urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

M.ギルバート/石田善彦訳『捕虜収容所の死』創元推理文庫

2006年06月30日 | reading
ネタバレ一応注意。 第二次大戦下、イタリア軍の捕虜収容所で起こる、脱走トンネル内での密室殺人。 この一行だけで道具立ての魅力は十分伝わるのではないかと思います。謎解きもしっかりしてるし、終盤でのどんでん返しの連続もニクい展開(その分解決がややバタつく印象があるが)。ルーレット盤などの小道具もうまく使った演出も上手だし、『大脱走』的なサスペンスも面白い。 まあ隙はない小説でして、けなす部分はただ一 . . . 本文を読む

二ノ宮知子『のだめカンタービレ⑮』講談社コミックスKiss

2006年06月29日 | comic
燃えマンガとしての山場はないけど、この巻は良かった。 モーツァルトに関するウンチクも責任を果たしていると思うし、焼き直しの感は拭えないけど変な外人描かせたらうまい(ブノワね)。あとターニャがある友人を思い出させて笑ってしまいました。 あといよいよ顕在化してきたのだめの天才。なんか海のイメージが描出されちゃったり。こういうアーティスティックな方向に行くのかな…ジャンプマンガみたいな燃えが好きなのだけ . . . 本文を読む

東京60WATTS 『clover』

2006年06月28日 | listening
なぜか⑦「チェリー」がアマゾンの曲目リストに載ってないんだけど。 低音が効いたアレンジと、草野正宗とはまったく違う魅力を持つ大川毅の声が、この国民的名曲をまた味わい深いものにしています。カバーってのは本来こういうものだね。いい。 7曲収録のep。ライヴではすっかりお馴染みの名曲「サマータイムブルース」が実に爽快。WATTSらしい生活感溢れるラヴソング「スイート・ホーム・ミュージック」…《ああ 君に . . . 本文を読む

佐々木丸美『雪の断章』講談社文庫

2006年06月27日 | reading
ネタバレ一応注意。 作者は知る人ぞ知るカルト作家。本格志向も高いようなので、期待して読んだのですが…合いませんでした。 奇縁によりある青年に引き取られた孤児の少女の成長と、そこに影を落とす殺人事件。確かに本格要素はありますが添え物程度で(俺にはそう思えた)、孤児を主人公に「ブンガク」してる小説。 主人公が好きになれない。てか俺ははっきりと嫌いです。いかにも文学にかぶれた人っぽい装飾過多な文章が、 . . . 本文を読む

うすた京介『ピューと吹く!ジャガー⑪』集英社ジャンプコミックス

2006年06月26日 | comic
半年に一度のお楽しみ。 まあ明らかにネタのパワーは落ちてるのに、相変わらずの鉄板、ジョン太夫。げに恐ろしきはジョン太夫のポテンシャル。何言ってんだ俺。 基本的にはその再認識がメインの巻となりましたが、「瓶」とか「ホコリ」とか、某ラーメンズのネタを思い出させるキーワードに独りニヤリとしてたけど、別に狙ってやってるわけじゃないだろね。 ピューと吹くジャガー 11 (11)うすた 京介 集英社 20 . . . 本文を読む

近藤史恵『天使はモップを持って』文春文庫

2006年06月25日 | reading
ネタバレ一応注意。 掃除スタッフの女の子を探偵役に据えた、オフィスの日常の謎モノ…のハズだったのですが、ミステリの骨格が弱すぎて、オフィスの女性たちの人間模様を描いたフツーの小説になってしまっているような。 そうして読んでみても、フェミニズムが前面に出ていてなんだか辛かった。坂木司みたいに短編一つ読み通せないなんてことはなかったけれど。近藤史恵は好きな作家だけど、整体師のシリーズ見てても共通の傾 . . . 本文を読む

プロンジーニ&マルツバーグ/高木直二訳『裁くのは誰か?』創元推理文庫

2006年06月24日 | reading
ネタバレ注意。 支持率低下に悩む合衆国大統領の周辺…ホワイトハウス、専用列車、別荘に起こる「連続殺人」。 森博嗣がこの作品の「奇手」を賞賛していたので手に取ったのです。確かにトリッキーなプロット、衝撃のオチ(後発・類似の国内作品は見破れたのにこれは無理だった。なんか仕掛けがあるって先入観あったのに)が仕組まれています。しかし純粋な本格というよりはサイコな方向に流れている印象が拭えず(伏線の検討な . . . 本文を読む

鹿島田真希『二匹』河出文庫

2006年06月23日 | reading
ネタバレ一応注意。 純文学。もっと言えばJ文学。 豊崎由美が誉めてたんですよ。「前衛が読めない」保守的選考委員としてこの作家に接する宮本輝に対する罵倒に、「舞城」を期待してこの本を手に取りました。回りくどいな。 しかし…俺もコレは読めねえ。明に狂犬病が発病してからの展開は、ライトで軽薄にさえ感じられる文体はそのままに、狂騒の中に幻想的な雰囲気も混じってきてなかなか面白いと思いましたが、全体に横溢 . . . 本文を読む

P.アントニイ/永井淳訳『衣裳戸棚の女』創元推理文庫

2006年06月22日 | reading
ネタバレ一応注意。 「戦後最高の密室ミステリ」なんて煽られてるから期待値は結構高かったのだが、それが十全に満たされたとは言い難い。 純粋な「密室」ってよりは、サプライズに重心が寄ってるように思った。意外な真相じたいはなかなか面白いものだが、ロジックとしてうまく組み立てられているかというと疑問。シンプルなオチの割には容疑者の動きなどの要素が込み入りすぎていると思う。 …レヴューもシンプルになってし . . . 本文を読む

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』祥伝社文庫

2006年06月21日 | reading
ネタバレ注意。 《「驚いたか?」/「今までの人生の驚いた出来事ベスト三には入るな」/「一番目は?」久遠が訊ねてくる。/「祥子が、私のプロポーズに承諾したことだな」/「ああ、それはたしかに驚いただろうね。二番目は?」/「その後すぐに、祥子が、『どうせ、いつもの出鱈目でしょ』と言ってきたことだ」/「いい話だね、それ」》(263p) このタイミングまで未読だったことを大いに悔やみました(一回図書館で . . . 本文を読む

米澤穂信『愚者のエンドロール』角川スニーカー文庫

2006年06月20日 | reading
ネタバレ注意。 これはあかんかった。 古典部シリーズ第二作。文化祭で上映される(べき)撮影が頓挫した推理映画の犯人を当てる(ことによって完成させる)、という趣向。となれば思い出される我孫子武丸の傑作『探偵映画』。それにあった、演者が全員犯人になりたがる、といった魅力的なツイストもなく、オーソドックスな事情聴取→推理が繰り広げられるが、その過程がなんか浮ついて感じられた。リアリティがない、と言うか . . . 本文を読む

米澤穂信『氷菓』角川スニーカー文庫

2006年06月19日 | reading
ネタバレ一応注意。 米澤のデビュー作かつ「古典部」シリーズの第一作。 学園モノ日常の謎ミステリで、その意味では「小市民」シリーズとも類似的ではあるが、相対的にロジックの緊密さ、スリリングさを欠く。そして何より、ラノベ的な筆致が鼻につく部分が多かった。 各人の行動理念を示す格言とかキャッチフレーズみたいなもの、その他愛もなさが俺がラノベ的小説を嫌いな最大の理由なんだけど(頻出するよね、実際。その典 . . . 本文を読む

米澤穂信『春季限定いちごタルト事件』創元推理文庫

2006年06月18日 | reading
ネタバレ一応注意。 《「それがわかってて、あんたなんで言うのよ」/もっともな知里先輩の言葉に、小佐内さんは顔を赤くした。/「場を、繋ごうと思って……」》(139p) ということで小佐内さんが実にかわいらしい。実写化の際には是非、堀北真希でお願いしたいものです。早くしないと育っちゃうよ! で、一作目に立ち返ったわけです。全体としては日常の謎の連作短編ですが、連作としての仕掛け、各話のミステリとし . . . 本文を読む

乙一『ZOO』集英社文庫

2006年06月17日 | reading
ネタバレ注意。 乙一の文庫は二分冊にしなければならないというカルテルでもあるのでしょうか。正直ウザい。 で、この本。冒頭の二編が素晴らしい。「カザリとヨーコ」、悲惨な状況…《「いいかい、ママがアンタをぶつのは、あんたがどうしようもなく悪い子だからよ。でも、このことはだれにもないしょだからね。わかった? わかったのなら、このミキサーのスイッチは押さないであげるわ」(中略)「もうちょっとであんたの手 . . . 本文を読む

A.C.ドイル/日暮雅通訳『シャーロック・ホームズの回想』光文社文庫

2006年06月15日 | reading
ネタバレ注意。 いやーしかしネット難民の間にレヴューも溜まってしまいましたな。まあゆっくり更新していきますわ。 と言う訳で第二回配本の第二短編集。「黒後家蜘蛛の会」シリーズなんかもそうだけど、ミステリのシリーズ短編ってのはどうしても段々クオリティが落ちてくるもの。この作品集も、トリック・ロジックがおざなりにされ始めている感は正直拭えませんが、ストーリーテリングはうまいので読まされてしまいます。 . . . 本文を読む