大学生の頃
女子が少ない学部だったので、なんとなく集まり、なんとなく仲良かった
○ちゃん
地方出身で、人見知りで地味で、あまり主張しない子で、それなりに気をつかってつまりだった。
でも、○ちゃん、無理してたんだ。
ある日、大学近くの大きな駅の前で、同じ年頃の人に声をかけられた
「あなた、人間関係で悩んでいるでしょう?」
そのまま、駅名リフレッシュサークルというところに入ってしまった。
大学に来なくなった
アパートから姿を消した
親と連絡を取らなくなった
両親が探しにきた
教務課の職員と一緒に学食にいた私たちに会いにきた
いろいろ話をした
駅名リフレッシュサークルに探しに行った
ネットのない時代だったけど、なんとか、普通のビルの中にあるリフレッシュサークルにたどり着いた
でも会えなかった
それからまもなく、週刊文春が連載で特集を組み始め、それを買って、学食でみんなで読んだ
もう、あの子は戻れそうもないと思った。
しばらく経って、○ちゃんは明るい笑顔で現れた
キャラが変わっていた
「あのねぇ、東京ドームでディスコパーティがあるから来ない?8000円なんだけど、芸能人またくさんくるから安いんだよ。」と、その当時流行っていた、幾組かのバンド名を言った
「でも、ドームだから、靴はスニーカーなの」
彼女○ちゃんが何をしようとしているのかはすぐわかった
スニーカーでディスコはちょっとねぇ
そのころ、ドレスコードが厳しい麻布や六本木のディスコに慣れてしまっていたので、スニーカーはマジでなかった。
その一ヶ月後くらい、写真週刊誌にフライデーされた、ドームディスコパーティ
よく覚えていないが
「地味な男女が踊り狂う陶酔の夜」
的なタイトルだった
その記事の最後に主催した団体名の名が載っていた
○ちゃんが入ってしまった団体だった
そのまたある日
私は本を探しに、書店街の道を一人で歩いていた
○ちゃんと遭遇した
何してんのー
うん。バイト
○ちゃんは意識調査アンケートと書いたノートのようなものを持っていた。
その次の瞬間、囲まれた
ヤベエ
でも、○ちゃんは笑いながら
この子は違うの 違うの
と、言って私を囲んだ人に言った
おかげで、面倒なのことに、ならなくて済んだ
心のない会話をいくつか交わして、
またねーと言って別れた
あれから、30年以上たってしまった
芸能人が入信したニュース
変な結婚式
浪人生だった弟
バイト先の先輩に誘われて変な勉強会に参加してしまった
ヤベエ
弟に聞いた
ビデオデッキが高価な時代
ねえねえ
サザンのコンサートビデオただで見られると言われなかった?
言われた
その前な飢餓難民のビデオ見させられなかった?
見た
なんか一万円くらいの三日間の勉強会に誘われなかった?
誘われた
支払った?
持ってなかったら、先輩が立て替えてくれた
それ、ヤバいやつだよ
浪人生だった弟は寂しかった
久しぶりに新しい友だちがたくさんできて、みんな優しくて、ご機嫌だった
父も母も弟の表情を見て喜んでいた
危なかった
○ちゃんのおかげで、知識があったので、深みにハマる前に止める事ができた
もう、30年以上前の話
そいつらが急にテレビで釈明をしている
年が近い
あの時、街頭で活動していた奴らの中の、出世した人なのか?
まだまだある
ある日
口を聞いた事がない、小学校が同じだった人から電話があった
毛皮のコートの展示即売会の案内だった
ヤバい、ヤバい
近所に住んでいる、仲が良かった子に連絡した
やっぱりそうだった
何がどうというわけではないけど
あいつらを見て、いろんなことを思い出してしまった
そういえば、大学の新入生ガイダンスでも、怪しいサークルに注意するよう言われた
その時はなんのことか分からなかった
どんな経験でも役に立つもんだ
思うことはたくさんあるけど、事実だけ、書いてみた
こんなんでも勇気がいる
どうしてるかな?
あの結婚式で結婚したんだろうな
幸せなのかな?