工事が始まっているとはいえ、前ページ のように賛成派、反対派を含めた現地のの世論は緊張したままだ。否、工事(政治)がその欠陥を大きく見せながら進むから鍬ヶ崎防潮堤のゴールは見えない。
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鍬ヶ崎上町の「1工区」の完成防潮堤を初めて見て、意外に小さい事にびっくりした。人はぺらぺらにうすいと言っているようだがその通りの印象で「巨大防潮堤」と想像していた割にはこじんまりしていた。
しかし全1600メートルのうちの120メートルだけの「1工区」の印象である。ぺらぺらであっても、これが「2工区」「3工区」「4工区」と進めば、巨大防潮堤は確実に鍬ヶ崎を壊していく。復興する鍬ヶ崎地区の景観、生業(なりわい)、住民の心はそこで徐々に分断されていく。
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壁による海陸分断によって海側からの町や山の陸の風景は消え、陸側からは岸壁や船や海や月山は完全に見えなくなる。漁業者は陸(おか)の人と分断され、陸の人に漁業者の姿は見えなくなる。すでに去った人は故郷に帰る事はなく、残った人にも鍬ヶ崎の心象風景はない。
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これから365日ぺらぺらの壁を見て暮らさなければならないのか? 有事のとき壁は大波を受けて倒れ、鋼管杭は基礎の役にも立たないで、全てのつなぎ目は積み木のようにばらばらになる。これが水木しげる流一反木綿一つ目コンクリートぺらぺら妖怪分解の予感である。
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分かりますか? 写真の船はぜんぶ100トン超級の漁船です。どんな小さな津波でもこれらの船が一隻でも防潮堤にぶつかれば防潮堤は壊れます。波高1~2メートルクラスの津波でも防潮堤あたりでは津波がふくれあがって船舶など浮遊物を運ぶ事が予想されます。