行役」「取締役」、社会党は「監査役」の地位を分担してきた。
よって、社会党に「執行役」「取締役」としての資質は必要無かった。

政権交代可能な2大政党制の下では、民主党にも「執行役」「取締役」としての資質も求められる。
よって、民主党は国会での活動において「監査役」の役割を果たしながら、「執行役」「取締役」としての資質も備えなければならないのである。

「執行役」としての資質とは何か?
それは「行政経験」である。
幸いにも、旧与党体制の下で閣僚経験のある小沢氏・菅氏らが民主党の一線に残存しているので、この点、現状で問題はない。
問題は中堅以下である。
中堅以下の議員には行政経験を積む機会が与えられていない。
このまま小沢氏・菅氏が第一線を退けば、行政経験つまり「執行役」としての資質に欠く政党になってしまうのである。
そうすれば、永久に政権交代は無い。

ここで、重要なのは地方自治における首長経験である。
首長とは行政官であり、ここを経ることにより行政経験を積むことができるのである。
民主党中堅にとって、重要なのは、地方自治体首長への転出である。
ここで研鑽を積み、長期の弊害もあり、2期3期で国政へ復帰する。
これにより民主党は大きな財産を得るのである。
また、元職・現職の首長を国政へ参画させることも、重要である。
このことで、民主党は党として「執行役」としての資質を高めることができるのである。

「取締役」としての資質とは何か?
それは「立法」であり、基本的な「行政」方針の妥当性である。
実は、ここが選挙の争点なのである。

「行政経験」という必要条件を満たした上で、その政党同士が方針の妥当性を議論するのが、政党間の政策論議の正しいあり方なのである。

また、「監査役」の役割は「取締役」とは異なるので、当然、野党は野党としての「監査役」の職責を果たさなくてはならない。

「執行役」「取締役」「監査役」それぞれの職務を峻別し、どの次元での議論であるかを理解することが重要である。
ここを全く混同した議論が散見される。

政権交代可能な2大政党制時代においては、院内はもちろん、院外・市井においても、峻別ある議論が必要なのである。