ネタバレ一応注意。
流浪のアルバイト探偵、風水火那子のシリーズ短編集。四編収録で、どれもシチュエーションが抜群に面白い。「サマータイム」は夏の終わりの海の家での殺人。その日の内に取り壊されてしまう「現場」がある内に、事件は解決されなければならない…というもの。「麺とスープと殺人と」はラーメン・テーマパークで起きた殺人事件。実はこの辺はまだまだ序の口で、「ハブ」では爆薬の仕掛けられたバスの中でのア . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
なんだこのカッコつけた文章!
《街は不夜とはいえ、場所によっては先見えぬ澱みがあり、時によっては人寄らぬ風穴がある。(中略)たとえ煌々と明かり射し、騒々しく人の満つる所であっても、その気になれば懐に刃呑み、知れず死をもたらすこと困難ではない。街とはそういうものである。三橋は自分でも神経質とは思いながらタクシーに乗った。》(59p)
単にタクシー乗るだけの描写に、これだけスカし . . . 本文を読む
2ndフル。
前作『風景描写』はギターバンドによるポップスコレクションとして屈指の完成度を誇る名作でしたが、この作品はその路線をちょっと外した作品となっております。
ギターは歪んでいるし、リズムも性急にゴリゴリ押してくる。詞もこれまでのノスタルジアは変わらず湛えつつ、より強い言葉が使われている。「みずいろの町」というやわらかいタイトルを冠しつつ、「燃える心」を唄う③は典型だし、この曲をシングルで切 . . . 本文を読む
もう、圧勝だろ。
彼女の音楽家としての才能…作詞作曲から楽曲全体のイメージ構成、そして何度も言ってるけど傑出したボーカリストとしての表現能力、その総合的な才能…はもう史上最強。そして根岸&長田との完璧なコンビネーション。この好相性に比肩できるのは現在、YUKIと蔦谷好位置ぐらいのもんだな。
SINGER SONGERは結構カラーの統一されたバンドだったけど、このアルバムは冒頭から実にバラエティ豊か . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
固定の店舗を持たない骨董商=旗師。虚実入り混じる骨董の世界を独り駆ける美貌の女旗師、「冬狐堂」こと宇佐美陶子のシリーズ中短編集。
『狐罠』『狐闇』の長編では、「長さ」を生かした重層的なプロット、伏線運びの上手さが際立っていたので、短編という形が馴染むのかどうか、興味深く読みました。
どの話でも、題材・プロットの卓抜は見えますが、結末に至る推理や話運びはやはり性急の感を拭えませ . . . 本文を読む
…唐突な鬱展開。
正直に言ってかなりの精神的なダメージを受けました。真山とか藤原デザインの面々がひとときの安らぎを提供してくれるとはいえ、なんとも重く、息苦しい展開です。
はぐに襲い掛かった出来事はあまりに唐突だったし、森田兄弟のエピソードなんて正直ベタだと思ってしまいました。多分この作家の本領はこうしたところにないのだと思うけど、作品の「終わりの始まり」において、やっと「持てる者たち」に本格的に . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
「怪奇幻想短編集」はこの作家の本領だけあって、粒揃いです。ショートショートでも、ミュータントものでも、モダン・ホラーでもノスタルジックなものでも…気品のある文章と奇想・アイデアが噛み合った、高品質の作品集です。
ホラー短編では「エイプリル・グール」が良かった。幻想本格として『霧越邸』に次ぐ成果と評価している『竹馬男の犯罪』の作者だけあって、ミステリ的な驚きが土着的なスプラッタ . . . 本文を読む
ネタバレ特になし。
「思考と生活」シリーズ(だっけ?)の第四弾。既読だったらどうしようとずっと不安を抱えつつ読んでいたのですがどうやら大丈夫だったみたい。昔は新刊すぐ読んでたからそんなこともなかったんだけど、最近は記憶が曖昧だわ…。
で、以下所感を列挙。
・幻冬舎文庫、手垢つきまくりでムカつく。
・MORI LOG Academyに比してフレンドリィな文章が懐かしくなりました(にこにこ)。
・ . . . 本文を読む
ネタバレ特になし。
たまにはこんなの読んでもいいじゃない。
キャッチセールスに自分から引っ掛かりに行くルポルタージュ…のハズだったのですが、どうやらこの人、ナチュラルに騙されてるw。普通に携帯の契約させられてるし、結婚相談所には入会してるし、文○社商法にカモられてるし(泣ける)、悪徳プロダクションにもしっかり所属しちゃってるぢゃん!
てかね、エキストラとフリーライタを兼任して(それってつまりプー . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
これミステリーランドで書かせりゃよかったのにな…松尾由美にその予定はないのでしょうか。講談社でも出してるやろ(…まああんまり売れてへんのかも)。
「安楽椅子そのものが探偵」という、素っ頓狂な設定を取り入れたアームチェア・デテクティブ連作。「日常の謎」を基調に、物語の大枠には「安楽椅子探偵」アーチーをめぐる因縁の活劇的な要素もあり。端的に面白かったです。特に冒頭「首なし宇宙人の謎」 . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
表題の長編と、代表三シリーズの短編を収録。
表題作に関して。章題に小見出しを付ける手法は倉知淳『星降り山荘の殺人』の源流だし、ミステリとしてのプロットにも評価するべき点があるのだと思う(この長編好きなのは西澤保彦だったっけな)。しかしぶっちゃけ、独特の文章があまりにも読み難くて、評価するまでに至りませんでした。なんとか読みきった、という感じ…読み手としての力量が足りなかったで . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
もっとブッ飛んだ話を期待していたんだけど、そうでもなかった。いや、設定――《平凡な高校生・山本陽介の前に現れたセーラー服の美少女・雪崎絵理。彼女が夜な夜な戦うのは、チェーンソーを振り回す不死身の男。何のために戦っているのかわからない。が、とにかく奴を倒さなければ世界に希望はない。》――じたいは充分ブッ飛んでるんだけどね。
でも俺が読みたかったのは、「ファウスト」掲載作などで見せた . . . 本文を読む
溜まりに溜まったCDのレヴューをやっつけよう週間です。
という訳でGO!GO!7188のベスト盤。なにげに音源を持ってなかったりするのでした。たまに「C7」とか唄うのにな。
ザクザクしたリフとリズムで聴かせるガレージGSから、徐々に変調・変拍子、あるいは「和」を取り入れてみたりと、音楽性の変遷が窺えるベスト盤です。どの曲もロックとしての性能は高いと思います。
都市伝説的ラヴソング「こいのうた」にも . . . 本文を読む
3rd。
全18曲。認知度の上昇に背を向け、ただ黙々と自分と世界の混沌にメンチ切って作られたような、圧倒的濃度のアルバム。ブルージーな反戦歌も、「あの娘の水着になってみたい」も、軽やかなバンドアンサンブルも、山口節の語りも、涙腺を掠める言葉の切れ味も、サンボマスターのロックンロールの全てがこのアルバムに渦を巻いている。2ndのような洗練とは真逆の方向性だが、ヴィジュアルとは相反するクオリティの高い . . . 本文を読む
ロングスケールのアルバム。
「あれ、バンアパ?」とか思ってしまうぐらいに、ぱっと聴いた時の印象は似ています。お洒落なエモ。単純な言葉で表すならそんな、いかにも頭の悪い表現になってしまうでしょう。
聴きこんでいくと、違いが分かってきます。まずそんなに(バンアパほど)お洒落じゃないw。ギターソロのフレーズとかスタイリッシュさよりはまっすぐにロック的なかっこよさを追求しているように聞こえます。それに共通 . . . 本文を読む