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虐待・劣悪な飼育環境・高額転売…コツメカワウソの「悲しすぎる現実」

2023-01-21 06:04:40 | 動物実験・動物虐待

虐待・劣悪な飼育環境・高額転売…
可愛さ重視で「おもちゃ」にされる、コツメカワウソの「悲しすぎる現実」

2023年1月7日(土)

人気のコツメカワウソ。
その愛くるしさで「可愛い」からと安易に購入され、飼い主から虐待されたり、劣悪な飼育環境に放り込まれるケースは少なくない。
前半記事『ポテトチップスの筒の中に入れて密輸…1匹300万円で売買される人気動物「コツメカワウソ」の深すぎる闇』から続けて紹介する。


Photo by iStock

◆本来は譲渡や売買も禁止されている
「キュッ、キュッ、キュ~」
その甲高い鳴き声はもちろん、つぶらな瞳と水かきのついた小さな手を器用に動かす姿が愛くるしい「コツメカワウソ」。
その姿を独り占めしたい、とペットとして購入を希望する人は後を絶たない。
だが、その生息状況はあまりにも悲惨だ。
環境破壊により住む場所を奪われ、毛皮やペット目的のために乱獲される。
生息数はこの30年で30%も減少し、今や絶滅の危機に瀕している。
そのため、2019年11月より「種の保存法」の「国際希少野生動物」に追加された。
現在では個体の譲渡、売買については原則禁止されており、日本国内でもペットとして譲渡、販売することは基本的にはできない。
加えて「種の保存法」では、無償の譲渡も禁止されているため、コツメカワウソに関する取引全般は基本的には禁止されているのだ。
ただ、1点だけ抜け道がある。
登録要件を満たし、登録をすることだ。
登録できるのは、「登録された個体同士で繁殖させた個体」「規制適用日前に合法的に国内で取得された個体」「関税の許可を受けて輸入された個体」のいずれかを満たす場合。登録し、マイクロチップ等を挿入すれば、合法的にコツメカワウソを売買、譲渡できるようになる。
「個人で飼育する場合には登録票はなくてもいいのですが、万が一飼えなくなって第三者に譲渡する場合には登録票が必要になります。個体ごとに合法的に入手されたことを証明し、登録票を申請しなければなりません。  ですが、現実的には手続きや審査は非常に曖昧。出身地や入手経路が不明な場合でも『規制前から飼っている』と言えば密輸されたコツメカワウソでも簡単に登録票が交付されます。そこまで細かく調べられていないのが現状です」
そう指摘するのは、動物販売業を営む横森博義さん(仮名)。
密輸されて日本に来たコツメカワウソたちは当然だが、登録票がない。
だが、ブローカーたちは実に巧妙に、国内で売買しているのだ。
「足がつかないように希少動物を好む愛好家に直接、持ち掛けたり、そのネットワークを使って欲しいという人に売りさばくのです。私のもとにも『コツメカワウソ、あるよ』と言ってきた同業者がいましたが、果たしてどのルートから手に入れたものなのか……。SNSやネットなどでやりとりをする人もいますが、それだとすぐに摘発されます」(横森さん)
登録されていないコツメカワウソを第三者に譲渡した場合、個人では5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金が科せられる。
さまざまなルートを駆使して、非合法で手に入れたとしてもコツメカワウソは野生動物。
ペットとして飼うのは容易ではない。


原則としてコツメカワウソの取引は全般で禁止されている。写真はイメージ(Photo by iStock)

◆安易な飼育で虐待も
2022年9月、コツメカワウソを虐待したとして東京・渋谷区の38歳(当時)の女が動物愛護法違反の疑いで、警視庁に書類送検された。
女は飼育していたペットのコツメカワウソに対し、ガムテープで何重にも巻いた紙の棒で叩く、といった虐待を繰り返していたという。
「女は自宅マンションで2匹のコツメカワウソを飼育していました。しかし、メスがなつかず餌をやるときに噛まれるため、しつけのために叩いた、と供述していました」(全国紙社会部記者)
コツメカワウソほか、カワウソ類はそのかわいらしさとは裏腹に気性が荒い。
おまけにあごの力はザリガニをかみ砕くほどに強い。
そのため、ネコやイヌなど飼いならされた愛玩動物とは異なり、飼育は難しいのだ。
「飼育環境も本来、コツメカワウソが好む環境に適さない飼い方をしている人が多いんです。いわゆる『フェレット的な飼育』で、狭いケージに入れっぱなし、泳ぐための水場も用意せず、フェレットのように飼育しています。ふわふわの毛布やソファなどもコツメカワウソには向いていない環境。イヌやネコを飼うのとは違います」(前出の横森さん)
では、どのような環境が必要なのだろうか。
まず広さ。
コツメカワウソの運動量は多く、自由に遊びまわれて動けるだけのスペースが必要だ。
最低でも畳2畳分ほどの確保は必須。
そして環境。泳ぐための水場、湿気を好むため地面が湿ったエリア。
とはいえ、常に水に浸かっているわけではないため、完全に乾いた地面も必要だ。
それら3種類の場所を同じスペース内に用意する必要がある。
もちろん、熱帯からやってきたコツメカワウソのため、それに準じた室温もキープしなければならない。
「飼育環境が整っていなければ、コツメカワウソもストレスになります。それに体調面でも注意が必要な動物なんです。コツメカワウソは、同じカワウソ類の中でもとりわけ尿管に結石ができやすい傾向にある。寒さにも弱いので幼獣を冬場、温度の低い場所に置いたりすればたちまち死んでしまう。もし、なんらかの事情で体調を崩したとしても、診察してくれる獣医はあまりいないし、薬もないんです」(同)
環境の整備、かかりつけ医の確保は、コツメカワウソに限らず動物の飼い主として、あらかじめそろえておくことが最低限度の務めのはず。
だが、そのどれも整えずに安易に飼い始める人々も少なくない、と横森さんは憤る
「9月に逮捕された女のように、慣れないからと、しつけと称して虐待をする人もいます。愛玩動物と違って野生動物ですから人に慣れていないのは当然です。それに体調管理や環境整備を怠ったため、飼い始めてから1年も経たずに死なせてしまった人もいます。コツメカワウソの飼育を簡単に考えすぎなんです」
実は高額で購入したものの、飼い難くてすぐに飼えなくなってしまい、持て余すケースは決して珍しいことではないという。
だが、その一方で購入希望者は多く、高額で取引されるため、遺棄されることはまずない。
まるでおもちゃのレアアイテムのように、高額転売され、次々に新しい飼い主の元へと渡っていくことになるのだ――。
「ちゃんとした新しい飼い主に巡り合い、そこで大事に終生飼育してもらえればいいのですが……」
そう話す横森さんは顔はいつになく険しかった。

◆エキゾチックアニマルブームの末に……

写真はイメージ(Photo by iStock)

横森さんは今後、ペットブームはさらに加速していくと予想している。
近年の傾向として、ネコやイヌだけではなく、カワウソやサル、爬虫類などといった「エキゾチックアニマル」と区分される野生動物や希少動物に注目が集まる。
「あまり人が飼っていない珍しい生物を好む層も増えています。珍しい生き物を求めて金に糸目を付けない人も少なくないんです」
特にYouTubeやSNSなどでそれらの生物を扱った動画が人気。
「映え」目的だったり、表面的なかわいさばかりに目がいき、飼育方法や環境は二の次、という飼い主も増えているという。
前述のコツメカワウソ同様、飼いきれなくなり、次々に飼い主を変えるハメになったり、命を落とすケースもある。
さらに、このコロナ禍も落ち着いて、海外との行き来がしやすくなれば当然、密輸の数も増えるだろう。
「取り締まりが緩く、罰則の甘い日本は希少動物密輸の温床になっていく可能性が非常に高いと考えています。ある政治関係者は『登録票を導入したことで一定の効果がある』と言っていますが、現場はそんなことは誰も思っていない。  日本に入ってきているものなら登録票が交付されてしまうので、密輸入であろうとなかろうと、実はあまり重要視されていない。政治と現場で食い違いが多いんです」
横森さんが危惧しているのはそれだけではない。
「未知の感染症、寄生虫を保有している野生動物がいるかもしれないことです。正規ルートで輸入される動物は事前にすべて検査され、問題があれば日本に入ってくることはありません。ですが、密輸では当然すべてスルー。今後、さまざまな野生動物が日本には入ってくるでしょう」
コツメカワウソをはじめ、魅力的な野生動物はたくさんいる。
だが、その動物たちがどう生きたら幸せなのか。
野生動物に限らず、ネコやイヌも同様だ。
生き物を飼う以上、飼い主は肝に銘じなければならない。
動物はSNS映えを演出し、承認欲求を満たしてくれるアイテムでも、寂しさを紛らわせてくれる「おもちゃ」でもない。人間と同じように命があり、生きている。

週刊現代(講談社)

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