urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

小峰元『アルキメデスは手を汚さない』講談社文庫

2006年10月28日 | reading
ネタバレ注意。 70sの乱歩賞で、青春ミステリの嚆矢がなんだかオサレな表紙で復刊。まったく意味不明なタイミングだけど、ブクオフで昔の白背の講談社文庫買おうかずっと迷ってたので、嬉しい復刊ではありました。でも和田誠のイラストのイメージ強かったから、違和感はバリバリですな。 で、作品じたいは、うーん、古いなあ、という感じ。視点人物のおっさんっぷりが青春ミステリとしての風合いを殺しているし、そもそも登 . . . 本文を読む

近藤史恵『Shelter』祥伝社文庫

2006年10月21日 | reading
ネタバレ一応注意。 なんだか最近、辛い読書が続くなあ。 整体師シリーズ。どうしてもこうもクソ正直なフェミニズム小説書いちゃうんだろう。坂木司かと思った。話的には『ガーデン』(大好き)と似てるけど、そっちにあった情念の凄みが皆無です。「(男の横暴によって)傷ついた女性たちが、理解ある男性の助けを借りて立ち直る話」です。アホか。 このしょうもなさ、この小松崎って何一つ魅力のない主人公にして視点人物の . . . 本文を読む

石田衣良『アキハバラ@DEEP』文春文庫

2006年10月20日 | reading
ネタバレ注意。 …微温い。 危惧していた通り、『4TEEN』に見られたような、最近の石田作品に顕著な偽善性。正直に言って、読んでいながら空虚感に支配された。 彼は一体何を失ってしまったのだろう。 彼の小説から、「エッジ」(と呼ばれていたもの)が失われてしまったことは、日本のエンタテインメント小説におけるとても大きな損失だと思う。まあ初期作品からして、『うつくしい子ども』とかどうしようもない . . . 本文を読む

村上春樹『アフターダーク』講談社文庫

2006年10月17日 | reading
ネタバレ一応注意。 すげえ文章があった。 《彼女が今やろうとしているのは、自分の目がそこで捉え、自分の感覚がそこで感じていることを、少しでも適切な、わかりやすい言葉に置き換えることだ。その言葉は半分は私たちに、半分は自分自身に向けて発せられることになる。もちろん簡単な仕事ではない。唇は緩慢に、とぎれとぎれにしか動かない。まるで外国語を話すときのように、すべてのセンテンスは短く、言葉と言葉のあい . . . 本文を読む

京極夏彦『邪魅の雫』講談社ノベルス

2006年10月16日 | reading
ネタバレ注意。 京極堂シリーズ最新刊。 何人ものストーカーと何人もの被ストーカー。何人ものそれを守ろうとする人たち。殺そうとする人たち。何人もの警官と元警官。影の薄いレギュラーメンバー。特に榎木津。 読んでる間はそれらの構成が物語を冗長にする要素にしか感じられず、結構ストレスが溜まります。『陰摩羅鬼』も冗長だったからね。しかし真相が明らかにされてみると、それらがすべてこの「反転」の構図を描くのに . . . 本文を読む

柄刀一『十字架クロスワードの殺人』祥伝社文庫

2006年10月04日 | reading
ネタバレ注意。 あーもう、マジ読みづれえ文章だなオイ! 龍之介シリーズなら大丈夫かと思ってたけど全然そんなことなかった。ダメだった。《多かれ少なかれ、みんな体が多少濡れている。》(102p)だの《あれからは、うまいカニを食べている時のように、みんな無口になっていた。》(207p)だの、もう合う合わないじゃなくて単純にヘタなんだと思う。 そんな風にして語られる肝心の事件の方も無駄に錯綜していて、酷 . . . 本文を読む

恩田陸『夜のピクニック』新潮文庫

2006年10月01日 | reading
ネタバレ一応注意。 《みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。/どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。》(31p) とは、登場人物がこの「夜のピクニック」という行事を指して云う言葉ですが、それはそのまま、この『夜のピクニック』という小説にも当てはまるものです。高校生が、夜歩いてるだけ。派手なことはなにひとつ起こらない。ただそれだけの小説なのに、なんだか「特別」な感じがす . . . 本文を読む

島田荘司『龍臥亭事件』光文社文庫

2006年09月30日 | reading
ネタバレ注意。 文章下手(この台詞の軽薄さはなんなんだろう)、登場人物はみなエキセントリックで過剰(この警察に対する悪意はなんなんだろう)、ミステリとしても大味でツメが甘い(「ダムダム弾」というファクタの処理は面白いと思ったが、魅力的な建物構造を利用した大トリックがいかにも島荘ってノリながら大味でションボリ)。島荘の悪いトコ出ちゃいましたーって「大作」だけど、それでも高揚しつつ読まされてしまうの . . . 本文を読む

日明恩『それでも、警官は微笑う』講談社文庫

2006年09月29日 | reading
ネタバレ注意。 個人的に、タイトルのセンスが最悪だと思うのですが、内容の方もそれに負けず劣らず、といった感じでした。 物語の運び自体は、序盤からオーソドックスな警察小説の趣でそれなりに読ませるけど、全貌が明らかになってみれば、犯人とその背後の「国家」の思惑が完全なる絵空事(まあそれなりに面白いプロットではあるけど)。敵役も簡単にポシゃっちゃうし、宮田のエピソードに典型的なように、並列されるエピソ . . . 本文を読む

中島らも『休みの国』講談社文庫

2006年09月28日 | reading
ネタバレ特になし。 毎日に設定された、様々の「記念日」をネタにしたエッセィ集。内容は別に評価するほどのものでもないが、力抜いて、安心して楽しめるらも節です。フォーマットが決まってるから、彼のエッセィの大きな欠点である「同じ話を繰り返す」ってことがないのが良かった。 以上、あと言うことない。 作品の評価はBマイナス。 休みの国中島 らも 講談社 2006-08-12売り上げランキング : 1 . . . 本文を読む

多田克己/京極夏彦絵『百鬼解読』講談社文庫

2006年09月27日 | reading
ネタバレ特になし。 つまらんかってん。 基本的には京極作品に出てくる妖怪に解説つけてるんだけど、その割に京極作品に関する言及はほぼ皆無。「参考書」としてはそれでいいのかもしれないけど、「副読本」的な内容を期待していた俺には読むべきところがほとんどありませんでしたと。 内容的にも、いろんな文献から引っ張って、駄洒落交えた絵解きが行われているけどカタルシスはない。「絡新婦」とか酷いぞ。まあ鳥山石燕の . . . 本文を読む

森博嗣『λに歯がない λ HAS NO TEETH』講談社ノベルス

2006年09月26日 | reading
ネタバレ注意。 おー。久しぶりにトリックに感心しました。島田荘司ばりの大掛かりかつシンプルな物理トリックで、森作品には珍しい種類のカタルシスを与えてくれます。 玉蜀黍の話が哀切だったけれど、これだけ端的に「動機」を書いたのも珍しいような。森の近作では、あるいはもしかしたらキャリアを通じて最も、「本格推理小説」に近いフォルムを持った作品であると思います。 で、しかしそのスタンダードから乖離させてい . . . 本文を読む

高田崇史『磨の酩酊事件簿 花に舞』講談社文庫

2006年09月24日 | reading
ネタバレ一応注意。 正直まったく期待してなかったんだけど意外と良かったシリーズ第二弾。 やはり高田崇史、コミカルなものの方が合ってると思う。うまいよ。コミカルなストーリーラインだけでなく、ミステリとしても、特に「ショパンの調べに」、そのプロットに感心しました。凄く意外だし、綺麗です。 漫画作品のノベライズらしいんだけど、これ考えたのどっちなんだろ。それで手柄の所在も変わってくるとは思うのですが。 . . . 本文を読む

A.C.ドイル/日暮雅通訳『緋色の研究』光文社文庫

2006年09月22日 | reading
ネタバレ一応注意。 世界一有名な探偵の、記念すべきデビュー作なんだけど、正直ミステリとしては別段見るべきものはなかったな。 ホームズとワトスンの掛け合いの面白さは既に確立されてるし、第二部「聖徒の国」で描かれる「殺人の来歴」にも読み応えがある。リーダビリティは発揮されてるんだけど、ミステリとしてはやや短絡的なきらいがあるな、と思います。有名な握手だけからの来歴推理もね。 んでこれ、今の世の中じゃ . . . 本文を読む