チケットと整理券
和力・天籠公演の2日目のロビーで、
「暖房が利いているし舞台照明の熱もあるから、客席はとてもあたたかい。舞台がはじまれば、さらに暑くなって気分がわるくなるかも知れない」とお客さんが言っている。
「どうしようか」と会場係の女性がK子さんに相談にきた。
そう言えば19時に開演した昨日(26日)の公演で、わたしは階段状になっている一番上の座席で観ていた。
舞台が進行して汗ばんできたので上着を脱いだ。そしてハンカチを取り出して額をなんかいもぬぐった事を思い出す。
今回の和力・天籠公演は2日間連続でやられる。2日目の27日(土)のチケットは早々と完売し、「札止め」の指示がはいった。
「でも1日目はどんな具合だろう」との心配はあった。開演を待ちながら場内を見渡すと、余席はいくつかあるがほぼ満席である。
「よかった」と実行委員の方々の苦労を偲ぶ。
わたしも連続した日程での公演を首都圏で何回か実施したが、どうしてもチケットの売れ行きは均等にはならない。
ましてや今回は天籠は6回目にして初めての2日間公演である。片方が満席になっても、一方が閑散としないかとの心配が少しあった。
初日の昼過ぎ名古屋駅に到着しホームに降り立つと風が冷たく「天気予報どおりだ」と待合室に駆け込んだ。
12月は暖かい日がつづいていたのに、「週末からつよい寒気におおわれるでしょう」との予報が当たったのだ。
公演当日はもろに寒気が襲ってくる予報だった。
できれば穏やかな日がつづいてくれないものか、そんな願いをもつけれど、情け容赦なく予報どおりに外気は冷えこんできた。
「お客さんの出足に寒さがひびかなければよいのだが」と杞憂したけれども、その心配はなかった。
開場30分前の午後6時にはお客さんがすでに列をつくっていた。
「寒い外で並んでもらうのはたいへんだから」と、「整理券」を渡してお客さんをロビーにお迎えする。ホールはリハーサル中なので入れないが、ロビーでくつろいでいただこうという段取りである。
わたしも列に並んで「27番」の札をもらう。
受付付近にて
ロビーでは実行委員のみなさんが「和力」のTシャツを着て、熟年の方々と共に若ものが「受付」、「会場」、「販売」の位置についている。ロビーに花が飾ってあるわけではないが明るく華やいでいる。
あとわずかに迫った「往く年」の慌ただしい賑やかさと、清冽で厳粛な「来る年」に期待する空気が織りなす、あたたかさにロビーはあふれる。
売店でのみなさん
「天籠・第六弾」が始まる。
舞台の進行にしたがって「おや」と思うことがでてきた。道具の出し入れをする「黒子」さんのメンバーが少し変わっているようだ。
常連のH男さんやK子さんが抜けて、新しいメンバーが加わっているようにみえる。
そういえばK子さんは「当日精算」の所にいて、全体の目配りをしている。
「朗さんの太鼓教室に若いメンバーが加入して、いろいろな場面で活躍してくれている」と、H男さんが云っていた。
わたしも実感としてその事が分かる。
和力事務所もチケットの連絡先の一つとしてチラシに電話番号が告知されていた。公演の問い合わせの電話は男女ともに青年が多かった。
和力が若い世代に認知されていることを感じていたのだ。
ロビーでも舞台裏でも若ものが支えてくれる割合が多く、来てくれるお客さんも若ものの姿が多い。
だから熟練の方は、全体の目配りできる配置にあって、すぐさま対応できる余裕がもてるのだろう。
「会場内が暖房と照明器具の熱で暑くなりそうだ」…
「分かりました。会場の人と打ち合わせてくる」とK子さんは、足早に去っていった。
暖房を止めて始まった舞台は、満席の人いきれもあるだろうが、程よい温かさの中で終わった。
劇場から外に出ると師走の風はやはり冷たく吹きすさんでいた。