とある日の午後、熱海の海岸を散歩していると、ひとりの老人と遭遇した。
その人は、オーケストラの指揮者の様に両手を高く掲げ、八分の二拍子よろしく手を振り始めた。
どうやら、その手にはパン屑が秘められているらしく、カモメが飛来して、器用にその手からパン屑を啄ばんでいく。
見ると、順番待ちをしているのか、海岸の欄干には数多くのカモメ達が列をなしている。
近くに寄っても、飛び立つこともなく、黙って老人を見つめている。
カモメをまじかでみた事があまりなかったので、この際だからじっと見てみた。
よく見ると、なかなかの器量だ。