=動向=
【自民・岩永】
自民現職・岩永浩美の後援会長は井本勇・前知事。
全県選挙区の参院選で、自民は59年以来、補選を含めて19連勝中だ。
だが、岩永は県内の自民候補としては、過去2回とも苦戦を強いられた。
初当選した95補選では、自民・新進両党の激突構図に加え、候補者選定などを巡って、元県議会議長・宮原岩政との対立もあり、5万8千票差と苦戦した。
98参院も非自民非共産陣営の統一候補に5万1千票差まで迫られた。
その時の19万票が過去最高の得票数だ。
岩永陣営は今回、それを上回る20万票を最低目標に置き、万全を期す。
全49市町村で後援会を立ち上げ、どこも地元の有力者が後援会長に就く。
すでに、県内最大の自民支持組織である農協の政治団体・県農政協議会をはじめ約400企業・団体から推薦を受けた。
総括責任者には、95年補選で候補者選定を巡って対立関係にあった中野吉實・県農協中央会長が座る。
比例区に立候補を予定する全国旅館組合会長・小原健史とも連携して戦う。
盤石の態勢にも見えるが、不安要素はある。
候補者6人が乱立した03知事選では、宮原との対立構図が再燃。
岩永派の多くが現知事の古川康を支持し、宮原が次点に終わった。
宮原の地盤である県東部の農民の自民離れを招いた。
陣内孝雄参院議員や水田唯市元県議ら自民議員が歴代理事長を務めた佐賀商工共済協同組合が粉飾決算の末に破産した。
これに、自民支持層だった中小商工業者が反発。
03衆院選で、被害者の多い佐賀1区で自民候補が敗れた大きな原因とされる。
岩永派筆頭格の県議だった水田は、商工共済問題の責任を取って政界を引退。
陣営の総括責任者は非改選の参院議員が務めるのが慣例だが、今回、陣内は就任しなかった。
商工共済の被害者感情を考えると、まだ表立った行動は取れない。
03衆院選では両党とも「選挙区は自民、比例区は公明」と訴えた。
だが、公明が比例区で県内得票数の目標とした6万5千票には4千票近く足りなかった。
自民県連は今回、比例区に自前候補を抱える。
県連幹部は「比例区で公明に協力する票はないし、前回も実績を出していないから、今回、選挙区で『お願いします』とは言いにくい」と漏らす。
それでも、陣営関係者からは「負けることはない」という言葉が聞こえる。
そんなムードを危惧して、ある県連幹部は「民主の動きが見えない。油断は禁物だ」と気を引き締めた。
【民主・川崎】
民主新顔の川崎稔は「年金未納政局」の直撃を受け、有権者の失笑を買った民主代表選びを巡る騒動の余韻が残る。
「絶対に勝てるエース」。
川崎擁立を発表する民主県連代表の原口一博衆院議員は、晴れがましかった。
自ら口説き落とした佐賀西高の後輩は日本銀行出身。
後援会長に佐賀銀行元常務を据える陣容を整えた。
無党派層にも保守層にも受け入れられやすい。
その後、民主公認で当選した古賀潤一郎衆院議員の学歴詐称、年金未納問題で菅の代表辞任と、民主陣営は失策続き。
気がつけば逆風になっていた。
逆風が深刻な懸念材料となるのは、民主県連の組織力が弱いからだ。
県内には、原口氏の地盤の佐賀市と党県連幹部2人が市議の鳥栖市の他に、県連支部も川崎の後援会事務所もない。
地方議員もいない。
03衆院選で佐賀3区は惨敗、同2区では候補者すら立てられなかった。
川崎陣営の「頼みの綱」が、県内に組合員3万7千人を擁する連合佐賀だ。
パートや家族を加えれば、2~3倍の組織票になる。
推薦決定後、県内組織に川崎氏を連れ回した連合佐賀幹部によると「反応は上々」。だが、傘下の最大労組・自治労は、比例区で民主を推す中央本部の意向に反し、県内では社民を支援している。
社民県連合は今回、独自候補擁立を見送ったため川崎の推薦願を受けたが、結論は01年参院選と同じ「支持」。
行政改革を断行する木下敏之・佐賀市長の政治姿勢に理解を示す民主と、自治労を背景に反発する社民との違いも微妙に影響した。
参院選での両者の協力態勢も不透明だ。
ある社民県連合幹部は「社民系の地方議員は大勢いるのに、民主が苦手とする郡部での支援要請が全くない。どう動くつもりなのか」といぶかる。
民主県連の園田代表代行は「組織力の差は歴然」と認める一方で「県内の投票行動は大きく変わっている」と見る。
03衆院選で、民主は県内で過去最高の比例票14万を獲得。
自民に約3万票差まで迫った。
川崎は、諌早湾干拓の中長期開門調査断念で自民不信を強める漁民を訪ねるなど、県内を地道に回る。
=中間情勢=
岩永が一歩リードしているが、川崎にも逆転の可能性がある。
岩永は、自民支持層の9割以上を固め、推薦を受けた公明の支持層も手堅くまとめつつある。
地域別では、地盤の県西部と北部で強みを発揮している。
川崎は民主支持層の9割を固め、社民支持層にも食い込む。
佐賀市や鳥栖市など県東部の都市部で支持を広げている。
諌早湾干拓問題を争点と位置づけ、保守地盤の有明海沿岸の郡部でも岩永に迫っている。
=開票結果=
当選 岩永 浩美 197 自・現
当選 川崎 稔 177 民・新
当選 武藤 明美 39 共・新