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ペット大国ロシアで秋田犬の飼い主がどんどん増えている

2021-04-27 05:50:05 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

「きっかけはプーチン大統領」
 ペット大国ロシアで秋田犬の飼い主がどんどん増えている

2021年4月21日(水) PRESIDENT Online

ロシアのプーチン大統領が飼う秋田犬は、人気犬種ランキングでトップ10入りするほどロシアでの人気が高まっている。
5月に公開される日露合作映画『ハチとパルマの物語』にも登場する秋田犬は、なぜロシア人の心をつかむのか。
拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授が解説する――。


2016年12月、秋田犬の「ゆめ」を連れて会見に現れたプーチン大統領 - 写真=クレムリン公式サイトより

■もはや日本以上の人気犬種に
秋田犬はプーチン大統領や女子フィギュアスケート金メダリストのアリーナ・ザギトワさんの愛犬として知られるが、ロシアでは飼育数が増え、人気が定着してきたようだ。
今年5月28日にロシア版ハチ公をテーマにした日露合作映画『ハチとパルマの物語』(アレクサンドル・ドモガロフ監督)が公開される。
日露間の政治・経済関係は低調ながら、ロシアでは、秋田犬など日本のソフトブランド人気が高い。
ロシア人の7割以上の家庭は何らかのペットを飼っているといわれ、世界有数のペット大国だ。
個人主義が強く、他人を信頼せず、ペットに逃避するところがあるとされる。

ロシア愛犬家連盟が昨年、子犬の誕生登録数を基に発表した人気犬種ランキングでは、1位はジャーマン・スピッツ、2位はチワワなど小型洋犬が多く、大型犬でトップ10入りしているのは4位のシェパードと秋田犬程度だ。
愛犬家連盟は「日本原産の秋田犬が今回初めてトップ10に入り、人気が高まってきた。その理由は、SNSやインスタグラムで写真が大量に拡散されたことが大きい。柴犬も13位と上昇している」とコメントした。
ちなみに、犬籍登録などを行う団体「ジャパン・ケネルクラブ」が発表した日本国内の昨年の登録犬種ランキングは、①プードル、②チワワ、③ダックスフンドと小型洋犬が大半で、秋田犬は41位だった。
日本では住宅事情から大型犬は敬遠され、飼育者の高齢化から、秋田犬の頭数は年々減少している。
ロシアでは、柔道や空手など日本発祥の格闘技も人気で、柔道の愛好家は推定80万人と、日本(推定25万人)より多い。
柔道や空手と同様、秋田犬のグローバル化が進む。

■ロシアの全愛犬家が感動した「ハチ」の映画
ロシアで無名だった秋田犬が脚光を浴びたのは、2009年に公開されたリチャード・ギア主演のハリウッド映画『HACHI 約束の犬』が契機だったようだ。
米東海岸の町で、大学教授が迷子の秋田犬を保護。
愛情を受けて育ったハチは毎朝教授を駅に見送り、夕方迎えに行くのが習慣になり、突然の教授の死後も駅で帰りを待ち続けるというストーリーで、1987年の松竹映画『ハチ公物語』のリメイクだった。
ロシアではネットで無料視聴ができ、すべての愛犬家がこの映画を観たといわれる。
日本人はペットにかわいさを求めるが、ロシア人を含むヨーロッパ人は犬に哲学や忠誠心を求めるといわれる。
この映画で秋田犬の忠誠心がロシアの愛犬家の琴線に触れた。
忠誠心は秋田犬の代名詞なのだ。
秋田犬を飼うモスクワのガリーナ・セリャコワさんは愛犬家のサイト、「animal.ru」で、「秋田犬はコンパニオン犬、または番犬に最もふさわしい。忠誠心があり、寒さにも強い。性格はおとなしく、スタイルは均整がとれて美しい。賢くて、独自に決定を下すこともできる」と書き、秋田犬をロシアに広めた功労者として、秋田犬保存会モスクワ支部長のレオニード・トレチャコフ氏の名を挙げた。

■日本人をしのぐ博識ぶり
秋田犬保存会とは、秋田犬を世界の犬種として発展させる目的で、戦前の1927年、秋田県大館市に発足した。
保存会は全国に支部を持ち、海外支部も20カ所に上る。
現在の会長は遠藤敬衆院議員(日本維新の会)だ。
ロシア支部は2011年にモスクワに設置され、会員は約50人。
毎年一度、モスクワ郊外で秋田犬らしさを競うコンテストや親睦会を開いている。
ホテルビジネスで成功したトレチャコフ氏は日本の保存会本部展にもよく参加しており、筆者は3年前に東京でインタビューした。
「秋田犬を飼い始めたのは2007年ごろで、書物やネットを通じて、秋田犬が並外れた忠誠心や知性を持つことを知った。秋田犬はもともとマタギ犬で、雪国の生まれなのでロシアの寒さにも強い。秋田犬系統の犬はロシアには存在しない。ブリーダーとして繁殖させており、ロシアの秋田犬を発展させていきたい。秋田犬保存会と秋田県は、聖地として秋田犬のオリジナルの維持・繁栄に努めてもらいたい」
同氏は日本の秋田犬専門家をしのぐ博識であり、秋田犬の特徴や生態をデータベース化している。
「日本の街を歩いて秋田犬に出会うことはないが、モスクワではしばしば遭遇するようになった」という。
モスクワの動物市場では、秋田犬の子犬は1頭平均15万円で取引され、約10万円が相場の日本よりも高価らしい。

■「ゆめはいつも私を守ってくれる」
ロシアで秋田犬の知名度を飛躍的に高めたのは、プーチン大統領とザギトワさんだった。
プーチン大統領は2012年、佐竹敬久秋田県知事から東日本大震災での被災地支援のお礼として秋田犬の子犬を寄贈され、「ゆめ」と日本語で命名。
大統領は、猫好きの佐竹知事にシベリア猫を贈った。
秋田犬はその後、「大統領の犬」と呼ばれ、エリート層の間で飼育する人が増えた。
近年は、コジェミャコ沿海地方知事ら極東・シベリアの幹部の間で人気らしい。
秋田犬の写真を見て飼いたがったザギトワさんは、2018年の平昌五輪で優勝した後、秋田犬保存会の遠藤会長から子犬を寄贈され、「マサル」と命名した。
ザギトワさんはマサルとのツーショットをインスタグラムで盛んに発信し、人気を呼んだ。



平昌五輪後、プーチン大統領はロシア人メダリストをクレムリンに招いて勲章を授与したが、式典終了後、大統領とザギトワさんが2人で話し込むシーンがあった。
ロシアの一部メディアによれば、ザギトワさんは大統領に秋田犬の飼い方を尋ねていたという。
プーチン大統領が飼っているゆめはここ5年ほどメディアの前に姿を見せていない。
それでも「秋田犬は、外見はかわいくても真剣な犬だ。常に尊敬の念を持って当たらねばならない」「ゆめはいつも私を守ってくれる。番犬のようだ」と述べたことがあり、秋田犬に一家言を持つ。
大統領とフィギュアスケートのスーパースターが、秋田犬談義をする時代になったのである。

■「Akita」として国際化するか
秋田犬はロシアだけでなく、世界的に人気を呼び、欧州や中南米、中国や台湾のほか、近年は中東諸国の富裕層も好んで飼い始めた。
昨年末のロイター電によると、新型コロナ禍による巣ごもり需要で空前のペットブームが世界的に起きており、各国で犬や猫の価格が高騰している。
社会的ストレスが犬や猫への愛着を高めており、忠誠心が売りの秋田犬は一段と人気を呼びそうだ。
海外の秋田犬人気はブーメラン効果を持ち、忠犬ハチ公の故郷、秋田県大館市はJR大館駅前に観光交流施設「秋田犬の里」を2019年春にオープンした。
秋田犬の歴史や生態を紹介する小型ミュージアムで、血統書付きの秋田犬に会うことができる。
新型コロナ禍までの8カ月で30万人の来場者を記録し、秋田県北部の新しい観光拠点となった。
この「秋田犬の里」がロケ地となった日露合作映画『ハチとパルマの物語』(アレクサンドル・ドモガロフ監督)が5月に日本で公開される。
作品は、ソ連時代の実話を基にしており、モスクワの空港に取り残されたシェパード犬のパルマと、孤独な少年の交流を描く。
秋田犬も登場し、秋田県出身でタレントの壇蜜さんらが出演している。
ロシアでは3月に上映が始まり、週末の観客動員数はトップだった。
こうして、秋田犬人気はロシアで広がり、世界に拡散しつつある。
柔道が「Judo」として国際化したように、秋田犬も「Akita」として国際化し、日本の手を離れるかもしれない。

名越 健郎(なごし・けんろう)
拓殖大学海外事情研究所教授 1953年、岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒。時事通信社に入社。バンコク、モスクワ、ワシントン各支局、外信部長、仙台支社長などを経て退社。2012年から拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『北方領土はなぜ還ってこないのか』、『北方領土の謎』(以上、海竜社)、『独裁者プーチン』(文春新書)などがある。

【JR大館駅前にオープンした観光交流施設「秋田犬の里」】









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