旧宮古市・田老町・新里村が合併、初代市長を決める選挙。
=市長選の歴史=
原点は1930年の普通選挙法による第2回総選挙にまでさかのぼる。
旧宮古町がある旧岩手1区の定員は3。
宮古出身の熊谷巌ら政友会が議席独占を狙ったが、宮古生まれの予備役海軍少将で軍縮派の高橋寿太郎が民政党から打って出て「宮古決戦」を展開。
宮古・下閉伊郡を二分する激戦の末に両氏とも当選した。
男性だけとはいえ選挙権を得た有権者たちは自信を持ち、政治や選挙を身近なものとして実感した。
熊谷の自死後、先代・菊池長右エ門の先代が政友会から出馬し当選。
41年に市制施行後の初代市長も歴任する。
代々「菊長」と呼ばれ、先々代も衆院議員を務めた。
市民の政治への関心は戦後になっても変わらなかった。
47総選挙では山田町出身の鈴木善幸元首相が社会党から初当選。
【47】
当選 菊池 信一 89 無・新
落選 吉田定右エ門 46 社・新
【49】
当選 関口 養隆 80 無
落選 浜田 成治 53 無
落選 杉本 和一 7 共
【50】
当選 中屋 重治 99 無
落選 中居英太郎 51 社
中屋重治・熊谷善四郎・盛合光蔵の保守3人が争った戦後4回目の市長選。
神奈川県警本部長を務め、いわば落下傘候補だった中屋の再選を支援したのは当時の自由・民主両党だった。
熊谷善四郎は熊谷巌の弟、盛合光蔵は終戦直前に市長に就任した人物である。
【54】
当選 中屋 重治 84 無・現
落選 熊谷善四郎 46 無・新
落選 盛合 光蔵 36 無・元
【58】
当選 菊池 良三 128 無・新
落選 晴山機智雄 114 無・新
菊池良三と中居英太郎の一騎打ちとなった6・8・10回目の市長選は保革の対決となった。
菊池は先代菊池長右エ門の弟。
自民党や鈴木善幸後援会が菊池を支援したのに対し、保守の牙城を切り崩したい中居は60年結党の民社党に移っており、支援労組も少なかった。
中居は社会党の県議を経て55年の衆院選に当選し1期務めたが、宮古でも左右両派の対立に泣かされた。
【62】
当選 菊池 良三 143 無・現
落選 中居英太郎 122 無・新
【66】
当選 菊池 良三 162 無・現
落選 泉沢 英司 20 共・新
【70】
当選 中居英太郎 170 無・新
落選 菊池 良三 130 無・現
【74】
当選 菊池 良三 160 無・元
落選 中居英太郎 157 無・現
落選 永浦 奎輔 12 共・新
【78】
当選 菊池 良三 187 無・現
落選 中居英太郎 164 無・元
千田は鈴木善幸元総理の秘書から政治家に転身。
【81】
当選 千田 真一 197 無・新
落選 落合 久三 7 共・新
落選 田島 正止 3 無・新
【85】
当選 千田 真一 183 無・現
落選 中居英太郎 172 無・元
【89】
当選 中居英太郎 162 無・元
落選 千田 真一 128 無・現
落選 中野 勝安 49 無・新
落選 落合 久三 10 共・新
熊坂が初出馬して三つどもえの戦いに敗れた93年の市長選。
菊池長右エ門は自民党公認だったが、熊坂は無所属。
しかし、熊坂は鈴木元首相の秘書かであった千田の主治医の関係で、鈴木元首相には深く師事していた。
【93】
当選 菊池長右エ門 130 自・新
落選 中居英太郎 119 無・現
落選 熊坂 義裕 12 無・新
【97】
当選 熊坂 義裕 186 無・新
落選 菊池長右エ門 147 無・現
【01】(無投票)
当選 熊坂 義裕 無投票 無・現
=構図=
新生宮古市の初代市長を選ぶ今回の選挙。
かつてのライバル、菊池長右エ門と中居英太郎が吉田陣営に回り、自民党は熊坂候補を押す。
対立の系譜は健在だ。
=開票結果=
当選 熊坂義裕 220 無・新 =自・公
落選 吉田洋治 153 無・新 =民・共・社
(投票率76%)
熊坂・旧宮古市長が大差で当選。
=見解=
下閉伊地区は、鈴木善幸元首相のお膝元で、民主が伸張する岩手にあって、最後の牙城となっている。
今回も、その孤塁を守った形だ。
かつて、激しく争った菊池・仲居が共闘したものの、こちらは過去の人になっていた。