和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

何代にもわたる読者の声。

2016-02-21 | 本棚並べ
池永陽一著「学術の森の巨人たち」を
読んで以来、講談社学術文庫が気になります。
でも、読まないなあ(笑)。

気になっていた、講談社学術文庫の
新渡戸稲造著「西洋の事情と思想」を
古本で購入することに。
この解説が平川祐弘氏。
8頁ありました。
それを読んで本文は読まない。
その解説のはじまりは

「昭和59年から日本では、
千円札に夏目漱石が、
五千円札に新渡戸稲造が、
一万円札に福沢諭吉が登場する。」

うん。内容は古いけれど、
面白い指摘がありました。

「夏目漱石は日本人として初めて帝国大学で
英文学を講義した人だが、彼自身はほとんど
英語では著作をしなかった。
福澤諭吉は日本で初めて英学を興した人だが、
彼自身はほとんど英語は書かなかった。
だが、それにもかかわらず、1984年の今、
英語圏諸国で知られ、評価されている度合からいえば、
新渡戸稲造よりも夏目漱石や福沢諭吉の方がはるかに
上というのが実相なのである。夏目漱石の文学作品は
ほとんどすべてが英訳され、とくにマクレラン訳の
『心』や『道草』はその英語文体が秀れているためもあり、
評判が高い。同じことは『福翁自伝』の英訳についてもいえる。
漱石の小説や諭吉の自伝は、日本語作品としての完成度が
もともと高いから、そのお蔭で、彼等の著作の魅力は、
翻訳を通しても広く世界に伝わり得たのである。
それに対して新渡戸の著作は、英文の代表作『武士道』
についても、また日本語で書かれたおびただしい啓蒙書
についても、どこかに物足りない点があった。・・・
新渡戸の著作は、刊行当時には一時的に多くの読者を
持ち得たものの、時間の推移とともに次第に忘却されて
今にいたったのである。もし世間に信頼できる最大の
文芸評論家がいるとすれば、それは内外の読者であろう。
それも日々の読者でなく、何代にもわたる読者の声であろう。
私は、日本人の読者や外国人の読者が新渡戸の著作のうちに
ひそむ弱点を敏感に感じたことは、むしろ
健全な反応であったと考える。・・・」

さて、このあと、
文庫解説で、どのように
新渡戸稲造をほめるのか?
それは、読んだ人のお楽しみ(笑)。
コメント
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