翌日、同僚さんの私に対する目つき、態度はなんとなく頑なだった
身内を恥を話してしまったことを後悔しているようだった
彼女の仕事に対する生真面目さは、いい加減な私にはないものだった
しかし、その生真面目さが、トラブルに繋がることがしばしばあった
いつも、決まり事をキチンと守ろうとして、テンパってしまいミスが多かった
私たちの仕事は、若いナマモノを守ることなので、事に当たって臨機応変さと機転がきく事が求められる
「どうも向いていない」いつも尻拭いをする責任者が言った
「ほかの現場ならどうにかなるけど、ここではちょっと・・・」
男性なら、仕事帰りにちょっと一杯しながら、お悩み相談ができる
でも、働くお母さんは、夕飯を作らなくてはならない
私はメアドと電話番号、固定電話の番号を書いたメモを渡しながら
仕事前に、どこかで話さないかと提案してみた
とまどっていたが、夜メールがあり、私たちは仕事前に会う約束をした
お店に来た彼女の眼は、私に対する警戒心と敵意が感じられた
家ではもっと厳しい目になっているのだろう
私も昔はこういう目つきをしていて、家族に不快な思いをさせていたのかもしれない
今も変わらないかもしれない
なんで、コンビニのトイレに行くの?
「だって光熱費とか、食費いれるの当たり前のことでしょ。そう言えば働くと思ったの。そしたら、コンビニに行くようになってしまった」
パソコンとか自室にあるの?
「スマフォを持ってるし、まだ自分で料金はらえているみたい」
友達と連絡とって遊びにいくことはある?
「最初は出かけてたけど、だんだん出なくなった。たぶん恥ずかしくなったんだと思う」
案外平日の昼間は誰もいないから、自由に行動してるんじゃないの?
「わからない」
なんでバイト反対したの?
「バイトなんてしてたら、30歳になっちゃう。ますます就職できなくなるでしょう。そう言ったら、息子突然切れて、私の腕をねじり上げたの。それから暴力が始まって・・・」
彼女の言うことは正しい。でも成人した息子さんだってそのことはちゃんとわかっていたように思えた。だから、切れてしまったのだろう。
「その後、またバイトをすると言ったことがあるの。その時は私賛成したのよ。でもね、家から離れたところで働きたいと言うから、それは厳しいと言ったの。今どきバイトに交通費を払う会社なんてないって、そしたらまた暴れて・・・」
彼女の言うことは正しい
でも、交通費を払ってくれるバイトが絶対にない とは思えない
その正しさと、理詰めに、息苦しさを感じた
私もかつて旦那に同じ様なことを言っていた
「同僚さんも矛盾や無理や不満を我慢して働いているのに、なんであんただけ鬱になるのよ。ほかの人が我慢できること、なぜ我慢できないの。我慢しない仕事なんてないんだよ」
私は私が抱えていた苦しい時期の話をした。旦那が働けない方がきついのだと言わんばかりに
「でも、があこさんの旦那さん、今はちゃんと働いているんでしょう。息子さんも部活頑張ってるし。」
突然、彼女は叫んだ。周囲の注目を浴びるくらいの大きな声で
「○○さんは、息子と同じ年齢なの。よく気が利くし、いつも一生懸命働いていて、彼女を見ると辛くなる。△△さんの娘さんは就活頑張っているみたいだし、エントリーシートの話題になると、苦しくて苦しくて・・・・」
働くお母さんと言えども、その社会は狭い
その狭い社会のなかで、自分の家が一番不幸で、うまくいっている家庭を恨んでいる
この感情にも私は覚えがあった。まるで自分を見ているようだった
○○さんは就活に失敗して、この現場にいる。でも女の子だから今のままでも十分とも言える
△△さんはシングルママ、人には言えないような苦労をしてきた
その結果が実を結ぶ時期になり、その今だけが見えて、うらやましくて仕方ない
正論、一般的な正しい道
どうしても譲れないのだ
そして、息子さんも同じ考え方をしていて、外に出られなくなったように感じた
お母さんが変わらないと、息子さん変われないよ
そう言いたかったが、言えなかった
私だってできない
「時々朝ごはんは食べに出てくるのよ」
「その時は仕事やお金の話はしないで、朝のどうでもいい芸能人ネタで楽しい時間を作るようにしてみたら」
その後、同僚さんは他の現場に移動した
私は、最後の最後の時間にもう一度
「楽しい朝ごはんを」
と、他の人に聞こえないように、声をかけた
私は彼女の苦しみをいくらか理解し共感できる経験があった
でも、彼女は、私が理解し共感できることを
最後まで認めることはなかった
私にできることは少ない
そして、彼女はもう私に期待していないようだった
身内を恥を話してしまったことを後悔しているようだった
彼女の仕事に対する生真面目さは、いい加減な私にはないものだった
しかし、その生真面目さが、トラブルに繋がることがしばしばあった
いつも、決まり事をキチンと守ろうとして、テンパってしまいミスが多かった
私たちの仕事は、若いナマモノを守ることなので、事に当たって臨機応変さと機転がきく事が求められる
「どうも向いていない」いつも尻拭いをする責任者が言った
「ほかの現場ならどうにかなるけど、ここではちょっと・・・」
男性なら、仕事帰りにちょっと一杯しながら、お悩み相談ができる
でも、働くお母さんは、夕飯を作らなくてはならない
私はメアドと電話番号、固定電話の番号を書いたメモを渡しながら
仕事前に、どこかで話さないかと提案してみた
とまどっていたが、夜メールがあり、私たちは仕事前に会う約束をした
お店に来た彼女の眼は、私に対する警戒心と敵意が感じられた
家ではもっと厳しい目になっているのだろう
私も昔はこういう目つきをしていて、家族に不快な思いをさせていたのかもしれない
今も変わらないかもしれない
なんで、コンビニのトイレに行くの?
「だって光熱費とか、食費いれるの当たり前のことでしょ。そう言えば働くと思ったの。そしたら、コンビニに行くようになってしまった」
パソコンとか自室にあるの?
「スマフォを持ってるし、まだ自分で料金はらえているみたい」
友達と連絡とって遊びにいくことはある?
「最初は出かけてたけど、だんだん出なくなった。たぶん恥ずかしくなったんだと思う」
案外平日の昼間は誰もいないから、自由に行動してるんじゃないの?
「わからない」
なんでバイト反対したの?
「バイトなんてしてたら、30歳になっちゃう。ますます就職できなくなるでしょう。そう言ったら、息子突然切れて、私の腕をねじり上げたの。それから暴力が始まって・・・」
彼女の言うことは正しい。でも成人した息子さんだってそのことはちゃんとわかっていたように思えた。だから、切れてしまったのだろう。
「その後、またバイトをすると言ったことがあるの。その時は私賛成したのよ。でもね、家から離れたところで働きたいと言うから、それは厳しいと言ったの。今どきバイトに交通費を払う会社なんてないって、そしたらまた暴れて・・・」
彼女の言うことは正しい
でも、交通費を払ってくれるバイトが絶対にない とは思えない
その正しさと、理詰めに、息苦しさを感じた
私もかつて旦那に同じ様なことを言っていた
「同僚さんも矛盾や無理や不満を我慢して働いているのに、なんであんただけ鬱になるのよ。ほかの人が我慢できること、なぜ我慢できないの。我慢しない仕事なんてないんだよ」
私は私が抱えていた苦しい時期の話をした。旦那が働けない方がきついのだと言わんばかりに
「でも、があこさんの旦那さん、今はちゃんと働いているんでしょう。息子さんも部活頑張ってるし。」
突然、彼女は叫んだ。周囲の注目を浴びるくらいの大きな声で
「○○さんは、息子と同じ年齢なの。よく気が利くし、いつも一生懸命働いていて、彼女を見ると辛くなる。△△さんの娘さんは就活頑張っているみたいだし、エントリーシートの話題になると、苦しくて苦しくて・・・・」
働くお母さんと言えども、その社会は狭い
その狭い社会のなかで、自分の家が一番不幸で、うまくいっている家庭を恨んでいる
この感情にも私は覚えがあった。まるで自分を見ているようだった
○○さんは就活に失敗して、この現場にいる。でも女の子だから今のままでも十分とも言える
△△さんはシングルママ、人には言えないような苦労をしてきた
その結果が実を結ぶ時期になり、その今だけが見えて、うらやましくて仕方ない
正論、一般的な正しい道
どうしても譲れないのだ
そして、息子さんも同じ考え方をしていて、外に出られなくなったように感じた
お母さんが変わらないと、息子さん変われないよ
そう言いたかったが、言えなかった
私だってできない
「時々朝ごはんは食べに出てくるのよ」
「その時は仕事やお金の話はしないで、朝のどうでもいい芸能人ネタで楽しい時間を作るようにしてみたら」
その後、同僚さんは他の現場に移動した
私は、最後の最後の時間にもう一度
「楽しい朝ごはんを」
と、他の人に聞こえないように、声をかけた
私は彼女の苦しみをいくらか理解し共感できる経験があった
でも、彼女は、私が理解し共感できることを
最後まで認めることはなかった
私にできることは少ない
そして、彼女はもう私に期待していないようだった