urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

井上雅彦『異形博覧会』角川ホラー文庫

2006年07月24日 | reading
ネタバレ一応注意。

「怪奇幻想短編集」はこの作家の本領だけあって、粒揃いです。ショートショートでも、ミュータントものでも、モダン・ホラーでもノスタルジックなものでも…気品のある文章と奇想・アイデアが噛み合った、高品質の作品集です。
ホラー短編では「エイプリル・グール」が良かった。幻想本格として『霧越邸』に次ぐ成果と評価している『竹馬男の犯罪』の作者だけあって、ミステリ的な驚きが土着的なスプラッタ小説のラストにうまく設定されています。まあスタンダードなものだけれど。これに限らず、海外を舞台に書いても違和感なく読ませるのは手腕でしょう。ショートショートでは、「消防車が遅れて」「残されていた文字」がオチに気が利いていて素敵でした。
ただ一つ揚げ足をとらせてもらうならば、305pの「オマージュ」は「コラージュ」の間違いやと思うね。

作品の評価はBプラス。

異形博覧会異形博覧会
井上 雅彦

角川書店 1994-07
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