和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

夏河を越すうれしさよ。

2020-04-26 | 詩歌
産経新聞は1カ月3034円。昨日集金に来られました。
古本・中村草田男全集(全19巻)はそのうち3冊欠の
16巻を、送料共で3030円で購入したばかり。

新聞を、見出しと一面コラムとテレビ欄を見るように、
この全集も、各冊の巻末解説と月報とを読めればいい。
私はそれで満腹。はい満足。

さてっと、たのしい話。
いまの報道では、楽しみを語ると、不謹慎と写る。
では当ブログは、あえて楽しみを、取りあげます。

中村草田男著「蕪村集」は、蕪村の句の解説。
そこから引用。

 夏河を越すうれしさよ手に草履

この句を、草田男はどう解説しているのか。
その途中から引用してゆきます。

「蕪村は宝暦4年ごろ丹波に遊んだが、そのまま同7年まで
いわゆる与謝の地に滞留してしまった。この地の明媚な風光が
彼をいかに魅了したかは、帰洛後谷口姓を与謝姓に改めた
ことからも知られる。この3年間、彼は美景の中に悠遊しつつ、主に
画技の研鑽に努めたのであるが、一方俳諧の同好の士をも多く得て、
それとの交遊をも楽しんだのである。

この句には
【白道上人のかりのやどりたまひける草屋を訪ひはべりて
 日くるるまでものがたりして・・・云々】の言葉があって、その続きに、
【前に細川のありて潺湲(せんかん)と流れければ】という前書を付けて
誌されているものである。つまり、白道上人の草庵へ訪い寄った時の
実経験がそのまま句作の動機となっているわけである。

 ・・・・・・・・

この句は写生句らしい直接さを比較的のがすことが
なくてすんだまれな例として珍重する足る。
しかし、もしこの句に前書がなかったならば、
我々は主人公として一人の少年の姿のみを想像するに相違ない。

私はしばしば蕪村における『青春』を問題にしてきたが・・・・・
むしろ我々が終生『思い出』の中に老いざる姿として保持し続ける
『少年時代』という意味に近い性質のものである。・・・・」

ちなみに、前書きの中の、
潺湲(せんかん)とは、水が流れる音のこと。

うん。私の手元には中村草田男全集がありました。
中村草田男全集の第7巻は、「芭蕉・蕪村」。
その巻末解説・井本農一氏。そこから引用。

「・・『蕪村集』は、元来昭和18年10月5日に・・・
小学館から刊行された書・・・中村草田男は当時43歳で、
旧制成蹊高等学校の教授であった・・・・
中村草田男としても国文学関係の著者の一冊ぐらいは持ちたい
ところであったかと推察される。なおまた俳壇においては、
有名な新興俳句に対する当局の弾圧が昭和15年2月以来顕在化し、
草田男に対しても反伝統的であるという非難や警告が陰に陽に
発せられ、自由な作家的活動が制約された状況でもあった。・・・・・

草田男は四百字詰原稿用紙600枚に近いこの書の原稿執筆に、
かなりの精魂を傾けたと察せられる。
この種の原稿を書き慣れない草田男が、
戦時下の校務の傍らに執筆したのであるから、
相当の日時を要したであろうことも察するに余りがある。

それはまたこの書の内容が充実していて、
博引旁証のいわゆる国文学的方法でないとしても、
作家としての草田男の文学的能力が
十分に発揮されていることによっても解る。
この書がいかに充実しており、作家としての
草田男の能力がいかに発揮されているか・・・・」
(p477~478)

はい。2020年4月26日(日曜日)に家で、
蕪村の句を、あらためて読むうれしさよ。

    夏河を越すうれしさよ手に草履

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2 コメント

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新聞 (きさら)
2020-04-26 13:31:30
先日から 配達の新聞をやめて
デジタル版にしました。

朝食のとき
テーブルに新聞を広げて
食べながら 見るのが
楽しみだったのですが~

デジタル版は
やはり 見ずらいし
新聞紙が恋しいのですけれど(笑)

ひと月 無料 その後二か月200円という
魅力はあります。

これまで
夕刊も読んでいたので
4000円ちょっとでした。
1000円も差があったのに
今頃びっくり!

コロナがおさまったら
さて 新聞紙に戻るのか どうか?
自分でも わかりませ~ん。

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もしも? (和田浦海岸)
2020-04-26 13:58:48
こんにちは、きさらさん。
デジタル版の産経新聞ですか。
阿比留瑠衣さんがネットで宣伝る
あれですね。

私は、どうすればよいのか?
でも、古本は紙ですし、
まだ、新聞紙で読みます(笑)。

もし、新聞紙にもどるなら、
ぜひ、お知らせください。
お願いします。
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