人は最後の瞬間美しい夢をみるという
お花畑・光・虹・懐かしい人
自身の人生を振り返る
立花隆さんの著書によると
最後の瞬間、その時だけ活動する 脳の組織があるらしい
父は最後にどんな夢をみたのか
そんなことを
ここ数日考えていた
非常に暗く、長く、重いです
犬神サヘエには、娘が三人いた
マツコ・タケコ・ウメコ
男子がいないので、マツコに養子をとった
養子は フユヒコ(私の祖父)
マツコとフユヒコの間に 男子 イチロウ(父) 女子 ハナコ ができた
タケコは嫁に行った
不幸は突然起こった
マツコが病気で亡くなった
イチロウ 10歳 母を亡くした
養子なので、外から 後妻を迎えられない
まだ嫁に行っていなかった ウメコ
サヘエが決め
ウメコとフユヒコは結婚した
戦前の話である
イチロウとウメコの年齢差は 10歳
ウメコは気性の激しい人で、この結婚で少し壊れた
ウメコにも 1男2女ができた
イチロウとハナコに猛烈ないじめをした
オンナはオンナを より激しく攻撃する
ハナコは座敷に上がることを許されず、土間で生活をし、一人で食事をとった
フユヒコは娘を愛していたが、会話をすると 家付き娘の ウメコが激高する
フユヒコは 土間の炭火の灰の中に 手紙と小遣いを隠して ハナコに渡した
唯一のコミュニケーションだった
イチロウ(父)が19歳の時 妹 ハナコ 16歳
ハナコは農薬を飲んだ
父は妹を、祖父は娘を守れなかった
この事件で、 ウメコの精神はさらに病んだ
一度癇癪を起すと、何時間も 怒り、わめき、暴れ続ける
今なら、何かの病名がつくだろう
イチロウに縁談が来なかった 来るはずがない
この家に娘をやろうと 考える人はいない
フユヒコは 伝手を頼って、遠い縁の親戚(事情を知らない)に仲人を頼んだ
チヨコ(母)との縁談があった
チヨコの両親は 縁談を急ぐ、フユヒコを怪しみ
聞き込みをし、事情を知った
何度も話し合いが持たれた
長男が二人いる状態を解消しないままでは、嫁にやれない
高齢だった 犬神サヘエ は決断した
長女の長男 イチロウが 跡継ぎである
ウメコ・フユヒコと3人の子どもは すぐに分家する
田畑は半分に分ける
約束は最初の方だけ守られ、もう一軒家が建てらた
本家 サヘエ・イチロウ・チヨコ
があこ キヨシ が生まれた
サヘエが生存中はそれでも、なんとか抑えがきいた
亡くなったあと、ウメコが長年貯め込んでいた イチロウへの憎しみがさらに激しくなった
あっちの家・こっちの家
私と弟は あっちの赤ん坊 と 呼ばれた
サヘエ亡き後、イチロウとチヨコが仲睦まじく暮らすことを ウメコは許さなかった
ウメコの娘の一人を送り込み、逐一 報告させた
私の叔母人あたるこの人は、まだ中学生くらいの年齢だった
「何を食べた・どんな服をきてたか・どんな会話をしていたのか」
叔母も荒んだ
叔母は私たち兄弟を虐待した
オンナはオンナをいじめる
繰り返された
アマリオボエテイナイ
フユヒコは分家から毎日 本家に通い
チヨコ・イチロウと農作業をした
ウメコが見ていないので、イチロウと仲良く、孫の私たちをかわいがることができた
しかし、ウメコはその様子をずっと 物陰から 隠れてみていた
郵便物はいったん分家に届き、開封されたから こちらに届いた
時々叔母に連れられ、あっちの家に行かされた
家はおろか、門のなかにも 入ることは許されず
あれこれ質問され、どう答えていいのかわからないので、下を向いてしまうと怒られた
何時間もただ立っていることが多かった
両親が農作業に出ている時間
ウメコが何回かきたのを覚えている
他の子どもを従え、ありとあらゆる引き出しを開けて覗いていた
恐ろしい時間だった 小学校低学年ころだったと思う
両親は 私が叔母からいじめを受けていることに気づいていた
私は大人の顔色をうかがう、陰鬱な子供になっていた
テレビと炬燵のある部屋から追い出され 土間に座っているとき、父母が帰ってきた
父は力なく、私を見て微笑んだ
妹を守れなかったように 娘を守れない
腹違いの妹を叱ると、その報復は半端ではなかった
イチロウ一家の存在を認められない ウメコ
しだいに 祖父 フユヒコは 来なくなり
土地を切り売りして生活し始めた
イチロウとチヨコは 田畑を失い
自営で加工の仕事を始めた
同居していた叔母は 成人し、会社で勧誘され、カルト教団に入って救われた
宗教にのめり込んだが、兄夫婦 に対して謙虚になり、食費を直接渡すようになった
叔母にとっては 実母である ウメコ
叔母なりに苦しんでいた
私が高校生の頃
叔母は嫁に行った
彼氏が軽トラを借りて叔母の荷物を取りにきた
その日が最後だった
父は、お祝いを渡し、叔母は泣いていた
いつどこで 挙式をし、どこに住むのか 伝えずに去った
祖父 フユヒコが来なくなり
叔母がいなくなったが
その代り、白い車が 家の周りを ぐるぐる回り
時に停まって、家の様子を伺うようになった
ウメコに命じられ フユヒコや 免許を持った 他の子どもに運転させ
相変わらず、監視をしていた
ある時期
突然、アッチの家が取り壊された
そしてアッチの家の人たちがいなくなった
遠縁を通して、かなり 遠いところに引っ越したことがわかった
近くに住んでいるから 気になってしかたがない
離れてしまえば ウメコの 奇矯な行動が減り
息子夫婦は安心して暮らせる
祖父 フユヒコが決断した
以降 私ら家族は 父の 親族からの呪縛から解放された
田畑を失い 貧乏になってしまったが その方がずっとよかった
母は好きな服が着られるようになり
旅行にいけるようになった
父は町会で肩身の狭い思いをしなくなった
町会の人は、みんな 父の事情をよく分かっていた
父は、フユヒコを 父として尊敬していた
フユヒコの訃報が届いたのは、20年前
「最後の時間には 呼んでもらえると信じていた」
でも、知らされたのは半年後で、フユヒコと取引をしていた不動産屋からであった
この不動産屋だけが、フユヒコ一家の様子を父に知らせてくれた
また、私たちのことも、こっそり フユヒコに 伝えてくれた
「長男さん 4月に結婚しました。長女さんは11月に結婚するそうです」
ウメコたちがいないとき、病院の枕元で、私たち兄弟の消息を伝えてくれた
フユヒコは 涙を流して頷いた と 聞いている
父が亡くなる二日前
父と話をしていたとき、郵便物を見つけた
私学の同窓会通信
宛名
父の 腹違いの 弟だった
「最後に会ったのいつごろ?」
「小学5年生くらいかなぁ」
「会いたい ?」
返事はなかった
父は 家族の縁が薄かった
葬儀の時にきた親戚は ほとんどが 母方だった
父かた親戚は いとこの 子ども もう 代替わりをしていて
顔がわからない
父方にも 叔父叔母と その子供がいるらしい
ウメコは父より 10歳 年上 生きているとは思えない
だから私は 父の見た最後の夢が気になってしかたがない
だれにもわからないことだけど
父の最後の夢は 自分の妻子 家族 孫ではなく
父の 母 父 妹
マツコ フユヒコ イチロウ ハナコ
少ししかなかった 父の幸せだった子供時代に戻って
4人で楽しく過ごしている
そんな夢であってほしい
そうでなければ
父の人生の 辻褄が合わないのだ
父は許していたようだったが
私は 父方の祖父 父の継母 腹違いの 弟妹 の 存在を
消してしまいたいと思っている
弟も私も 幼い時の記憶がない
陰鬱な記事にお付き合いくださりありがとうございました
父の夢を書こうと思っていたのですが
私自身の人格形成そのものにまで、広がってしまいました
こんな事情はどこにでもありますが
私の遺伝子に ウメコが 混じっていると思うだけで
怖くて仕方がないです