乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

156; 論創ミステリ叢書46『木々高太郎探偵小説選』 木々 高太郎  著

2010-10-11 | 読書全般(古典など以外の一般書)



 記録だけ


   2010年度  156; 論創ミステリ叢書46『木々高太郎探偵小説選』









 論創ミステリ叢書

 木々 高太郎  著

 横井 司  監修

 2010年6月

 511ページ  3,570円





 日にちをかけ、休憩し、他の本を織り交ぜながら、論創ミステリ叢書46『木々高太郎探偵小説選』を本日読了。

 以前に読んだ作品も多い。

 木々高太郎さんらしい結末をおう。余韻が残り、満足した作品も載せられていた。




 今回 わたしにとって注目すべきは「風水渙」

 幻の連作長編 全8話完全版

 読んだ作品と初めての作品は上手くつなぎあわされ、うまく長編小説になっている。




  芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)葛の葉(くずのは)では

    【 恋しくば尋ねきてみよ和泉なる 信田の森の恨み葛の葉 】

と芝居の中で よまれ書かれる。

『木々高太郎探偵小説選』の「風水渙 7 釣り鐘草と提灯」ではまさに「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)葛の葉(くずのは)」をヒントに書かれたのではないかという錯覚に陥る箇所がいくつかある。

 例えば、

【お嬢様が大きくなって、お嫁さんに行かれますような時に、斉がお役に立てばと思っております。野に散り敷く、葛の葉の一葉は。お嬢さんが、お尋ね下さるかと、長い間待っているのでしょう。】

 上の文は内容以外に口読点も多く、人間以外の匂いをも感じさせる。

「風水渙 7 釣り鐘草と提灯」では他に

    【釣り鐘草を提灯に

     野原を遠く尋め(もとめ)くれば

     ここは二二んが六となり

     三と三とで八となる      】

といった呪文のような言葉が繰り返され、不思議だが 日本人として どこか懐かしさを覚える。


 

 各作品を読み終えたあとの、長く心に残る余韻。これは木々高太郎さんの魅力だと、わたしは思う。

 以前から木々高太郎さんの作品は探偵小説と呼ぶには読み応えのあるわたしの心を満たすものが多く感じていた。

 その謎を解き明かすべく記された、『木々高太郎探偵小説選』の「評論・随筆編」

 これはおもしろかった。

 同時に、納得がいく内容だった。

 わたしは木々高太郎さんの処女作品『網膜脈視症』が好きで、何度となく読んだ。

 そして、この作品の中に、安部公房的色彩を見いだしていた。

 但しこれはわたしの感覚で、本来の作品鑑賞からは逸脱しているのだろうと思う。

 わたしは一気に木々高太郎という作家を探偵小説家とした小さな枠組みの中ではなく、文学作家としてとらえていた。

 同時に探偵小説全般においてあまりなじみの無いわたしにとっても、木々高太郎さんの書かれたものは違和感なくしっくりとくるものだった。

 一番好きかもしれない木々高太郎さんの『網膜脈視症』と出会ったのはごく最近のことで、2008年2月のこと。

 『恐ろしい話』 ちくま文学の森 7に含まれていた。

 これがきっかけとなり、木々高太郎さんの全集六巻(実際には選集)を読むに至ったといういきさつ。

 尚 本書には『網膜脈視症』は載って無いことをつけ加えておきます。


 

 わたしが無知だっただけで 木々高太郎さんをお好きな方は多いらしく、わたしのような俄ファンは偉そうなことは書けないなと、恥じ入る。

 今回も記録のみ。

 これにて 失礼申し上げます。




 間違いがあればお教え下さいましたら嬉しいです。

 また、失礼があればお許し下さいますよう、お願い申し上げます。



 最後になりましたが、今回本書『木々高太郎探偵小説選』を読むきっかけを与えて下さいましたブログを綴っておられます T・U氏に、心より感謝申し上げます。

 ありがとうございました。





    






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コメント (2)
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