原発事故で置き去り いすみ移住の犬描く
「心に響く」と話題に 遠藤さんが短編小説執筆
2013年06月10日 千葉日報ちばとび
著書「ぼくの名はハル」を手にする遠藤さん
作品のモデルになった犬「ハル」と飼い主のたべさん
福島第1原発の事故後、半径5キロ圏内に置き去りにされ1カ月後に保護された犬が、いすみ市内で飼われている。
この実話を基に、犬の視点でつらい目に遭いながらも元気を取り戻していく姿を追った短編小説が出来上がり、読んだ人から「心に響く」と反響が寄せられている。
同市役所近くでパン工房「麦香村」を営む遠藤直美さん(63)が執筆した。
作品名は「ぼくの名はハル」(玉木直美著)。
モデルになったのは、地元の造形作家、たべ・けんぞう=本名・菊池健三=さん(74)がいつも同店に連れて来る推定年齢4~5歳のメス犬「ハル」だ。
たべさんによると、ハルを保護したのが知り合いの獣医で、「誰か飼ってくれる人はいないか」と連絡を受け、「それなら」と引き取った。
ハルには放射能検査や除染が施された。
「当時はがりがりに痩せていた。山田商店の前で保護された犬だから『山田さん』と動物愛護団体の人たちからは呼ばれていた。最初から人懐っこい犬だった」と振り返る。
遠藤さんは、身近な犬が放射能汚染で無人となった被災地を放浪した過酷な経験の持ち主と知り、「どうしても書きたいと思った」と奮起。
若いころ、小説やエッセーなどをまとめた著書を出した経験を生かし、昨年、書き上げた。
問い合わせは麦香村、電話0470(64)1108。