平野啓一郎著 新潮社2023
700ページ近くの大著。仮面の告白、金閣寺、英霊の声、豊饒の海の四作品を取り上げて論じるが、他の作品との有機的な繋がりや、三島という作家にも目配りを欠かさない。註や主要参考文献も学術書に引けを取らない。三島が依って立つ、哲学や仏教の思想についてもきちんと論じられている。セクシャリティにも当然多く触れられている。
平野啓一郎というのは凄いなと思いながら読み進めた。豊饒の海は二回読んだし、その他の作品も読んでいる。だが、三島を考えるというよりも、平野を通しての三島ということで、平野のことを考えさせられた本だった。小説家として、三島が望んだノーベル賞に近いといわれているこの作家が、その暁に何を考え、どんな言葉を発するだろうか。