私の思いと技術的覚え書き

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ゼネラリストとスペシャリストに感じる所感

2017-09-28 | コラム
 各種組織体においてゼネラリストとスペシャリストのことが表現されることがある。ここでゼネラリストとスペシャリストの内容を大まかに概観すると次の様に表されるのだろう.

・ゼネラリスト
 物事を広く俯現し、限られた資源と優先順位を活かして組織体の未来を的確に導き得る人物。

・スペシャリスト
 物事の専門分野を担当し、その物事について精通しつつ追及できる人物。

 ところで、民間組織体においては、部なり課なりというグループに細分化され、それぞれの主題に沿って金儲けに邁進する訳であるが、それぞれのグループの長(いわばリーダー)は、スペシャリストの素養を持つと同時に、物事の対局を概観できる、いわばゼネラリストの素養も合わせ持つことが求められるのだろう。

 さて、現在(というか10数年前からその傾向は生じていたが)、世界的に製品そのもの(ハード)から、その市場戦略とか、IT関係では如実にソフトへの投資が移行していることを感じずにはいられない。端的に実例を示せば、開発戦略を立案し基本設計を決めれば、その製品作りは社外委託で作り上げるとかだ。実例企業でも、かつて大型コンピューターの巨人と云われ、PCの世界でもオープンアーキテクチャで一世を風靡した米IBMが、PCハード部門をそっくり中国企業(レノボ)に売却し、自社はソフトウェアに特化する経営戦略に移行したのも久しい。そして、今や我が国の富士通とかNECでも、PCなど民生用機器については、ブランドは残すも、社外メーカーへの委託生産だ。

 ところが、クルマという商品は、一部少量生産車ではPCの様な例もあるのだろうが、協力メーカー多数の部品生産の集約はあるものの、基本設計から最終組み立てまでを、メーカー自身が行い続けている。これは、クルマという商品が、それだけ複雑なものであるし、基本仕様書を協力メーカーに丸投げして、満足行く商品が出来得ないことを示しているのだろう。

 さて、冒頭の本題だが、クルマメーカーの代表者のことだが、経営者としてゼネラリストの素養があることは当然であろう。しかし、ちょっと以前は、元来スペシャリストで、その中からゼネラリストの素養を併せ持つ者が代表者になる事例が多かった様に感じる。しかし、昨今は根っからのゼネラリストたる、利益最優先、リスク回避、社会的倫理観の欠如者が多くなったという感を否めないと感じている。今、国内メーカーで、元来それなりに優秀な技術者だった経営者は居るのだろうか?このことが、燃費重視だけを訴求しつつ、クルマ本来の魅力を引き下げる理由の一つになっている様に思える。

追記
 時代の変化もあるとは思うが、戦後著しく発展した企業にSONYとホンダがある。SONYは社長の井深大は根っからの技術者で、副社長の盛田昭夫は典型的なセールスマンだった。ホンダは社長の宗一郎は根っからの技術者で副社長の藤沢武夫は実質の社長として企画運営から金策までを仕切っていた。藤沢武夫の言葉の中に「万物流転」がある。どんな富も権力も必ず衰え滅びる時が来るということだ。そのことを意識意識したが故、魅力あるクルマ造りのために、ホンダ技研工業の社長は技術者(具体的にはホンダ技術研究所の社長)が引き継いで行くべきだという思いを残しているのだ。(でも今のホンダ車に魅力はない。)

追記2
 このことは以前にも記したかもしれないが、自己体験の不快な記憶として記す。ロクでもない小損害保険会社におけることである。現在は、非弁法との絡みで、保険会社本体と損害調査会社が形ばかり一体化した会社も多いが、分離していた時代のことである。子会社である損害調査会社の代表者は、だいたいが本体を定年退職もしくは真近にして移籍してくる訳である。なまじ本体の損害調査部門にいた者などは、幾らゼネラリストを気取っても損調部門という偏狭なスペシャリストの範疇を抜け出せない者が多い。つまり、損害調査会社の社員ごときは日頃顎で使っていた者であり、特にアジャスターごときは職人気質の極めて視野の狭い者共だという志向に凝り固まっているのだ。全国各地のアジャスター管理者が集まる会議において、少なくとも以下の類似の発言を2度は聞くことになったのだ。曰く「今や見積なんてコンピュータで女性でも誰でもできる時代だ・・・」云々から始まる発言であり、何をこいつ言ってやがるんだと、しらけ切って「あのねー、コンピューターが取替か板金か判断できる訳でもないし、何を言うんだ!大きな勘違いをしている!」と半ば喧嘩腰で反論した覚えがある。こういう、軽率かつ浅はかな経営者を配置された企業は、間違いなく衰退する。

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