友人Hさんが、「私の新選組熱の原点かもしれない」と、一冊の本を貸してくださった。
それは明らかに長い年月大切に保管されてきた古色を帯びていた。
著者の森満喜子さんという医師を職業とするという歴史研究家は、学生時代に映画で出会った沖田総司に、魅了された、魂を奪われた、というか、恋をしたのだと思う。
表題は「沖田総司哀歌」であった。
昭和47年発行とある。
彼女の文才は、全てこの一人物を描くために費やされてきたといっても過言ではなかろう、と本の紹介者が評している。
森満喜子さんの著作は紹介されているだけでも、その他数冊に及び、共著もある。
「哀歌」に納められている「とし女壬生ばなし」他五篇の小説を読んで、Hさんの主宰した同人誌「はなぶさ」に掲載されている数多くの文章の、原点はこれだったのかと、得心する思いがした。
新選組に魅了された人々は今も少なくない。
新選組を題材に写真を主にとりあげた特集を組んだ雑誌を店頭で見かけたこともある。今年クラウドファンディングで、壬生に土方歳三の胸像を建立するというものがあったが、期間満了を前に目標を達成、実現が決まった。
「とし女壬生ばなし」のしまいに
「人を思うということは、ほんまに女子にとって心の中の宝物のようなものどす。」
と、とし女は言っている。
女子の「心の中の宝物」は、言い換えれば「永遠の恋人」なのでしょう。