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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

鍬ヶ崎沿岸の岩盤地形(4)結論

2015年06月09日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

(3)工事中断の真意 よりつづく

 

鍬ヶ崎海岸はその急峻~複雑な深層岩盤地形のために鋼管杭工法には向いていない

正しくは「鋼管杭工法は鍬ヶ崎海岸には向いていない」というべきである…


 

調査地「縦断」断面図 / 岩手県知事の言い分

ボーリング地点は必ずし防潮堤用地の中心線上にはない。それどころか 1)震災前 2)震災後 3)追加、の全27地点はほとんど中心線を大きくそれている。「調整して中心線の正しい位置を推測する」などと言われても地元としては推測や調整に自分の命と財産をゆだねる事は出来ない。岩手県にはそもそもそのような概念がなく調整・推測に主眼をおいて中心線など考えてもいないようだ。そのためにわれわれの方の理解も焦点が定まらずに苦労している。「アバウトそのあたり」という粗雑さである。「アバウトそのあたりの(岩盤など)硬いところに適当な長さ」の鋼管杭を打ち込むことを目的にしている。言い分はこうである「なお、打ち込み時に鋼管杭の支持層への到達を確認することとしていることから、当初設計の杭長で支持層に達しない場合は不足分の鋼管杭を適切な方法で溶接することにより延長して支持層まで打ち込むこととしています。 また、施工時に支持層が浅く出現した場合には、支持層に杭として必要な長さを打ち込んだ上で、必要に応じて杭を切断することとしています」(2015.3.17「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」の要望書に対する知事(府)の回答書。鋼管杭をただの鋼管埋設と同じに扱い、横方向の力に対する「横バネ」機能などは眼中に無いようだ。鉄とコンクリートへの古い信仰丸出しの土建工事だ。

粗雑な回答は、現場からさえ無視反発されている「一部区間において想定より深い支持地盤が確認された事から追加のボーリング調査を行い、適切な長さの鋼管杭を製作中です」(2015.5月 土木センター「PRちらし第1号」)…この相矛盾する、それぞれの無責任見解。どちらもどちらだ。後で詳しく述べるが硬い所に鋼管杭の端を埋設してもその状態によっては「横バネ」が利かないどころではなく、脆弱、危険極まる事態が沢山ある。鋼管杭が打ち込まれればいいというものではない。

知事側は全1600mの防潮堤の地上の設計図の打設地点が微動だにしないのであるから受け入れ側の岩盤の状態は重要と考えてこなかったということ。いきあたりばったり、めくらうちでようがたりるとかんがえている。現場のほうは、想定外の岩盤の深さに驚いているが、いままで、なにを想定していたというのか? もはや岩手県県土整備部や広域振興局はむちゃくちゃだというしかない。岩手県は地元の立場でものを考えていない。

 

調査地「横断」断面図

鍬ヶ崎の海岸線の支持層地盤は陸から海方角に向いて(横断して)急峻な地形をしている。更にこの地区の複雑な地層を加味すると部分的には逆に海側から陸側に向けて下っているところもあるだろうし、既存縦断図から追加ボーリングを経て縦断図も一層急峻~複雑に見えるようになっているかもしれない。しかし推測ながら、横断図については全体としては海側に向けて落ち込んだ地形をしているに違いない。

注意)先頃「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」は岩手県に対して行政文書の開示を求め、日立浜地区と鍬ヶ崎「その1工区」のそれぞれの支持地盤縦断図(追加ボーリング分等)&支持地盤横断図を請求した。日立浜地区については「追加縦断図については解析業務が完了していない事から存在しないため」「横断図については作成しない事から存在しないため」、また「その1工区」については「(鋼管杭の打ち込み成果図面については)工事途中である事から存在しないため」「横断図については作成しない事から存在しないため」いずれも「開示しない」という。注目すべきところはいずれも「横断図は作成しない」という所である。 おそらくデータもない。



    ←海側       図14 横断断面図      陸側    


海岸線の深層地盤の横断断面図が把握されていないという事は、支持地盤の(横断)傾斜、(横断)形状が不明な事で、鋼管杭を事実上打設埋設する事が出来ない事である。埋設困難、埋設しても脆弱、埋設時の斜面破壊、無駄埋設、等は岩手県知事の方法でも現場の方法でも横断断面データがなければ問題点は残る。ごくごくあたりまえな事で、問題点は、鋼管杭の深浅状態だけでなく鋼管杭の周りの形状がポイントとなる。特に傾斜部分。

 

ユニット単位の鋼管杭

以上は鋼管杭一本一本のイメージで書いてきたが実際はユニット単位で鋼管杭は4本、同じ長さの4本だ。図3、図4(?再確認が必要)。それで、問題は縦断方向の6m弱の間隔、横断方向の7~8mの間隔に対応する支持地盤の上下の高低差である。横断方向7~8mなら陸側と海側の上下差は15m、20mに達すると前に書いた。横断図がなくてこれを野放し「アバウトそのあたり」ですませていいのか? と思う…。1本の鋼管杭が倒れれば、1ユニットが倒れ、ユニットが倒壊すれば、それは防潮堤全体の倒壊に連なる世界である…

岩盤地層の縦断図の防潮堤用地の中心線について触れたが、むしろユニットの縦断方向の鋼管杭に沿う2本の縦断線調査で横断線の代わりが可能なのではないか? と考えてみたが無理のようだ


傾斜岩盤に打設されたユニット鋼管杭

 

 

  図14−1        図14−2        図14−3           図14-4…

図14−1は埋設深度が岩盤面から一定の長さの設置図。このことについて、「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」の勉強会で宮古土木センターは基礎鋼管杭の横バネを利かせるために「鋼管杭は岩盤に直径と同じ80cm打ち込む」と明言したが「80cm」についてはその後の推移であまりにも考えられないので再度問わない。明言はここで封印する。

図14−2 岩手県の開示資料、図3、図4によるとユニットごとの鋼管杭の長さは4本とも同じである。傾斜面では図のように埋設部分が無駄に大きくなる。同じ長さであるかどうかは確かめなければならないが…

図14−3 横断面の傾斜に、更に縦断面の傾斜が加わるとユニットの鋼管杭の長さが同一だとして、埋設部分に大きな差異が生じる。最深ポイントの1本に長さを合わせるとなると膨大な埋設量、工事量になる。この自然破壊を岩手県はどのように考えているのであろうか。

図14−4… 以下さまざまなバリエーションがある…

 

 

図15−1                図15−2

図15−1、図15−2 岩手県は鍬ヶ崎海岸の縦断図は「作成しない」と明言している。百歩譲って二本の縦断図(図の赤い横線)で代わりが出来ないか図示してみた。図15−1、図15−2ともに同じ二本の縦断線にそって鋼管杭は打設されているが、足もとの強固さには雲泥の差がある事は分かると思う。代替は出来ないわけだ。ユニットの 6m、7m、8mの鋼管杭同志の間隔の間に、地下深層岩盤がどのような形状で横たわっているのか? 疑わしきは施工するべきではない。


横断ボーリング調査にせよ、縦断ボーリング調査にせよ、その精密さ、その膨大さが求められることも明らかである(最低限鋼管杭打設ポイント1064地点をふくむ縦断図2枚、横断図532枚の地質図面がなければならない)。しかし、そこまでしてプレキャスト工法にこだわる理由はどこにもない。プレキャスト工法より住民の命の方が大事だ、そして命ある人々の合意の方が岩手県の独断より大事である。これが結論。

 

 







 

コメント
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