ええと……またも、昔話をしてしまうのでございますが、しばしお付き合いくださいませ。
このたび、わたくし、タイヤを新調したのでございます。
それも、これまでご縁のなかった近所のプロバイクショップの門をたたいて……の、勇気を要する一元さんお買い物だったのでございました。
そのプロバイクショップは、JR豊田駅の近くに店を構えておりまして、仮にショップCと申し上げておきまする。。。
このショップC……地元ではけっこう有名店ということで、自転車専門誌などに広告を出したりもしているらしいのですが、わたくしは勉強不足で、これまでまったく存じ上げておりませんでした。
それを、ふとしたきっかけで、あるご老人から教えていただいたのでございますが……このあるご老人との出会いというのがまた、ちょっとしたドラマだったのでございますが、それはまた、別の機会にお話させていただくとしまして、とにもかくにも、わたくしは自宅のわりと近所に、プロバイクショップがあることを知り、さっそく出かけてみたのでございます。
これがまた……世間知らず&モノ知らずのわたくしにとりましては、非常にセンセーショナルなショップだったのでございました。
なんと申しましょうか……バンビちゃん率いるショップAとも雰囲気が違いますし、ウッチー率いる大型店のショップBとは、それこそ対極的といっていいくらい異質なイメージだったのでございます。
一見すると、おやっさんが一人で営んでいる街の自転車屋さんという雰囲気をかもし出しているのです。
それはなぜかと申しますと、店頭に修理預かりしているママチャリが、山ほど並んでいるからでした。
けれど、一方では、単なる街の自転車屋さんではないという異質な空気も漂っている……ピンと張り詰めた緊張感と申しましょうか、ただ事ではない雰囲気にも包まれているのでした。
なんたって、そのママチャリ群とは別に、これまたメンテナンス中と思われるロードバイクやMTBなどが、ぎっしりと、それこそ、スシヅメ状態で並べられているのでございます。
それは、このお店が大勢の常連さんを抱える信頼の篤いプロショップである証でもあり、また、メンテナンスをご商売の柱にしていらっしゃることを窺わせるものでもありました。
さてさて、ほの暗い店内では、店主とおぼしきおやっさんが、オイルで真っ黒になった手で、ひたすらパンク修理に励んでいらっしゃるのでした。
ちょっと声をかけにくい雰囲気ではございましたが、わたくしは勇気を出して、ご挨拶してみたのです。
「あのぅ~……ごめんくださいませ……」
おどおどと声をかけたわたくしのほうを振り返ったおやっさんの眼光の鋭いこと!
こりゃ、只者じゃございません!
サムライです! さすがは新選組発祥の里・日野市です!
おサムライさんが、自転車のパンク修理をなさっていらっしゃるのですわ~!
わたくしはおやっさんの威圧感にすっかり飲み込まれてしまって、言葉を発するのも忘れて、ぱくぱく口を開けたり閉じたりする金魚状態で固まってしまいました。
しかし、次の瞬間、おやっさんはニッコリ笑って「いらっしゃいませ」と、力強く応えてくださり、わたくしを迎えてくださったのでした。
(眼光は相変わらずレーザー光線のように鋭かったのですが……)
勇気をふりしぼって店内に足を踏み入れてみますと、奥に向かって細長い店内には、これ以上は無理というくらい、ギッシリとバイクやギア、ウエアなどがひしめきあっていました。
そして、短時間にわたくしはずいぶんいろいろ観察してしまったのですが、このお店にはバイクのメンテスペースが2箇所あり、そのひとつをおやっさんが占有し、もうひとつは、おそらくおやっさんのご子息と思われるお兄さんの作業場になっているのでした。
店内に入るには、お兄さんのほうの作業スペースの脇をすり抜けるようにして奥へ進みます。
おやっさんのほうは、なぜかフェンスで店内と仕切られていて、通過できないようになっているのでした。
でも、さすがはプロショップ。
店舗面積は狭くとも、フツウに必要な品物なら、すべて揃っているという印象です。
タイヤも、MTB用とロード用それぞれ、種類別にきちんと在庫が揃っているのでした。
事前に、MAXXISのタイヤにしよう……程度のプランはあったものの、詳しい特性を調べていなかったわたくしは、他力本願で、ついついおやっさんにおすすめのタイヤをお尋ねしてしまいました。
「あのぅ~、軽くて、耐久性があって、グリップがよくて、未舗装路みたいなところでも比較的安心して走ることができて、パンクしにくくて、でも坂道とかもグイグイ登れて、私みたいな者でも速く走れて、お値段も安いタイヤはありますか?」
我ながら、矛盾だらけで、不条理すぎるリクエストでございます(汗)
そんな都合のいいタイヤ、あるわけないのでございます~(涙)
わたくしは言ってしまってから、自らのわがままぶりに真っ青になりました。
おやっさんは一瞬、鋭い眼光をいっそう鋭くなさったのでしたが……わたくしを責めることもなく、作業の手を止めていったんお店の外に出て、お兄さんの作業場のヨコをすり抜けてタイヤコーナーまで歩いてきてくださいました。
そして、ひとつひとつ、モノ知らずなわたくしに丁寧に説明してくださりながら、タイヤを選んでくださいました。
迫力満点ではございますが、ご親切で、いい人なのでございます~。
それが、コレ↓MAXXIS COLUMBIERE というタイヤでございました。
おやっさん曰く、わたくしのリクエストをすべて満たすのは難しいけれど(当たり前ですわね)、値段とパフォーマンスのバランスが取れているものなら、コレがおすすめということでした。
ほかのお客さんの評判もいいとおっしゃったので、わたくしはすっかり安心して、このタイヤを2本購入させていただいたのでした。
なんといっても本日は一元さんだったのですから、無事に目的のお買い物が成立しただけでも上々の出来と、わたくしは自分自身を高く評価しつつ、ショップCをあとにしたのです。
そして、自宅に戻り、楽しいタイヤ交換タイム……
まずは、古いタイヤを外してチューブをはがすわけですが、なんでございましょう……エライこと、固着しているのでございます。
ビヨ~ンと、思い切り引っぺがさなくてはなりません。
ロードバイクの高圧な状態では、こんな風にチューブがタイヤの裏側に圧着してしまうものなのでございますね。
以前、このチューブを入れたときには、少しでも圧着を避けるために、コーンスターチを振りかけてみたのでございました。
しかし、あまり効果がないようにも思ったわたくしは、ふと思いついて、汗とりのボディパウダーを持ってきてみました。
ワコールの、お風呂上り用のパウダーでございます。
たぶん20年くらいの年代モノかと思いますが、なぜかバリバリ現役。。。
基本的に、お風呂上りにボディパウダーを使う習慣がないものですから、何年経っても減らないわけなのです。
こんなところで活躍するとは……捨てずにとっておいてよかったのです~。
これをまんべんなく振りかけてから、タイヤ交換は無事に終了です。
かつて、わたくしの唇をムラサキナマコのように腫れ上がらせた猛毒のパーツクリーナーでチェーンやプーリーの汚れをキレイに落とし、もちろんフレームもピカピカに磨き上げました。
逆さまなところがちょっと残念なのですが、タイヤ交換&お掃除済みのCAAD9少佐どのでございます。
この頃は、いろいろ事情があってバイクに乗る時間をなかなか捻出できなかったのですが、タイヤを新調し、クリーニングができただけでも、大満足の一日でした。
そして、この日以降、わたくしはショップCに頻繁に足を運ぶようになったのでございました。