月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

御手之中

2012年01月09日 19時21分46秒 | 仏々相念(住職日記)

「ワシも直ぐに往くけんの~」・・・

 

ず~っと一緒にいたご夫婦でした。

私は、仕事も辞められた後の姿しか知りませんが、何時お伺いしても2人で仲良くおられました。

長く、長~く連れ添う妻を見送るのですから・・・

辛いひと時です。

 

ご主人は、晩年足腰をかなり患っておられましたが、最近になって目も見え難くなってきたとのこと。

「ご院さん、声であなたと分かるが、影を見ると大分小さくなったようやが大丈夫かな・・・」

「オジサン、ありがとう!減量しよるだけだから心配いらんよ!」

そのような目の状態の中でのお別れ・・・

身内の方がオジサンの手を取り、「これが目よ・・・これが口よ・・・」

歯を食いしばりながら愛しい妻の顔を感じます・・・

「〇〇〇・・・」名を呼びながら・・・泣きながら・・・

 

「何か言わんか・・・」

 

愛する妻の声を聞くのでしょうね・・・

ず~っと寄り添ってくれた優しい声を・・・

 

オジサン・・・聞きたいよね、あの優しい声を・・・

 

「もう、蓋をしたのか・・・」

「ドン!」蓋を叩き崩れました。

崩れるお爺ちゃんの背中を擦るお孫さんの優しいおはたらき。

 

辛くも温かいご縁でした。

 

オジサン、これからも一緒だよ・・・

仏さまのおはたらきになってその背中、擦ってくれているから・・・

願生って生かさせていただこうね。

 

一緒にお参りさせていただいた坊守は帰る車の中で、「私が先になったら・・・」ってつぶやきます。

オジサンに私を重ねて見ていたのでしょうね・・・

何もできない私が・・・

崩れる私が・・・

偉そうに言っている手前、立ち上がらないとって思うものの・・・

 

仏さまの御手の中・・・安心して崩れます、私。