さる10月25日の鍬ヶ崎防潮堤工事、閉伊川水門工事の現地見学会で参会者に配布された資料のうち、パンフレット冊子「インプラント構造」(IPA国際圧入学会編)の中に鍬ヶ崎等現行防潮堤工事に関連する記述があった。
■ インプラント構造 VS フーチング構造
■ フーチング構造は ”総入れ歯” 構造
上方図の「インプラント構造」の優位性を強調するあまりなのか、心底の構造上の欠陥なのか、「フーチング構造」をくしゃみで吹っ飛ぶ総入れ歯に例えて十分に貶(おとし)めている。業界の放言なのか?いずれにしてもパンフレットを主体的に配布した岩手県の見識を疑う。
「建設市場は大きいが(基礎部)構造のほとんどがフーチング構造で出来ている」「それは歯茎の上に義歯を乗せている ”総入れ歯” 構造である」「それに対してインプラント構造は、歯茎を貫いてアゴの骨と一体化している “天然の歯” 構造である」
〜 同学会名誉会長 北村精男氏、パンフレット巻頭言より引用、以下同じ抜粋 〜
「建設業界の歴史は、役所主導の前例主義、時を得た(成り上がりの)学者の理論や計算式、政治家の権力、ゼネコンの受注力、思いつきや一時しのぎの対応などが主導力で推進されてきた」「前例を正しいと信じ、前例を責任回避の楯として延々と歳月を費やしてきた」「とくに地下に由縁する計算式などは、電子化されていない半世紀以上も昔の数式を現在も使用し、数式の精査や実証との整合性はほとんどとられていない」
「(東日本大震災の結果の)コンクリート構造物の巨大化は人間の視覚脳であって、地球の力からすれば数値にも現れないチリやホコリに過ぎない」「これは、自然の脅威に対し人間の力で真っ向から立ち向かう姿であり、学習能力のない犯罪行為である」
さすがに提唱者、まことに率直かつ正鵠をうがつ言葉である。インプラント構造のフーチング構造に対する優位性を謳歌している。(インプラント構造自体が自然破壊手段になる悪魔的危険性には口を閉ざしているが…)巨大化する防潮堤は…学習能力のない犯罪行為である、とまでいう。しかしまったくそのとおり。総入れ歯や視覚脳(錯覚?)をいうなど冴えている…
■ 東日本大震災後、防潮堤の多くがフーチング構造を採用
(簡単にいえば底版=フーチング、がついている構造。一体型あるいはプレキャスト工法)
【鍬ヶ崎防潮堤の構造図】 =プレキャスト工法、逆T字型。
岩手県(庁)には業者のもの以外の図面はない。「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」作成の概念図
岩手県土木部(県土整備部)は国際圧入学会のいう「フーチング構造」との違いを多々口ではいうであろうが、防潮堤に応用された「フーチング構造」の修正や補強のアレンジメントには統合性の合理的な根拠が見えず、試験(行なわれていない)的にも理論的にもフーチング構造の欠陥をカバーし、欠陥を超えているとは思えない。言及もない。設計思想を抜きにしても、鋼管の扱いや数量、逆T字型などプレキャスト工法の組み立て方、部材と部材連結方法は、一体型工法にさえ劣る。岩手県のフーチング構造は(このブログでいやになるほど内容的に書いてきているが)もともと弥縫(びほう)策であると言える。業界のパンフレットを予め内容も見ないで配るなどの見識がそもそも弥縫的である。
岩手県ではほとんどの沿岸市町で「フーチング構造」を採用。宮古市は鍬ヶ崎地区、藤原地区で、近くは山田町で実施している。逆T字型と一体型が混在している鍬ヶ崎型、文字通りの弥縫策(つぎはぎ)である藤原型、疑似インプラント構造の山田町型などがある。基本形は業会の名誉会長がいう通りの岩手県県土整備部の前例主義の「フーチング構造」採用である。なぜかその岩手県の諸アダプト的強化策に2カ所として同じものがない事は不気味であるが、いずれもフーチング構造である。ただの迷い? ただの試行? 前例主義は岩手県庁の限界、防潮堤は成功していない。
【藤原地区防潮堤の構造写真】=プレキャスト工法、フーチング(弥縫)構造
藤原地区完成防潮堤(視覚脳への訴え)
写真 撮影 K.古舘氏(2017.11.15.ほか)
【山田町防潮堤構造図】=プレキャスト工法、フーチング(L字型)構造
山田町防潮堤鋼管溶接工事(※多重鋼管継手手抜きの疑い)
撮影 山田町 M.小林氏(2015.1.13)
[関連(貴重品)動画4点] 「全国圧入協会ホームページ」より
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