朝井リョウ著 小学館2024
非常に面白かった。ゲイの生殖器が語るという体裁をとりながら、現代を描く。現代の前向きな生き方に対するアンチテーゼを、科学の知見を散りばめながら、ゲイという少数者の視点をうまく利用して、論じる。若いしなやかな感性を感じることができる。ただ、この生き方は、「前向きな」人たちがいるから可能だということが背景としてあるのは忘れてはならないだろう。
近江英俊著 朝日新聞出版2024
日本の交通史を研究する研究者による道路の利用という観点からの道路の歴史をたどるものである。
筆者によれば、1、人が道路のどちら側を通るのを定めたのはいつか、2.乗り物による移動はいつ始まり、普及していったのか、3.道路上で行われた祭祀と信仰の問題、4.権力と道路の問題、を取り上げている。
古文書をそのまま引用している箇所も少なくなく、読みにくい面もあるが、面白く読むことはできた。
アンパンマンとぼく 梯久美子著 文春文庫2025
ノンフィクション作家による文春文庫への書き下ろしである。300ページに満たない本だが、面白く読んだ。アンパンマンというキャラクターの名前を知っている程度で、朝ドラで取り上げられてる程度の知識しかなかったが、驚きがたくさんあった。アンパンマンまでいろいろな仕事をして、幼い頃よく歌った手のひらに太陽をの詩を書いてたとか、サンリオとの関わり、いずみたくや永六輔、談志、宮城まり子、向田邦子、手塚治虫ときら星のようなコラボ、ビックリした。そして戦争体験や生い立ち、凄い人生だなあ。
そして、作者がやなせの雑誌の編集者だったというのも驚いた。