基礎くいの検証/防潮堤は最大規模の建造物
第三者の検証を宮古市議会に陳情
「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」は今月4日から始まる宮古市議会12月定例会に対し、鍬ヶ崎防潮堤の基礎くいの適切な工事について、以下のように第三者による検証を要請した。
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宮古市議会議長 様
平成27年11月27日
鍬ヶ崎防潮堤の基礎くいの第三者による安全性の検証の陳情
提出者「 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会 」
(趣旨)
横浜市のマンションの傾斜に端を発した基礎くい打ちの偽装問題が短期間に全国に広がって都道府県のほとんどの自治体では民間、公設を問わず過去10年の建造物の検証を進めています。岩手県の取り組みは鈍いですが、宮古市内の最大規模の建造物である鍬ヶ崎地区防潮堤の基礎鋼管杭工事については、支持地盤に所期の目的通り鋼管杭が到達しているかどうかが最大の疑問です。宮古市は直ちにその検証を始めなければならないと考える次第であります。
然るべき第三者、あるいは第三機関による鍬ヶ崎防潮堤の基礎くい(鋼管杭)の支持層到達の検証を陳情致します。
(理由)
1、責任不在の鍬ヶ崎防潮堤の基礎くい工事の失敗
あらゆる面で防潮堤の安全性を脅かすものは、まず、「鋼管杭(くい)」の支持地盤未到達の問題です。先き11月5日の鍬ヶ崎現地説明会では、第1工区の杭打ち80本のうち52本が支持層に届いておらず、そのために工期が8ヶ月遅れ、工費も1億6000万円(33%)増加したという説明がありました。
責任問題 第一義的にこの失敗の責任はだれがとるのでしょうか? 発注者の岩手県、請負業者の建設会社、下請けのくい打ち業者の誰がその責めを負うものでしょうか?
地元住民に過大な犠牲を強いて、何もかも納税者の負担というわけにはいかないのではないでしょうか。マンション問題の争点もここにありました。事業主体なのか、請け負い業者なのか、市民の関心もそこにあります。
この問題の詳しい経緯や原因究明が明らかにならないで次につづく工事は進めるべきではないと考えます。支持地盤への鋼管杭の未到達を受けて、改めて52本抜き戻し、新たな鋼管杭を継ぎ足して、再度埋め戻す作業を行いましたが、しかし工期遅れ、公費増額の責任問題は果たされておりません。
支持地盤未到達の発覚 くい打ちの打設過程で支持層が出てこなかったということです。「オペレーターさんが、違うな。と、気がついたんだそうです」(11/5 現地説明会)驚くべき事です。気づきながらそのまま52本続けて打ち込んだという疑惑が残ります。官民それぞれの職務、公務放棄の由々しき事態となっております。
責任問題、管理問題はどのようになっているのでしょうか?
放置 腐蝕 再埋設 未到達発覚後、鋼管杭は埋設されたまま4ヶ月放置されました。その間、鋼管杭は埋め立て地特有の自噴海水に洗われほとんど穴があきそうな状態で塩害腐蝕が進みました。その後に引き抜かれて溶接で長さが足されましたが全52本の未到達鋼管杭の同じ部位に海水腐蝕がありました。塩害でやられた場所を切除する訳でもなく養生する訳でもなく大きく腐蝕したまま再埋設された鋼管杭がはたして防潮堤の基礎になるのでしょうか。そのままでいいはずはありません。直ちに抜き取り検査をしなければならないと思います。
また、到達鋼管高28本についても同様海水被害を受けているものと思われます。この問題は全鋼管杭、海水の自噴する埋め立て地についてまわるリスクです。海水から鋼管(鉄素材)を守るリスク管理を実行しているのかどうか検証する必要があります。
鋼管杭未到達問題は情報公開されていない 鋼管杭の再埋設という経過はありましたが第1工区で打設され、再打設された鋼管杭が支持地盤に到達しているという確証のないままに現在に至っています。支持層到達の確認はオペレーターさんの「違わないな。」という気づきだけで十分なのでしょうか。各鋼管杭の1本1本のN値(硬度)データがある訳ではなく、また電流測定のデータがある訳でもないのです。書類として揃っているかどうか、揃っている場合の認証は誰が行っているのか。また簡易溶接の検査認証はどうなっているのかなど住民にとっては時局柄安心が出来ない状態がつづいています。
2、ついてまわる立地横断層調査の欠落
杭打ちの前提であるボーリング調査において立地敷地の横断層調査については「横断図は作成しない」(「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」の公文書開示請求に対する岩手県の回答)と明言され、行われておりません。したがって全鋼管杭1,000本余の支持地盤到達は概算深度も分からず1本1本めくら打ちしてみなければならない状態であります。「第1工区」と同じ事を繰り返す事は避けられません。
急傾斜 複雑地形 陸側から一歩海側に踏み出す度に急に落下していく地形は沿岸の誰もが目にし、経験しているものであります。ジオ的にも認証されている地層であります。マンション等のおだやかな地盤地形の対極をなす北三陸特有のこの複雑急峻な深層地下に横断層調査無しにどのようにして鋼管杭を打ち付けるのでしょうか?
横断層調査がない 全鋼管杭が2列に並んで防潮堤の基礎を形成する計画です。しかしながら岩手県のその地盤調査は2列の中間点を結ぶ縦断線調査だけであります。鋼管杭2列の横断巾は5.4メートルです、その海側/山側の高低差は十数メートルから場所によっては数十メートルになるといってもよいでしょう(土木センターは平均的に横断巾の1.5倍の8.1メートル差といっています)。いずれにしてもその落差のばらつきはあまりにも大きく、実調査してみなければ概算深度は分かりません。つまり横断層調査無しには縦断調査をいくら厳密にしてもそれ以上の有効性のないものであります。
<参考図>直立式(逆T字型)防潮堤と鋼管杭
過剰埋設による自然破壊 鋼管杭の支持地盤への打ち込みはペア、あるいはユニット単位で長さが同一寸法に計画されているといいます。2本、4本のどの1本に他の長さを合わせても膨大な無駄な過剰鋼管、公害の元になる鉄錆やコンクリートや薬剤が地中に打ち込まれる事になります。
3、宮古市主導の第三者機関を要請します
鍬ヶ崎防潮堤の基礎くいの問題は当事者地域が理解し納得する事無しには前に進まない。これまであまりにも他人(ひと)任せであったように思われます。
鋼管杭到達モニター 鋼管杭が支持地盤に到達したというモニター(確証)が出来るように各種資料を揃え宮古市当局を始め地区住民に開示する事は当然なことであります。
横断地層の調査 基礎くい地盤の予備調査であるボーリング調査も縦断層調査だけでは片手落ちと言えます。鍬ヶ崎の横断層調査は当然の事であります。
第三者機関 これらの事については、地元では宮古市、宮古市議会がリーダーシップをもち然るべき第三者機関をもってその検証、認証に当たるべきであります。
4、基礎がダメなら建造物はダメです
マンションの基礎くい問題は重量(重力)に抗する基礎工事の問題ですが防潮堤の基礎工事の問題はむしろ横からの水平衝撃力の問題の方が大きいわけです。しかし岩手県の工事は普通にマンション基礎工事と同じ考え方でやっているように思われます。工事がはじまった今時点で、もう一度、防潮堤の基礎設計のあり方を統一しなければならないのではないか?と思われます。 その意味からも第三者の介入が必要と言えます。
忘れられた「横バネ」効果 当初は鋼管杭の機能にについては上からの重力のほかに横からの衝撃にも「横バネ」効果を発揮すると説明されておりました。だが8メートルの鋼管杭が津波の衝撃を受ける7~8メートルの地上の防潮壁を支える事が出来るとは考えにくい。また40メートル級の長尺鋼管杭については摩擦力云々と支持層到達不必要的発言が業者と宮古・土木センターの間に存在しているようだ。とんでもない事である。
工法はマンションのコンクリートパイルと同じ 鋼管杭の埋設工事はマンション等の箱もの建造物のコンクリートパイルの埋設と変わらないものになっている(工法)。コンクリートパイルより安価?(価格)、塩害に弱い(短所)、など「鋼管杭」基礎の長所が見えにくくなっている状態です。
以上
<参考>鋼管杭工事の仕上げ
ホースでグラウト剤(モルタル)を充填、ヘラでならして終了。
…これで連結?
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地上に頭を出している鋼管杭に上から底版をはめる