和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

器量(うつわ)と、ユーモア。

2022-02-18 | 本棚並べ
鶴見俊輔の「長谷川町子さん追悼」のなかに、
『器量』という言葉があった。

うん。とんと使わない言葉なので、気になり、
【器量(きりょう)】を角川必携国語辞典にさがすと

『ものごとをやりとげる能力。その地位にふさわしい才能』

とある。他の辞書にもあたればいいのでしょうが、めんどくさい。
などと思っていたら、そういえば、谷沢永一の本に、
『人の器量(うつわ)を考える』(PHP・1998年)という
質問に答えてゆく、分かりやすい本がありました。
この本に【器量】が探せるかもしれないなあ、とめくってみる。

パラパラと線をひいた箇所をみると、
こんな箇所があります。

「日本の政治家全部を通じて欠けているのは、ユーモアなんです。
ユーモアが人品骨柄をつくり、あらゆる論理を一発で吹っ飛ばすのね。
そのユーモアがないというのが日本の政界の致命的な欠陥です。」(p144)

うん。この本から、もう一か所引用。

「人を語ることによって、世間を語り、自分を語る、
 というのが人物論の醍醐味です。・・・・・
 明治はそれはもう人物論ばかりの時代です。・・・

 私は、行く末を案じて夜も眠れないふうの悲憤慷慨や
 悲観論を自分にかたく禁じています。
 人物論でも世間論でも同じですが、
 悲観論ほどやさしいものはないからです。」(p156)

もどって、サザエさんの磯野波平や、カツオのモデルは誰か?
というテーマは面白そうです。
いつも兄弟ゲンカをしているサザエとカツオ。
モデルは長谷川町子と、まり子さんのどっち。
わからないけど「サザエさんの東京物語」に、
そんな箇所をさがしてみます。

洋子さんの家庭が語られた箇所でした。

「夫の鹿島隆が35歳で亡くなったとき、
 娘達は6歳と4歳だった。・・・・・

 町子姉は『サザエさん うちあけ話』の中で
 二人の姪をいかに教育したかについて言及し
 【父親が三人いるようなものだ】と書いている。
 ・・・・母も姉達も親代わりになって、よく可愛がってくれた。

しかし個性の強い信念の人達なので、
可愛がり方も三人三様で一貫性はなかった。

町子姉は自分自身が腕白少女だったので、楽しかった体験を
姪達にも味合せてやりたいと思ったらしい。
お隣との境にあった太い樫の木に、登れ、登れとけしかけて
天辺(てっぺん)まで登らせ、
『いろいろ見えるでしょう?屋根の上のほうが、もっと見えるわよ』
と叫ぶ。・・・・・

まり子姉は心配性で、子供達の姿が見えないと、
お手伝いさんを動員して探し回り、どこにもいないとなると、
『誘拐されたんじゃないの』と青くなる。

そこへ町子姉がやってきて、
『屋根の上にいるわよ。少しは冒険させないと、ひ弱に育つわ』
と言い、まり子姉は、
『危ないじゃないの、落ちたらどうするのよ。下はコンクリートよ。
 打ちどころが悪かったら命にかかわるわ』
『過保護なのよ、お姉様は!』
と教育のあり方をめぐって激論となり、
火花の散るようなケンカに発展する。・・・」(p101~102)

そういえば、『サザエさん うちあけ話』には
妹洋子が、高名な心理学者にたずねる場面があります。
心理学者が洋子さんの質問に答えています。

「それはちがいます。お宅はお母さまが三人ではなく、
 お父さまが三人なのです。」

「さすがに名言です。妹の洋子もコドモが中学上級のころから、
 姉妹社の片ぼうかついで、はたらいていますので、
 三人とも、思考、発想、行動すべてが
 父おや的なのに、気づきました。」(p116)

心配性といえば、町子さんの感傷に触れた箇所が
『サザエさん うちあけ話』にありました。
箱根の別荘が、燃え落ちたあとでした。

『あのカヤぶきの家、本ダナ、あの絵・・』
失ったものを惜しんで語りあかそうと、町子はまり子の
部屋のドアを叩きます。

『別荘なんかいらないョ、それよりケンコウ第一!』
『スイミン スイミン』とまり子。
そして、ドアをバタンと閉めてしまいます。

まり子は、翌朝9時すぎおきてきて
『ア~。よーくねた!!』
落ちくぼんだ眼をして立っている町子の
後ろにはコメントがあります。

「これで、私のハコネの感傷も 姉の大アクビの中に、
 きれいさっぱり のみこまれてしまいました。」(p75)


はい。「サザエさん うちあけ話』と「サザエさんの東京物語」
を2冊ならべて本棚へもどします。
さあ次は、「いじわるばあさん」が古本で届くのを待つばかり。






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2 コメント

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器量よし (きさら)
2022-02-19 08:43:19
今では
あまり言わないかもしれませんが~
女性の場合は 器量よし と言えば
美人の意味でしたよね。
そうそう。 (和田浦海岸)
2022-02-19 10:11:34
こんにちは。きさらさん。

コメントありがとうございます。
そう。器量と辞書をひいたとき、
その意味に①と②がありました。

①ものごとをやりとげる能力。
 その地位にふさわしい才能。
例:『指導者としての器量に欠ける』

②女性の顔だち。『器量よしの姉妹』
類:見目(みめ)・容色・容貌

さて。「いじわるばあさん」でなくとも、
私が、その時すかさず思い浮かんだのは、

岸田文雄さんで。この方は①じゃなく②
だろうなあと思い浮かべた顔なのでした。

けれども笑えないのは、私も岸田タイプ
だということです。全く困ったものです。

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