「春木屋」 東京都杉並区
実は今から10数年前に春木屋に行った事があるんですよ。
俺が行った高校の修学旅行?は、毎回新宿解散なんですね。
しかもこの日から春休みが始まるので、北へ冒険に行く奴がいたり、
東京に滞在して観光する奴がいたり、そのまま北九州に帰る奴もいたり。
今思えば、自由すぎますね(笑)
俺はどうしたかというと、中央線に乗って春木屋に行きました。
日豊線と異なり引切り無しに来る電車にビビりつつ、荻窪まで電車に揺られました。
何で春木屋に行ったかというと、
元日本ラーメン協会副理事長故竹内伸氏の「春木屋理論」が気になってたからです。
彼の趣味はラーメン食べ歩きで、九州ラーメンを食べまくっていた高校生のある日、
「東京ラーメンとはいかなるものか?」という理由で春木屋に行ったそうです。
「東京のラーメンなんて大した事は無い!」と決め付けてかかったのですが、
その出てきた醤油ラーメンに凄まじいショックを受けたそうです。
そして、自分がどれだけ井の中の蛙であったかを思い知ったそうです。
そこで先代の主人から以下のような言葉を頂いたそうです。
「常に味を研鑽して、ベースとなる味を絶対に変えず、
お客様には気付かれないように少しずつ味を変えていく。
それで初めて『変わらない』と言われるんだ。
そしてそれが『いつも変わらず美味しい』という本当の意味だ」
それが「春木屋理論」です。
結果として春木屋のラーメンは彼の人生を変え、
それからのご活躍は皆様の存じるとおりです。
俺も高校生の時はラーメン食べ歩きを趣味としてましたから、
いつかは春木屋のラーメンを食べたい!と常に考えていたのです。
なので、新宿で解散した直後に母親に「今、新宿におる」と自慢電話をした後に、
すぐさま夢を叶える為に中央線に乗り込みました。
で、春木屋に到着してラーメンを食べたのですが、その時の印象は今も忘れられません。
感想は非常に残念な事に「これ、お湯やないと?」というものでした。
そして「春木屋理論」にさっぱり共感できぬまま、荻窪を去りました。
当時北九州周辺のラーメンが当たり前だった俺には、あまりにも薄かったのです。
そんなラーメンしか知らなかったので、醤油ラーメンが邪道と取れたのでしょうね。
今思えば、春木屋のラーメンを理解する力を、あの頃の俺は全く持ち合わせてなかったのでしょう。
春木屋というか、色んなラーメンを理解する経験と包容力(ラーメン愛)が無かったのでしょう。
前置きが長い。ごめん・・・。
それから約10年。お宿が阿佐ヶ谷だったという事もあり、
再度春木屋を攻める覚悟を決めました。
阿佐ヶ谷から電車に乗って、荻窪で降りる。荻窪駅は少し綺麗になっているような気がする。
春木屋に到着。お店はあまり記憶と異なってはおりません。
店に入る。椅子に座る。荷物は荷物置き場へと店員さんに勧められる。
メニューを見る。高い(笑)
荻窪駅っち、こんなんやったけ???
お店の外見は変わってない。
東京の物価は高い。
朝ごはんという事で、シンプルに中華そばを注文。
時間がかかるかな?という予想に反し、5分程度でラーメンが到着。
厨房を覗くと、店員さんがニコニコしながら丁寧な仕事をしています。
そこから春木屋の逆襲が始まります。
スープを飲んだ直後の感想ですが、全然お湯なんかじゃありません。
醤油辛さの後に、強烈な魚介の味がやってきます。
見た目はシンプルですが、醤油と魚介でとても複雑な味です。
周防大島の「たちばなや」のラーメンに醤油を特攻だような味です。
これが春木屋のラーメン。
アップしたけど、ピンボケ。
そしてスープが熱い。スープの表面には鶏がらからと思われる数mmの甘い油の層があります。
この油がラーメンの味に動物気を混ぜ、三位一体の訳のわからない味を作ります。
麺の茹で具合も完璧です。
このスープととてもマッチしています。
ぐへぇ、完璧です。恐らく、これが醤油ラーメンの王道なのでしょう。
あえてケチをつけるなら、俺にとって醤油が辛かった事くらいです。
舌がバカになりそうなので、スープを飲むのは半分位にしておきました。
10年前の俺がどれだけ世の中をわかっていなかったのか?
今回の春木屋で痛感したし、昔イマイチと思った店でも、再訪する価値はあると思いました。
あー、嫁を連れて行くと喜ぶだろうなぁ。
話はまとめですが、この10年、俺が変わったのか?ラーメンが変わったのか?色々と変化が起きてます。
10年前に春木屋が薄く、北九州のラーメンが濃いと感じたけど、今は両方丁度良いと思っています。
多分ですが、この10年で俺が食べる物の味が濃くなったんでしょうね。
加えてラーメンなんか凄く濃いのがある意味主流になりつつあるし、
昔はこってり=油が多いだったのが、こってり=味が濃い&脂まみれになってますよね。
関東の方では、濃い味に負けないように、太麺が主流になっているようです。
これから10年、そして20年。ラーメンはどう変化していくのでしょうか?
楽しみですね。