和力のグラウドファンディング

2015年03月27日 | Weblog
 わたしは昨年「後期高齢者」の仲間入りをして今年が二年目になる。
わたしの世代のみなが、「そうである」と断定できないが、わたしだけに限って言えば「横文字」に弱く「漢字」の方に親しみをおぼえる側にいる。

 わたしが高校に入って通学に利用したのは、そのころ東京都内を縦横無尽に走っていた路面電車「都電」であった。
一時間ほどかかる電車での行き帰りは、もっぱら本を読んで過ごしていた。
どんないきさつで手に取ったか忘れたが、「新唐詩撰」(岩波新書)で李白や杜甫の詩などに触れ、唐詩にのめりこんでいった。
唐詩そのものをすらすら読了できるわけではない。
「新唐詩撰」著者の吉川幸次郎(当時京大教授)の傍証に助けられて読みとおせたのだ。

 江碧鳥愈白    江(こう)は碧にして鳥は愈(いよいよ)白く
 山青花欲然    山は青くして花は然(もえ)んと欲す
 今春看又過    今(こ)の春も看(ま)のあたりに又過ぐ
 何日是帰年    何の日か是れ帰る年ぞ

「新唐詩撰」冒頭に杜甫の五言絶句が収められ、右が吉川先生の訓読みである。
漢字の字面だけでも、色彩の鮮やかさに先ず圧倒された。
「碧」、「白」、「青」などが情景と共にありありとイメージできる。
視覚が「碧」を捉えたら、紺碧の川のようすがすぐさま思い浮かぶのである。
横文字だとそうはいかない。「Green」と出てきたら、わたしの語学力ではすぐさま読めないで、「う、うん、グリーンね」とカタカナ転換→「緑」と認識する。「碧」までは思い至らない。
「白」も「青」も同じように横文字をカタカナ転換、更に漢字転換、それでもってイメージが浮かぶ、漢字で認識するより二手間、三手間かかるのである。
だから今とり組み中の「和力のグラウドファンディング」も、なかなか覚えられず「グランド…えっとなんだったっけ」とうろたえて過ごすありさまであったのだ。

「伝統芸能を今に伝える『和力』を、映像を通じて多くの人に知ってほしい」と、加藤木雅義がうごき始めたのは昨年の春であった。
加藤木雅義は、和力の舞台があれば遠近を問わず、重い三脚とビデオカメラを背負って行き収録、それを出演者へ即座に送ってくれる「和力映像記録担当」なのだ。
自分の撮影だけに飽きたらず「練馬公演(2014.12.22)の舞台撮影をプロに頼みたい」と云いだし「だったら飯田基晴監督にお願いしてみたら…」と、娘の加藤木桜子さんにヒントを与えられた。
飯田基晴監督は、新宿の路上生活者に密着した「あしがらさん」を2002年に発表、当時大学院で福祉を学んでいた桜子さんが、学友と実行委員会を結成して「あしがらさん」上映会を催し、上映会には監督にもお出でいただいたとのことだった。
「あしがらさん」以降も「犬と猫と人間と」、最新作は「逃げ遅れる人々―東日本大震災と障害者」(2012年)など、ドキュメンタリーを中心とした作品をつぎつぎに発表されている方なのだ。
お忙しいスケジュールの中で、幸いにも「和力練馬公演」の撮影・編集を引き受けてくださった。

「飯田基晴監督に撮ってもらうのだったら、練馬公演だけではもったいないよ」と桜子さんが雅義に提案、「それもそうだ」と雅義。
「生活の中で伝統芸能をどのように磨いているのか」、加藤木朗が住まう信州・阿智村への訪問に、監督とカメラマンがはいったのが撮影の皮切りになる。
6月に、新潟県「まきおやこ劇場」の20周年記念作品「海どうじ 浜どうじ」(加藤木朗作・演出)再演の舞台けいこから本番までを撮影。
10月には「中学校公演」、12月「練馬公演」、1月「蔵のギャラリー・結花(ゆい)ライブ」、2月「松戸公演」など、形態の違う和力公演に監督・カメラマン・音声などのスタッフがはいった。

 当初は「練馬公演」だけと企画していたのに、次から次へと構想がふくらみ予算が大きくなっていく。個人で購うにはとてもたいへんな金額になってしまった。
「グラウドファンディングを活用したらどうか」と提案があり、桜子さんが「グラウドファンディングとはなにか」から研究を始めて、わたしたちにその実像や取り組み例などを示してくれたのは2014年11月24日からであった。
以後2月7日にスタートするまでの二ヶ月余、桜子さんが「応募金額帯」、「プレゼント内容」等を検討、皆の合意を得ながら実行母体として「Motion Gallery」を選んでいった。
事務局と打ち合わせをかさね、実務を何回もやり直しながら、2月7日「和力松戸公演」当日から開始された。

 プレゼンターとして、わたしが松戸公演開幕前に「グラウドファンディング」をアピールすることになった。
あいさつ文の要旨は桜子さんがまとめてくれていたが、わたしはどうしても「グラウドファンディング」が覚えきれず、発音にも自信がないのでこの言葉は使わずに「和力を知っていただく映像プロジェクトを本日より発足させました」と云うことにした。
あとから調べたら、Crowdは「群衆」、Fundingは「資金調達」であり、「多くの方々からの資金調達」との意味だと分かった。
耳慣れない資金調達の方法は、日本では2008年から始まったようである。

 多くの方々からの資金調達が始まってほぼ2ヶ月、目標金額200万円に対して140万円弱(達成率69%)の応募があり感謝する日々を送っている。
締め切りの6月6日までほぼ2ヶ月ある。和力を多くの方々に知っていただくこの運動の中で、資金も目標近く集まればよいなぁと願っているのだ。
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